第67話 ショッピング①
金田から、ゴーレム作成を一時中断してほしいと依頼があり、剛志は日中のやることがなくなってしまった。
クーデター後、休まず働いていた剛志は、急にできた空き時間に何をしようかまず考える必要がある。そしてその剛志の予定に対し、ついてくる必要がある護衛の二人には影響があるため、二人にも意見を聞こうと考えた剛志は、万葉と臼杵の二人を呼んで相談することにした。
「集まってもらってすみません。先ほど金田さんから材料供給が間に合わなくなってきたので、ゴーレムの増量は一時中断してほしいと言われました。なので、今まで日中やっていた作業がなくなり、時間的に空きができたのでその時間を使って何かしようと思うのですが、お二人の意見も聞こうと思って」
そういう剛志に対し、万葉は今日もそっけない。
「別に、あんたの行きたいところに行けばいいじゃない。仕事なんだからついていくわ。もしくは交代で動くとして、こいつがついていくことになるだけだからね」
そう言い、隣の臼杵を指す万葉。そんなそっけない態度の万葉とは対照的に臼杵は愛嬌がある。
「おお、マジか!よかったな剛志。俺だったらあんな作業を永遠にやるなんて頭がおかしくなってまうよ。それに行きたい場所か。う~ん特にはないけど、今回の依頼で報酬もあるだろうし、アイテムや装備を補充するのもいいんじゃないか?」
そう剛志に提案してくれた。それを聞いて剛志はなるほどと思った。
「おお、なるほど!それはいいですね。確かに今まであまりアイテムとかも詳しく見てきたりしなかったですし、幸い資金はある程度潤沢になってきているので、この辺でアイテムを補充するのはいいアイデアかもしれません。そうしましょう!」
と言って、乗り気だ。そこで金田にこの計画を説明すると、良いアイテムショップを紹介してくれるということなので、そこに向かうことにした。
ところで話は変わるが、今回のスタンピードで最も忙しくしているスキルホルダーの一つが、ダンジョン間転移のスキルホルダーだろう。剛志もよく利用させてもらってはいるが、話を聞いたところスタンピード前に比べ、10倍の需要らしい。急を要する動きが増え、需要が急増しているようだ。
そんな最近ではおなじみのダンジョン間転移により、新宿ダンジョンにやってきた剛志たち。このダンジョンは日本で唯一スタンピードが発生していないダンジョンで、ダンジョン組合の本部もあるため、今一番栄えているダンジョンといっても過言ではない。
そんな新宿ダンジョン内にある、ミツキヨアイテム店が今回の目的の場所だ。ここはミツキヨアイテムショップの本店で、最も品ぞろえが良いそうだ。
そんな金田のおすすめに従って、アイテムショップにやってきた剛志。横浜第三ダンジョンにあったアイテムショップもかなり大きかったが、さすがにこちらの店舗の方が大きい。さらに、かなりの賑わいだ。
「おお、なんだかこれからここで大人買いしようと思って入ると、かなりワクワクしますね」
そう言う剛志に対し、臼杵は少し驚いたように返事する。
「おいおい、大人買いするのかよ。それは太っ腹なこった」
そう言い笑う臼杵。剛志としては、まだまだ壁作成で資金は増えることがある程度確約されているため、現在の軍資金約3億を使い切る意気込みで今回の買い物に来ていた。
少し前まではただの一般市民だった剛志なので、もちろんこんな高額な買い物はしたことがない。魔石変換機を買った時でさえ、融資をもらっての購入だったし、今回は桁が違う。そんななんとも言えない高揚感とともに、アイテムの物色を始める剛志。
入ってすぐに、店員さんがついてくれたので、臼杵のアドバイスも受けながら、購入したいものを伝えていく剛志。無難なポーション類は、最後の端数調整でよいだろうと思い、今回はまずマジックアイテム関連を探そうと思っている。
「マジックアイテムはどういったものがありますか?」
そう店員さんに質問する剛志。それに対し店員も丁寧に返事をしてくれる。
「どういったものをお探しでしょうか?例えば武器なのかとか、ステータスを上げるアイテムだとか、スキルオーブ系もございますが」
そう聞かれた剛志は、なんとなく自身の器用の値を上げるためのアイテムが欲しいと考えていたが、スキルオーブの存在も思い出し、その2つが見たいといった。
そうして連れて行かれたのは、まずアクセサリーのゾーンだった。
「こちらに置かれているのはステータス向上用のアクセサリーになります。お客様のお求めになっている器用のステータスが上がるアイテムはこちらになりますね」
そういって、教えてくれたアイテムをいくつか抜粋すると以下のようになる。
《蒼碧の観察眼》
種別:片眼鏡(装着タイプ)
効果:器用 +5%/命中精度補正/視認範囲+5m
価格:420万円
備考:遠距離攻撃使いに相性がいい。
《神託の手首飾り》
種別:リストバンド型アクセ
効果:器用 +8%/MP回復速度 +2%
価格:680万円
備考:スキル行使中の安定感が大きく向上。
《黄金比の指環》
種別:指輪
効果:器用 +10%/作業時間-10%
価格:980万円
備考:手先精度の限界を引き上げる実用品。
《天眼なる五指》【一点物】
種別:指輪5連セット(片手用)
効果:器用 +50%/すべての精密動作成功率 +15%
価格:1億2000万円(※一点限り)
備考:五指の動きをそれぞれ魔力で制御する。市場にはなかなか出回らない。
こういったマジックアイテムは、今まで効果の弱いものしか見たことがなかった剛志だが、こういった大きな店で予算も潤沢にあるとすごいアイテムがあるもんだと感心している。
ちなみにざっくりとしたアイテムの値段感はこのようになっているようだ:
| クラス | 説明 | 想定価格帯(円) |
|--------|------|------------------|
| 入門級 | 副業探索者向け、一般品 | 1万〜15万 |
| 中級品 | 常連探索者〜低階層攻略班向け | 15万〜100万 |
| 上級品 | 高ランク探索者、企業契約者向け | 100万〜1000万 |
| 特級品 | 限定品・個別強化済み・伝説級 | 1000万〜1億以上 |
今まで、こういった高価な買い物はすることがなかった剛志だが、今後自身のレベル感が上がっていくことで、こういったものにも慣れなくてはいけないと感じる。
ただ、それは置いておくとして、こうやって見るとかなり器用の数値を上げるアイテムはあるみたいだ。そしてここで剛志のスキル《所持制限無視》が活きてくる。
通常、自身のステータスを上げるような効果は、一人につき一つしか適用されない。
武器や防具にも似たような効果を持ったものは存在するが、それは武器として使用したとき、防具として使用したときに発動するもので、常時発動ではない。そのため、こういったアクセサリー型のパワーアップアイテムは、最も効果が良いものを一つだけ装備するのが普通となる。
そこで《所持制限無視》のスキルが生きるのだ。このスキルのおかげで、いくつもの効果を重複して手にすることが可能になる。もし普通の探索者が《所持制限無視》のスキルを戦闘に活かそうと考えると、まず最初に思いつくのがこの方法だろう。
剛志は今まで、自身のステータスはあまり重視していなかったので気にしていなかったが、今回器用の値が重要なスキル《ゴーレムカスタマイズ》を手にしたこともあり、アイテムによる強化をしようという流れなのだ。
「おお、結構いいのがありますね。それにこの一点物の《天眼なる五指》は値段もすごいですが、効果もすさまじいですね」
「はい、そちらは当店でもかなり高額な商品の一つになります。探索者の方は唯一の強化枠を器用に使用することが少ないため、あまり需要がなくお安くなっていますが、それでもかなり優秀な一品です。いかがでしょうか?」
そう聞かれた剛志は、値段の計算を始めた。
今回の予算は3億。剛志はスキルの影響で全部を購入して装備することが可能だ。指輪だけは物理的に被るため、左右の指で分ける必要があるとは思う。そうすると理論上最大で以下のようになるはずだ。
- 《天眼なる五指》×1:1億2000万円
- 《黄金比の指環》×5:4900万円
- 《神託の手首飾り》×2:1360万円
- 《蒼碧の観察眼》×1:420万円
**合計:1億8680万円**
こうすると、まだ1億ほど予算に余裕ができる。これで購入するのもありだが、ほかにも買いたいものがあるため、ここではいったん買わず、別の売り場を見てから決めることにした。
そして次に来たのはスキルオーブのゾーンだ。スキルオーブは手の中で使用することをイメージするだけで、光になって消え、スキルを得ることができるアイテムだ。また、スキルのランクを上げるランクアップオーブも存在する。
ランクアップオーブは汎用性があるため値段が高く、スキルオーブはスキルの種類によって値段にばらつきが大きい。ちなみにランクアップオーブは各☆ごとに対応するものがあるため、☆5へランクアップさせるオーブはものすごく高価で取引される。
そんなオーブが並ぶゾーンに案内された剛志は、このままスキルについても吟味を始めるのだった。
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