第62話 那覇ダンジョン
剛志たちが那覇ダンジョンに到着したとき、そこはすっかり夜になっていた。横浜でもほとんど夜だったが、那覇が曇っていることもあって辺りが真っ暗に見える。
そんな不思議な現象に剛志は遠くに来たのだなと感じたのだが、正確に言うと位置的には那覇の方が夜になるのは遅いはずだ。これはただ曇っているかいないかの違いによるものだろう。
まあ、そんなことはどうでもよく、剛志は遠く離れた土地、沖縄の那覇ダンジョンにやってきている。
ここは一番被害が大きいと言われるだけあり、地上部分にもスタンピードの影響が見られる。裂け目外への進行を許してしまったのだろう。
辺りの建物はかなりボロボロで、人が住めるような状態ではなさそうだ。横浜第三ダンジョンは周辺住民への立ち退きにより人がいなくなっていたが、ここはそもそも住める状態ではないため人がいないようだ。
そんな違いに唖然としていると、本部テントから男性が出てきて挨拶をしてくる。
「やあやあ皆さん。話は聞いています。ようこそお越しくださいました。私は那覇ダンジョン支部長の新垣 琉真と言います。この度はありがとうございます。」
と言って挨拶をしてくれた。彼は身長190はありそうな大男だが、物腰が柔らかそうな人物だった。
新垣さんといくつか事務的な話をした後、剛志はさっそく壁建設を始めることにする。
ここに来る前にすべてのゴーレムたちはゴーレム異空庫にしまっているので、壁を作る予定の領域外周まで進み、ゴーレムを出していく。
剛志のウッドカーペンターゴーレムは現在全部で7674体もいるため、そのすべてを出し切るのにも数分かかってしまう。そこで剛志はいつものゴーレム異空庫を使う際にその大きさを最大限に広げることに意識し、時短を図った。
剛志の目の前に直径5mほどの大きな転移陣が作り出され、そこから大量のウッドカーペンターゴーレムが出てくる。一度に出てくる数も多いのだが、それでも足りないため、出たらどいて新しいゴーレムが出てくるというのを何回も繰り返す。
その光景に那覇ダンジョンの職員たちは唖然としているが、横浜第三ダンジョンから来ている人たちは見慣れた光景だ。
そうやってすべてのゴーレムたちを出した剛志は、さっそくウッドカーペンターゴーレムに壁の作成を指示する。
今回はすでに作ったことのあるものなので鏑木たちの指示は特にいらないだろう。なので彼らも確認だけで済む。そんな作業を開始した剛志たちは、一通りの指示や準備が終わったタイミングで本部テントに戻ってきた。
本部に戻ったタイミングで那覇ダンジョンの支部長である新垣が話し出す。
「…いや、話には聞いていましたが、あの量を目の当たりにするとすさまじいですね。あれだけのゴーレムが作業をしてくれるのであれば、すぐに完成できそうです。」
「そうですね、すでに一度やった作業なのでゴーレムたちの作業スピードも速いでしょう。数も増えているので、順調にいけば明日にはできるんじゃないでしょうか?」
そう返事する剛志に対し、横にいた鏑木が賛同する。
「そうだな、その計算でいいと思うぜ。この後も彼のゴーレムは夜通し作業するから、本当に明日中には完成するだろうな。むしろ確認作業が追い付かないぜ。」
「なるほど、あの鏑木建設の社長のお墨付きなら信頼できます。私どもとしても一刻も早い復興が急務なので大変助かります。」
そう言って、とてもありがたそうにする新垣所長。それに対し剛志が少し思ったことを提案する。
「新垣所長、このあたりを見ると瓦礫の撤去などの作業がまだ残っているように思うのですが、そちらも私のゴーレムに手伝わせましょうか?ここにいる間だけにはなるかもですが、瓦礫の撤去作業などでは別のゴーレムが役に立つと思うんです」
「え、本当ですか!?それは助かります。私どもも人手を募ってはいるのですが、どうしても足りず、残ってしまっている部分がいくつかあるのです。」
と言ってとても喜んでくれた。なので剛志はアイアンゴーレムを出し、彼らにここにいる間は職員の指示に従って瓦礫撤去をするように命令をした。
アイアンゴーレムたちが那覇ダンジョンの職員に連れられ瓦礫の撤去に行くのを確認した剛志は、明日の作業に備えて眠ることにした。
眠る前にシャワーを浴びたかったのだが、ダンジョン支部のシャワーはスタンピードで壊れて使えないそうなので、ダンジョンから少し離れたところにあるホテルに移動し、シャワーを浴びて戻ってきた。
ホテルで寝てしまいたいのだが、ダンジョン外だとスキルが使えないため、命を狙われている今は護衛のためにも戻るように言われたので戻ってきた形だ。
ダンジョンに戻り仮設のテントで眠ろうとした剛志はふと思い出し、護衛のゴーレムを出すことにする。
テント内にウッドナイトゴーレムを二体出し、テントの周りをウッドジェネラルゴーレム率いるウッドナイトゴーレムやハンターゴーレムなどの集団に護衛を頼んだ剛志。
近くのテントに宮本万葉も眠ることになっているが、彼女も休息は重要だ。なので剛志自身でも自らの身を守れるようにならないといけない。これはその第一歩なのだ。
そうして自身の護衛をゴーレムたちに頼んだ剛志は、ぐっすりと次の日の朝まで眠るのだった。
次の日。昨日の今日で剛志は襲われることなく、普通に目を覚ますことができた。
MPも回復しているし、まだまだゴーレムを作る必要がある剛志は、再度の作成を始める。
ここからは場所が違うだけでやることは同じだ。魔石変換機を出し、どんどんとスキルを使用していくだけ。そんな流れ作業で何度か集中力が切れてしまう剛志だが、今はこれをやるしかない。そう言い聞かせてどんどんゴーレムを作っていく。
そんな時だ、変化が訪れたのは。脳内にスキル獲得のアナウンスが聞こえてきたのだ。
「『同一種類のゴーレムを10000体作成したことを確認しました。スキル【ゴーレムカスタマイズ】を開放いたします』」
剛志は、いきなり発生したアナウンスに戸惑い、固まってしまった。
それを見た万葉は刀に手をかけ、周囲を警戒する。そして近くで同じく作業をしていた金田は剛志に「大丈夫ですか?」と話しかけてくる。
それを聞いた剛志はハッとして、二人に問題ないことを伝える。
「いえ、問題ないです。いきなりスキル取得のアナウンスが来て驚いただけで……」
という剛志。それに対し金田はよくわからないような反応をしたが、万葉は心当たりがあるようで教えてくれた。
「あ〜そういうことね。警戒して損したわ。ごくまれに珍しい実績をクリアすると新しいスキルが使用できるようになるのよ。私も持っているわ。上位の探索者は持っている者も少なくないわ。でもあなたの場合は想像がつく、こんだけバカみたいな量のゴーレムを作っているのだから、それが理由じゃない?まあ、マナー違反だからこれ以上は詮索しないけど」
と言って元いた場所に戻っていった。
万葉の言葉を聞いた剛志は、なるほどと納得したが、まずは作業を終わらせないとと思い、作業を再開した。
先ほど取得したスキルは、この作業がひと段落着いた後に確実に確認することを心に誓って。
そして一通り想定した作業が終了したころには、すでに日も暮れかけていた。
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本日の作成ゴーレム
ウッドカーペンターゴーレム ×2784
本日の消費材料
魔石(1,110,816MP分) 約11,108,160円分
材木 ×11,136個 約1,113,600円分
特級MPポーション 2個 約2,000,000円
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