第75話 地下50階層への進出
剛志がレベル100になり、職業がゴーレムマスターに変わった当日は、そのまま新しいスキル等の使い心地を試すだけで時間が来てしまった。それでもかなりの戦力アップができたことで大満足の剛志。
「いや~臼杵の言う通りだったな。こんなことになるなら早く上級職に上がっとくべきだったよ」
そう上機嫌に言う剛志に対し臼杵は反論する。
「いや、たかが上級職に上がるだけで、そこまで戦力アップができるのは世界中探しても剛志ぐらいなもんだろ。俺が言っていたのはそういうわけじゃないんだよな…。まあ、護衛対象が強くなってくれれば、俺らの仕事も楽になるし結果オーライか」
そこからいつものゴーレムの回収と移動をした剛志は、横浜第三ダンジョンに戻ってきて、寝ることにする。
仮設テントの中は臼杵と剛志のベットが存在し、女性の万葉は別のテントで寝ることになっていた。彼女の性格もあり、普段はテントに帰ってきてからは接触することもなかったのだが、今日は違った。彼女の方から剛志たちのテントを訪ねてきたのだ。
「はい、大丈夫ですよ。入ってください」
万葉から、話があるからテントに入っていいかと聞かれた剛志は、彼女に入るよう返事した。
「ありがとう。そんなに長くはならないから手短に話すわね。今日あんた上級職に上がったわよね。それであんた自身の戦力もかなり上がった。だからここらで1日お休みをもらえないかなって思って。どうかしら」
そう剛志に聞く万葉。思えばすでに半月以上剛志の護衛をしてくれている。依頼主はダンジョン組合だが、それでもかなり頑張ってくれているだろう。あれ以来襲われることもなかったし、今では臼杵もいる。十分問題ない。
そう考えた剛志は万葉に問題ないことを伝え、明日は彼女は不在となった。
一応緊急連絡先としてスマホの番号をもらった剛志。特にかけることはないだろうと思ったが自身のスマホに登録しておく。
「臼杵も、そのうち休みを取ってくれていいよ。まだまだ先は長いと思うし、俺一人でもある程度は身を守れるようになってきているしね。」
そう剛志が言うと、臼杵は笑いながら答えた。
「確かにな、万葉ちゃんがいないと男臭くてかなわねえわ。俺もそろそろ人肌恋しくなってきたところだしよ、どっかで俺もお休み貰おうかな。お前さんを倒すのはかなり難しいしね」
と冗談交じりに回答する臼杵。そんな男同士のくだらない会話を少しした後、剛志たちは眠るのだった。
翌朝、目を覚ますといつもの光景が目の前に広がる。大きないびきをかいている臼杵。剛志たちの周りを警護するように、直立不動で辺りを警戒しているトレントウッドジェネラルゴーレム。今日も無事朝を迎えられた。
そこから剛志は臼杵を起こし、いつものようにダンジョン支部に行く。
いつもと違うのは万葉がいないことだ。元々あまり会話に参加してこない彼女だが、いなくても変わらないかというとそうではない。彼女の醸し出すオーラや、その美貌で、声を発していなくてもとんでもない存在感の宮本万葉がいないだけで、なんだか緊張感がなくなったように感じるのだった。
そんなこんなで、万葉がいない以外はいつもと同じ一行は、ダンジョン支部で全国の状況や、次に行く予定のダンジョンなどの情報共有を済ませたのち、これまたいつものようにダンジョン内に向かう。
そして向かった先は横浜ダンジョンの地下50階層だ。昨日上級職に上がったこともあって、もうそろそろ地下50階層以降も進んでも大丈夫だろうと判断したのだ。
「剛志、俺は一回しか来たことないし、あまり探索しないで引き返したからよく知らないんだけど、横浜第三ダンジョンの地下50階層ってのはどんな感じなの?」
そう聞いてくる臼杵に説明してあげる剛志。
「そうだね、俺もそんなにここの階層は戦わないで引き返しちゃったけど、何回か探索したから教えるよ。まず横浜第三ダンジョンの地下50~59階層に出てくる魔物はワイバーンやドラゴンソルジャー系だね。ドラゴンソルジャーはシンプルにパワーがあって、ワイバーンは上空から攻撃してくるから、それが対処できなかったんだよね。まあ臼杵なら問題ないと思うけど。ここも基本手出し無用で頼むよ。」
「OK、わかったよ。」
横浜第三ダンジョンの地下50階層は渓谷のようなフィールドになっている。渓谷といってもその道幅は20mほどあり、十分広い。そこをドラゴンソルジャーが歩いていて、ワイバーンが上空から襲ってくるといった構図だ。
地上と空の両方に意識を向けないといけないため、かなりいやらしいフィールドだ。それにダンジョンは地下50階層以降、魔物の脅威度は一気に加速される。ここからが上級者のダンジョンといってもよいだろう。
そんな地下50階層を探索するべく剛志は、いつものように自身のゴーレム軍団を出現させる。
「【ゴーレム異空庫】」
剛志が召喚したゴーレムたちドンドンと目の前の空間に並んでいく。
道幅20mというと大体小学校の体育館ほどの幅になる。それだけの空間だが、剛志が召喚するゴーレムたちで埋まっていく光景はいつ見ても壮観だ。
今回剛志が召喚したゴーレムの内訳は団体こんな感じになる。
・ビッグシールドゴーレム×20
・トレントウッドランサーゴーレム×15
・トレントウッドハンターゴーレム×10
・トレントウッドメイジゴーレム(火/水/風/土)×10
・トレントウッドメイジゴーレム(光/闇)×5
・トレントウッドジェネラルゴーレム×3
・トレントウッドホースゴーレム×3
これが剛志たちの前後に展開されるので、さらに倍といった感じだ。
狭い地形で、個の力が強いドラゴンソルジャーと戦うので小回りの利くウッド系列でそろえたのだ。それに空を飛ぶワイバーンには現状ウッド系列のハンターやメイジが必要なので、今回はストーン系列のゴーレムはビッグシールドゴーレムだけなる。
このビッグシールドゴーレムだが、剛志がゴーレムカスタマイズで作った新種のゴーレムになり、見た目はブラックアイアンゴーレムの腕が大きな盾になったようなゴーレムだ。
警察の機動隊なんかを想像してもらえるとわかりやすいだろう。
このビッグシールドゴーレムは攻撃力等を削る代わりに一番の防御力を誇る。守り特化型ゴーレムだ。
「よし、ここからが本番だ。頑張るぞ~」
そういう剛志に対し、横で特に緊張した様子のない臼杵の気の抜けた声が聞こえる。
「おお、頑張りな。ま、困ったら俺が助けてやるよ」
彼にとってはこの程度の階層は朝飯前なのだろう。
先ほど朝ごはんを食べた後で朝飯前とは、日本語は不思議だななどと意味のないことを思う剛志だが、ようやく本格的な地下50階層の探索を開始するのだった。
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