第59話 剛志自身ができること①
輪島に襲われ、そのあと死にそうになったところを宮本万葉に助けられるという、今まで経験する可能性すらなかった出来事を経て、意識を新たにした剛志。
そんな剛志は現在というと、昨日と変わらずウッドカーペンターゴーレムをせっせと作成している。
昨日までと違うのは、近くに宮本万葉が刀を腰に差した状態で、キャンプで使うような椅子に座っているくらいだ。
戦闘の心得を教えてもらうという約束をした剛志だが、今はそれよりも壁を作り切ってしまうことの方が優先度が高いため、このようにゴーレムを作っている。
肝心の壁の進捗具合というと、昨日の夜に一度剛志の戦闘によって作業をストップしていたが、それ以外は夜通し作業が行われており、鏑木さんたち監修のもと、大きな門が正面に位置する場所に作成されていた。
今は一週目で作成されていた土台の上に、壁を伸ばしていく作業を行っており、剛志のゴーレムの数もかなり増えたので、ほとんどすべての壁に広がって作業を進めている。
このペースで行くと、今日中に剛志がやる必要のある作業は終わるのではというのが、鏑木さんたちの意見だ。
その後は鏑木さんチームと一緒に次のダンジョンに移動し、同じ作業を進めていく。
そういったスケジュールになっている。
「ふぅ、いったん休憩だ…」
そう言い剛志が作業を少し止めたのは、ちょうどお昼時だ。第一回目のMPを使い切ったのだ。
支給されているMP回復薬を飲み、MPが回復するのを感じた剛志だが、すぐに作業を開始するのではなく、近くで見ていた金田さんと宮本万葉の二人と一緒にお昼をとることにする。
「いや~剛志さんのゴーレムのおかげで、かなり作業の進捗が早いですね。昨夜は大変だったのにお休みをさせられず申し訳ありませんが、こちらも急ぎなのでよろしくお願いします。バックアップは頑張りますので」
そう言いながらお弁当のご飯をかき込む金田の目にもクマが見える。全国のダンジョンで壁を作らなくてはならないということは、それだけ予算と材料が必要なので、それらを管理・運用している金田もここ数日ハードワークなのだ。
剛志も同じく忙しくしているが、必要なことだと理解しているので文句を言えるわけもなく、「ええ、お互い頑張りましょう」とだけ答え、お弁当を食べ進める。
少し雑談をしつつご飯を食べ終わった剛志たちは、作業を再開する前に少しだけ休憩時間をとっていた。その時間を利用して剛志は、宮本万葉に戦いの心得を学ぼうと思い話しかけた。
「宮本さん、昨夜相談した戦いの心得の話なのですが、今少しいいですか?」
「ん?いいわよ。でもそうね、心得って言われても何を教えたらいいのかわかってないのよね。別に私人に教えるの得意じゃないし。まあ、でも今のあなたに足りないと思っていることを教えるでもいいかしら?」
「はい、お願いします」
そう剛志が答えると、万葉は話し出した。
「まず第一に、あなたは根本的に危機感が足りないのよ。昨日の出来事もそうだけど、身の安全を守るためにできることをやっていないわ。なぜ寝るときに護衛のゴーレムを出していなかったの?本体が弱いゴーレム使いなら基本中の基本でしょ」
「そうですね。お恥ずかしい。言い訳をするならダンジョンの中では護衛を出していました。昨日はそれを怠っていた形ですね」
剛志の言い訳に、ため息をつく万葉。
「はぁ、全くお話にならないわ。今のあなたはいつものダンジョン探索よりも圧倒的に危険度が高いのよ。それにその危険度は今後も変わらないわ。常に身の安全を考えなさい。じゃあ今度はあなたに質問なのだけど、今あなたができることを完全に把握している?」
そう聞かれた剛志は、自身のできることを考えた。ゴーレムたちの連携は段々と様になってきたし、昨日も咄嗟の判断で何とか輪島に勝つことができた。それなりにできているんじゃないか?そう思い答えた。
「そうですね。できることの把握はできていると思います。ゴーレムたちの連携や戦闘スタイルなんかも確立してきていますので」
そう剛志が答えると、万葉は馬鹿にしたように話し出す。
「あれでできることの把握ができているですって?ちゃんちゃらおかしいわよ。あんなもの、ただ数を生かしたごり押し戦法でしょ。確かにそれが結局のところ強いのは認めるけど、連携ということを考えるなら攻撃のタイミングは調整が必要だし、数も最適かどうかも見直す必要があるわね。ただ、そういうことを言ってるんじゃないの。もっと根本的な、あなたが使えるスキルの中身を把握しているのかを聞いているのよ」
と、論破されてしまった。
剛志はそこで自分のスキルについて考えてみたが、やれることが多すぎるために放置していた部分が多いことや、自身ができることが何なのかを把握しきれていないように思えた。
なので、「なるほど…」と考え込んでしまった。
そんな剛志を見て、万葉は続ける。
「私が戦いの心得をあなたに教えるには、まず自分のできることを把握してからね。それができていない奴に話しても意味ないもの」
と言い、そこからは何も話してくれなくなった。
そうして剛志は、午後いっぱいを使い、昨日と同じだけのゴーレムを作成したところで少し休憩を取ることになった。
なんでも、あと一時間ほどでこのダンジョンに建設している壁がひとまず完成するようなのだ。
本来ならもっとやるべき箇所はあるのだが、時間との勝負なので、そのあとはゴーレムたちを回収し、別のダンジョンに移動する。そしてそのダンジョンの壁の作成作業にゴーレムたちを当てる予定だ。
そして剛志は、壁の完成を待つ間、自身のできることを改めて確認することにした。
まず、ステータスを確認すると以下のようになる。
名前:岩井剛志
職業:ゴーレム使い
スキル:所持制限無視・並列思考・二重詠唱
職業スキル:ゴーレム作成・ゴーレム再作成・支援魔法【ゴーレム】・ゴーレム強化・ゴーレム異空庫・ゴーレム償還
レベル:89
HP:242/242
MP:928/928
攻撃力:204
防御力:254
器用:405
速さ:301
魔法攻撃力:555
魔法防御力:613
――――――――――――――――――
所持ゴーレム数
アイアンゴーレム×989(-11)
ウッドナイトゴーレム×245(-5)
ウッドハンターゴーレム×250
ウッドカーペンターゴーレム×7674(+7424)
ウッドメイジゴーレム(火)×250
ウッドメイジゴーレム(水)×250
ウッドメイジゴーレム(風)×250
ウッドメイジゴーレム(土)×250
ハイマジックハンドゴーレム×2
ハイマジックレッグゴーレム×2
ハイマジックウイングゴーレム×1
マジックウェポンゴーレム×713
――――――――――――――――――
ステータス的にはMPと魔法防御力が高めで、次点が魔法攻撃力と器用だ。
このステータスから考えると、魔法系のスキルを剛志が持てば、戦闘には生かしやすそうだ。ゴーレムという自分を守ってくれる戦士がたくさんいるので、後衛職の魔法使いとも相性は抜群だと思う。
そう考えると、どうにかして魔法系の攻撃手段を持つことができれば、戦闘の幅は大きく広がりそうだ。そしてそうなった場合にも、今のゴーレムたちに自身を守ってもらうような立ち回りはとても重要になってくるだろう。
ここから剛志が導き出した答えは、今までのゴーレムたちの数による圧倒だけでなく、ゴーレムたちに剛志自身を強固に守ってもらうという戦闘方法も考える必要があるということだ。
それができれば剛志の生存率も上がるうえ、今までと違ってスキルによる剛志自身の戦闘への参加が可能になる。
今まで戦闘に自分が加わることを考えてこなかった剛志だが、これは「あり」なんじゃないかと思い始めた。そのため、すぐさま近くにいた万葉に自分の意見を聞いてもらったところ、剛志の想像とはまったく異なる回答が返ってきた。
「あんたは底抜けに馬鹿ね!なんでせっかくゴーレムたちに戦わせることができるのに、自分が戦おうとしてるのよ。あんたが付け焼き刃で魔法スキルを覚えたところで何の足しにもならないわよ。確かにあなた自身の戦闘力が上がるのは大事だけど、それはあくまでそのほかのことがちゃんとできたうえでの話でしょ! もう一回考え直しなさい!」
すさまじい剣幕で怒られた剛志は、目をぱちくりさせたのち、すごく反省した様子で元いた位置に帰っていく。
その後ろ姿は、とても頼りなく、情けないものだったとだけ記録しておこう。
本日の作成ゴーレム
ウッドカーペンターゴーレム×2784
本日の消費材料
魔石(1,110,816MP分)約11,108,160円分
材木×11,136個 約1,113,600円分
特級MPポーション2個 約2,000,000円
(お知らせ)
二転三転して申し訳ありません。再度小説の名前を変更したしました。
旧題
ゴーレムと歩む現代ダンジョン探索記 〜副業で探索者になったらゴーレム使いとレアスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜
新題
ゴーレムの可能性は無限大〜副業で探索者になったら職業とスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜
主人公が副業ではなくなった為タイトルを変えていたのですが、わかりにくい気がしていたので再度変更した形です。コメントでご意見頂けると嬉しいです。
ここから下は今時点で剛志が所有しているゴーレムたちのステータスを紹介します。
別に見なくても物語には影響ありません。見たくない人は飛ばしてください。
名前:
種類:アイアンゴーレム
スキル:体当たり・硬化
レベル:0
HP:350/350
MP:0/0
攻撃力:400
防御力:400
器用:90
速さ:150
魔法攻撃力:0
魔法防御力:0
【説明】
身長3m50cmほど、体重4トン。鉄でできたゴーレム。表面は金属特有の光沢をもち、かなり固い。
名前:
種類:ウッドナイトゴーレム
スキル:剣術・盾術
レベル:0
HP:180/180
MP:50/50
攻撃力:300
防御力:150
器用:160
速さ:200
魔法攻撃力:50
魔法防御力:50
【説明】
身長2m10cmほど、体重300㎏。木でできたゴーレム。木製の剣と盾を持ち、自身の体が鎧に包まれたような見た目をしている。
名前:
種類:ウッドハンターゴーレム
スキル:弓術・隠密・短剣術
レベル:0
HP:100/100
MP:50/50
攻撃力:300
防御力:60
器用:250
速さ:120
魔法攻撃力:40
魔法防御力:40
【説明】
身長1m70cmほど、体重100㎏。木でできたゴーレム。木製の弓を持ち、腰には短剣を携えている。フードをかぶったような見た目をしており、関節が柔らかく移動音がしにくい構造になっている。
名前:
種類:ウッドカーペンターゴーレム
スキル:木工・木造建築
レベル:0
HP:120/120
MP:120/120
攻撃力:30
防御力:30
器用:500
速さ:30
魔法攻撃力:30
魔法防御力:30
【説明】
身長2m30cmほど、体重150㎏。木でできたゴーレム。木製のトンカチを持つ。腰にいくつもの木製の工具を持っている以外はほとんどウッドゴーレムと見た目は変わらない。
名前:
種類:ウッドメイジゴーレム(火)
スキル:無属性魔法・火属性魔法
レベル:0
HP:60/60
MP:200/200
攻撃力:10
防御力:10
器用:100
速さ:60
魔法攻撃力:300
魔法防御力:200
【説明】
身長1m80cmほど、体重100㎏。木でできたゴーレム。木製の杖を持っている。ローブを着たような見た目をしており、腕や足は気持ち細め。
名前:
種類:ウッドメイジゴーレム(水)
スキル:無属性魔法・水属性魔法
レベル:0
HP:60/60
MP:200/200
攻撃力:10
防御力:10
器用:100
速さ:60
魔法攻撃力:200
魔法防御力:300
【説明】
身長1m80cmほど、体重100㎏。木でできたゴーレム。木製の杖を持っている。ローブを着たような見た目をしており、腕や足は気持ち細め。
名前:
種類:ウッドメイジゴーレム(風)
スキル:無属性魔法・風属性魔法
レベル:0
HP:60/60
MP:200/200
攻撃力:10
防御力:10
器用:100
速さ:100
魔法攻撃力:250
魔法防御力:150
【説明】
身長1m80cmほど、体重100㎏。木でできたゴーレム。木製の杖を持っている。ローブを着たような見た目をしており、腕や足は気持ち細め。
名前:
種類:ウッドメイジゴーレム(土)
スキル:無属性魔法・土属性魔法
レベル:0
HP:60/60
MP:200/200
攻撃力:10
防御力:10
器用:100
速さ:10
魔法攻撃力:300
魔法防御力:300
【説明】
身長1m80cmほど、体重100㎏。木でできたゴーレム。木製の杖を持っている。ローブを着たような見た目をしており、腕や足は気持ち細め。
名前:
種類:ハイマジックハンドゴーレム
スキル:伸縮、オーラ・力持ち
レベル:0
HP:50/50
MP:50/50
攻撃力:+50
防御力:+50
器用:+50
速さ:+50
魔法攻撃力:+50
魔法防御力:+50
【説明】
半透明のゼリーのような見た目。腕の形をしている。伸びたり縮んだりすることでトリッキーな動きをすることが可能。
名前:
種類:ハイマジックレッグゴーレム
スキル:伸縮・オーラ・俊足
レベル:0
HP:50/50
MP:50/50
攻撃力:+50
防御力:+50
器用:+50
速さ:+50
魔法攻撃力:+50
魔法防御力:+50
【説明】
半透明のゼリーのような見た目。足の形をしている。伸びたり縮んだりすることでトリッキーな動きをすることが可能。
名前:
種類:マジックウイングゴーレム
スキル:飛行・オーラ・軽量化
レベル:0
HP:50/50
MP:50/50
攻撃力:+0
防御力:+0
器用:+0
速さ:+300
魔法攻撃力:+0
魔法防御力:+0
【説明】
金属製の翼のような見た目をしており、イメージは飛行機やジェット機。エンジン部分から魔法的な炎を噴出し、それを推進力にして移動する。
名前:
種類:マジックウェポンゴーレム
能力:素材にした武器によって変化。現時点では強度の増加と念力での操作追加
【説明】
見た目は素材にした武器のまま。性能だけが追加される。マジックウェポンゴーレムになるとあくまでゴーレムなので、ゴーレム再作成で修復可能。
本作品を楽しんで頂きありがとうございます。
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