第76話 ワイバーン
横浜第三ダンジョンの地下50階層を剛志と臼杵は剛志のゴーレム軍団とともに進んでいく。
今までの剛志の探索と言えば、ドローンなどによる生中継をDtubeにアップしながら探索するのが当たり前だったが、今は少し状況が異なる。
現在は隊を分けていないため撮影していないというのもあるが、それとは別に剛志自身が狙われている現状、むやみやたらに生中継をしていたらそれこそただの馬鹿である。
そのため剛志は職員の上白根さんからDtubeの鍵付き配信なるものがあることを聞き、今では配信の設定をその鍵付きでの配信に切り替えているのだ。
これによって不特定多数に見られることはなくなったが、剛志の知り合いにはパスワードを教えているので見ることはできる。元々配信者として人気になるつもりのなかった剛志は、少しだけ視聴者的な人たちがいたので若干のさみしさを覚えたが、特にこだわることはなく配信方法を閉鎖的にしたのだった。
とにかく、今はそのようなことは関係ない。地下50階層の入り口の安全地帯から1,2分進んだあたりで前の方からやってくるドラゴンソルジャーたちが見えた。
「皆、敵だ。練習した通りに頼むぞ!」
そうやってゴーレムたちに指示を出す剛志。その剛志の指示のもと、トレントウッドジェネラルゴーレムたちが指揮をとりだす。
前方からやってくるドラゴンソルジャーは全部で5体だ。その体躯は身長で言うと約3mほどあり、ゴーレムたちと並んでも大差ない。筋骨隆々であり、体中が鱗で覆われているドラゴンソルジャーは2足歩行のトカゲ人間のような見た目をしている。
5体のドラゴンソルジャーの内訳は剣持ちが2体に槍持ちが3体だ。
その5体のドラゴンソルジャーたちが剛志のゴーレムを認識したとたんに、一気に走り出しその距離を縮める。
流石地下50階層に出る推奨レベル100相当の魔物だ。剛志はそのスピードを目で追うことはできるし、反応することも可能だが、とてもじゃないが逃げたり攻撃を避けたりできない速度で動いている。
しかし、剛志自身の戦力はたかが知れていても、剛志はゴーレムを用いて戦うゴーレムマスターだ。剛志のゴーレムたちはドラゴンソルジャーたちに十分対抗できている。
まず勢いそのまま攻撃を仕掛けてくるドラゴンソルジャーの攻撃をビックシールドゴーレムが盾型の腕で受け止める。そして、攻撃を完全に受け止められたことでたたらを踏むドラゴンソルジャーたちに、ビックシールドゴーレムたちの隙間からトレントウッドランサーゴーレムの槍が炸裂する。
チクチクといやらしい攻撃を繰り出すランサーゴーレム。しかしこのコンボがシンプルながら一番強いのだ。ドラゴンソルジャーたちはなすすべなく徐々に体力を削られていく。そこに今度はハンターたちの矢が突き刺さり、ものの1分程度でソルジャーたちはドロップアイテムを落とし煙となって消えていく。
ゴーレムマスターになったことで手に入ったスキルや、ゴーレムカスタマイズのお陰で剛志の戦力が大幅アップしているからか、以前は戦闘に勝利しても消耗も激しく引き返すことになったこの階層でも、ほとんど無傷での勝利となった。
「おお、さすがに圧勝だな。どうだ臼杵。結構やるだろ」
そういい得意げな剛志。それに対し臼杵はあきれたように、
「だから、もう大丈夫だって何度も言ってただろう。それを過剰に準備して、そりゃ圧勝するだろうよ…」
と返事する。臼杵からすると、すでにこの階層は問題ないことは目に見えてわかっており、何度も進もうと助言していたのだが、それでも聞かなかったのは剛志の方なのだ。
ただ、剛志を擁護すると、彼も問題ないことはわかっていたのだ。しかし、前回の撤退が彼に強くこの階層の脅威を刷り込んでいたので、過剰なまでに警戒していたというのが本当のところになる。
そんな剛志も来てみれば圧勝できたことにすっかり調子に乗ってしまい、どんどん進んでいく。まだワイバーンには合わなかったこともあり、出会うドラゴンソルジャーたちをどんどんドロップアイテムに変えていく。
ここでおさらいをすると、ダンジョンでは魔物のドロップアイテムのほかに、素材の採取でアイテムをとることができるが、この階層にもいろいろな鉱石がある。それにプラスしてこの階層以降はドロップアイテムの種類も豊富なのだ。
ダンジョンの魔物のドロップには少し法則性がある。基本的に地下49階層までの魔物は1種類だけ。50階層以降は複数種類あるというものだ。レアドロップは49階層まででもあるが、通常ドロップが複数になるのは地下50階層以降だ。
これの理由はわかっていないが、ダンジョンとしても地下50階まではある意味チュートリアル的なことなのかもしれない。そうなると探索者の多くはチュートリアルで止まっているということになるのだが…
そんなこんなで、出会うドラゴンソルジャーたちを蹂躙しながら進む剛志の頭上に新手の気配がした。ワイバーンがやってきたのだ。
ワイバーンはドラゴンソルジャーに比べ戦闘力が一気に上がる。おおきさは翼を広げると7、8メートルも度にもなり、先ほどまでのドラゴンソルジャーたち複数よりワイバーン一体の方が強い。
そんなワイバーンが上空から2体剛志目掛けて滑空してくる。
「おいおい、いきなり2体かよ!メイジ、ハンター迎撃だ!」
そういいゴーレムたちに指示を出す剛志。剛志の指示のもと各種メイジが、上空から滑空してくるワイバーンたちに思い思いの魔法をぶつける。その横で今回も活躍しているハンターたちの矢もワイバーンを襲う。
剛志と臼杵の周りには、二人と同じくホースゴーレムに乗ったジェネラルたちが展開し、万が一剛志まで到着した際のバックアップを準備している。
空から滑空してくるワイバーンたちは、そのスピードを生かしながら自慢の尻尾を振り回し剛志に攻撃を仕掛けようとしてくる。しかしその途中で地上から放たれた魔法の弾幕がワイバーンを襲う。
「「ギャオォォォン」」
二体のワイバーンはその身をよじりながら魔法の弾幕を逃れようとするが、複数体から放たれた魔法はもはや壁のように立ちふさがっており、よけきれない。そしてその身で魔法を食らい、ダメージを負いながら滑空軌道がずれて渓谷の岸壁にぶつかる。
そのぶつかったことによって動きが止まったところに、ハンターたちの矢が追撃をし、たまらなくなったワイバーンはそのまま地面に落ちた。
空飛ぶ飛竜も地面に落ちてしまえばちょっとカッコイイだけのトカゲだ。それも瀕死のトカゲなので、そこをすかさランサーたちの槍が突き刺し、ワイバーンたちも煙となって消えた。
「おお、あのワイバーンも無傷で勝利だ。それに今回の戦闘でまたレベルが上がったし。順調順調」
以前は最も厄介だったあのワイバーンも、無傷で勝利したことでご機嫌の剛志。
そしてどんどん上がるレベルに楽しくなっているようだ。
「そうだな、地下50階以降はレベルの上がり方も早いぜ。まあ、それだけ敵の強さがどんどん上がっていくということでもあるんだがな。だからあまり調子に乗って進みすぎないようには注意しとけよ。いきなり勝ち目のない敵が出てくるなんてざらだからな。」
そういって剛志を心配しアドバイスをくれる臼杵。やはり情報は大事だ。調子には乗っていたが、しっかりと肝に銘じよう。そう思うのだった。
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