第77話 襲撃
地下五十階層を進む剛志と、臼杵。その周りには先ほどまでと同様にゴーレムの軍団が展開されている。先ほどまでと異なるのは背中にハイマジックウイングゴーレムを付けた状態のランサーゴーレムが10体増えたことだろう。
先ほどまではドラゴンソルジャーしかいなかったため温存していた対空部隊を、ワイバーン戦を経たことで、開放したのだ。
ハイマジックウインドゴーレムになったことで速度や滞空時間、搭載重量などが強化されたウイングゴーレムだが、まだ重たいアイアンゴーレムなどは浮かすことができない。そこで、比較的軽いウッド系列のトレントウッドランサーゴーレムに装着して、空飛ぶゴーレム部隊を作成したのだ。
試しに飛ばしてみると、列をなして飛ぶゴーレムは壮観であり、ちょっとしたショーの様でもある。ただ、その速度はそこまで早くなく、時速で言うと約60㎞ほどだ。
ワイバーンの速度に比べると遅いため、あまり活躍はできないかもしれないが、それでも対空の戦力があることは心強いし、何よりちょっとカッコイイ。
そんな若干の邪な気持ちもありつつ、空飛ぶランサーゴーレム軍団を追加した剛志は、その後も着々と地下五十階層を進んでいく。
「いや~こうやって見ると、やっぱり速度が居るな。せっかくの飛行部隊がほとんど活躍していないよ」
そう剛志がこぼしたのは、飛行部隊を出してから一時間くらいが経過したタイミングだ。
滑空攻撃をしてくるワイバーンに対し、今回のゴーレムの空軍はほとんど役に立っていなかったのだ。やはり一番のネックは速度だろう。速度が遅いため、待ちが基本のゴーレムだが、空だと踏ん張りがきかないので待ちは適してないのだ。
そんな対空部隊の弱点に気づいた剛志は、今のままだと意味がないと悟り、泣く泣く対空部隊をゴーレム異空庫にしまった。まだあきらめてはいないので、いつかはゴーレムカスタマイズ等で実戦で使えるレベルの戦力を手に入れることを、誓ったのは言うまでもない。
まあ、そんなこんなでいくつかやりたいことを試したりしながら、楽しく探索を終えた剛志は、時間もいい時間になったのでその日は帰ることにした。
「臼杵、そろそろ帰ろうか」
「ああ、そんな時間だな。にしてもさすがに暇だぜ。こうも毎日ついて回るだけだとよ」
そうこぼす臼杵に対し、剛志は少し笑いながら返事をする。
「まあ。臼杵が暇ってことは俺が安全ってことだからいいじゃないか。」
「まあ、それはそうなんだけどな。さすがに暇だし、今度は俺にも戦わせてくれよ」
そういう臼杵に、確かにと思った剛志は了承した。せっかくなので今回を機に誰かと一緒に戦うということも覚えた方が良いと思ったのだ。
そんなくだらないことを話しながら、地下五十階層から0階層まで転移陣で帰ってきた剛志と臼杵は、横浜第三ダンジョンの中を歩いていた。
「いや~今日だけでも結構レベル上がったよ。前回来たときはただ物量作戦で進んでいただけだったから、あまり魔物を倒せてなかったんだよね。この感じで魔物を倒せるんなら結構な速度でレベルが上がるかも」
「そうだな、50階以降はレベル上昇速度が段違いだぜ、今俺とパーティを組んでるし経験値が半分になっているのにもかかわらずこの速度なんだからな。」
そういう臼杵に、剛志は忘れてた!となった。そうレベルアップの速度も速いのだが、それはパーティで等分されていて尚ということなのだ。
これがそのうち剛志単体で安定して探索が行えるとなると、その速度もさらに増えることが想像できる。それを想像して、早く一人でも探索できるような状態にならないかなと思う剛志だった。
そんな時だ、剛志は今までにない異常な暑さを感じ、とっさにその方向を向いたのは。そして剛志の目に映ったのは全身を炎に包まれた大男が、両手を振り下ろす姿だった。
「どっかーん!!!」
そう口に出しながら剛志目掛けて両腕を振り下ろす大男。それに対し剛志はとっさではあったが体を守るように丸め、頭を守るような姿勢になった。
そして剛志の横に控えていたジェネラルが盾を構えながら剛志と男の間に入ろうとする。そんなジェネラルと大男の間に、臼杵の雪魔法で作られた雪の壁が立ちはだかった。
臼杵の雪魔法と大男の炎がぶつかり水蒸気の煙があたりに立ち込める。
この場所はもともとはダンジョン内の地上と呼ばれていた0階層。まだあたりには建物の残骸があり、一般の人もちらほら歩いている。そんな場所で急に勃発した戦闘に、辺りが騒然とする。
「おい、剛志!大丈夫か!」
そんな声が、臼杵の居た方から聞こえてくる。視界は水蒸気でほとんど見えないため、姿はわからないが、声で臼杵だとわかった剛志は「大丈夫!」と答えた。
剛志の声を聴き、無事を確認した臼杵。しかし辺りが水蒸気で視界が悪くなってしまっており、このままでは剛志を守り切れない。そう判断した臼杵はさらに魔法を使用する。
「【ストーム】」
臼杵の放った風の魔法によって、辺りに立ち込めていた水蒸気がはれ、視界が良好になる。
「おいおい、いきなり何しやがる!お前らがテロ集団か!?」
そう叫びながら剛志を自身の背後に守る臼杵、それを見て男はにやにやと笑いながら話し出す。
「まあ、一般的にはテロ集団だわな。俺はA.B.Y.S.S.の構成員ってところさ。前回仲間がしくじったからな、助っ人ってところだよ」
「助っ人?」
男の助っ人という言葉に違和感を覚えた剛志が、そう尋ねると、男は手を広げながら話す。
「ああ、そうさ。助っ人だ。今回は確実にお前さんの命をもらうぜ。こっちは戦力揃えてきてんだよ!」
そう男が大声を出すと、辺りに隠れていた構成員たちがぞろぞろと姿を現した。
その身なりは皆一様にどこかにバンダナを巻いていること以外は統一感がない。おそらくあのバンダナがテロ組織のトレードマーク的なものなのだろう。そんなテロの一味がぞろぞろと剛志と臼杵を囲むように展開していく。
「ってことは万葉ちゃんが不在の時を狙ったってことか!」
「ご名答。あの侍ガールは強すぎるからな。戦わなくていいならそれに越したことはないってわけよ。だらだらと話しても仕方がねぇ、サクッと終わらして帰るとするか!」
そういって大男はまた全身に炎を纏い、そのままの勢いで剛志たちめがけて突っ込んでくる。
その男の突進に対し、雪魔法で防戦する臼杵。雪の壁をいくつも建て、男の突進を妨害する。しかし、雪と炎だと相性が悪いためか、臼杵の雪魔法をもってしても完全に男を止めることはできない。
「くそ、相性が悪いぜ。剛志、万葉ちゃんを呼べ!彼女が来るまでは何とか持たせるぞ、それにここで暴れていたらそのうち支部の連中も気づいてくれるかもしれないしな!」
そう叫びながら雪魔法を使い続ける臼杵、臼杵の発言を聞いて剛志はとっさにスマホを取り出し、万葉に連絡を取る。
しばらくの着信音の後、万葉に電話がつながった
「もしもし、どうしたの?」
そんな万葉に対し剛志は切羽詰まった様子で叫んだ。
「宮本さん!奴らの襲撃に合いました!今横浜第三ダンジョンの0階です!臼杵さんが戦っていますが、あとどのくらいで戻ってこれますか?」
そう剛志が早口でまくし立てると、万葉も驚いたように返事する。
「ええ!?なんですって!畜生っ、私の留守を狙ったわね。急いで5分で駆け付ける。それまで頑張って耐えて!」
そういって電話を切った万葉、その間も臼杵と大男の戦闘は続いている。ただ待っているわけにもいかない剛志は、自身の防衛戦力のゴーレムを展開していく。この前とは違う、剛志も今では十分戦えるのだ。
そして剛志がゴーレムを展開していく間、周りに広がっていたA.B.Y.S.S.の構成員たちも思い思いのスタイルで近づいてくる。
水蒸気が立ち込める中、剛志たちとA.B.Y.S.S.の戦いが始まったのだった。
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