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ゴーレムの可能性は無限大 〜副業で探索者になったら職業とスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜  作者: 伝説の孫の手
復興と本業

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第56話 輪島武人

今日一日で本章の復興と本業編最終話まで更新しちゃいます!

更新時間は12時から一時間おきになります。

ストックはまだありますが、そのうち尽きるため、今日の一斉投降を終えるとしばらくは通常の更新ペースに戻ると思いますのでご了承ください。

作業開始二日目の夜。言い換えれば、全国スタンピード発生から二日目の夜。


剛志が眠る横浜第三ダンジョンの仮設テント近くに、不審な人影があった。


その人影は周囲の目を気にするようにあたりを見回しながら、こそこそと仮設テントが建てられている一帯を進んでいる。


この人物は、覚えている人もいるかもしれないが、以前剛志からドロップアイテムを奪い取った輪島だ。本名は輪島武人わじまたけひと。ダンジョンで燻っている不良探索者の一人である。


輪島は、前回剛志からドロップアイテムを奪った件でダンジョン組合に目を付けられることになった。


これまでにも似たようなことを何度かしていた輪島だが、相手はいつも駆け出しのルーキーばかりで、泣き寝入りされていたため、表沙汰になっていなかった。だが、今回は相手が悪かった。


剛志はルーキーではあるが、レアスキルの影響で組合から一目置かれていた。そんな相手に手を出した輪島は、ダンジョン組合に見限られ、切り捨てられたのだ。


具体的には、以降協会からの依頼を一切受けられなくなった。


ダンジョン組合は、ダンジョン産の素材を求める者や、スキル使用を必要とする者から依頼を受け、それを探索者に掲示することで活動している。


探索者は、その依頼をこなすことで、ただドロップアイテムを換金するよりも効率よく報酬を得ることができる。組合の運営は、こういった側面からも支えられている。


つまり、探索者の主な収入源は組合からの依頼報酬であり、輪島も例外ではなかった。その依頼を受けられなくなったのだ。


組合に理由を問いただしても、「違反行為の報告があり、ペナルティを科しました」としか返答がない。


しかし、タイミングからして剛志が報告したのは明白だと確信した輪島は、剛志への逆恨みから復讐を企てるようになった。


あの場には剛志のほかにも数名の探索者がいたが、輪島はすぐに剛志が担当職員付きの探索者であることを突き止め、完全に剛志のせいだと決めつけた。


それからというもの、輪島は剛志の行動を調べ、ダンジョン内での闇討ちを画策するが、剛志の活動階層がどこにも見当たらない。


というのも、この時すでに剛志は輪島よりも深い階層に潜るようになっており、ルーキーがいそうな階層を探しても見つかるはずがなかったのだ。


そうこうしているうちに、横浜第三ダンジョン内でも徐々に剛志の存在は知られるようになり、さらには誰かが見つけたのか、剛志の配信の存在も広まっていた。輪島もその配信を知るに至った。


そこで輪島の目に飛び込んできたのは、自分よりも深い階層で、次々と魔物を倒す剛志のゴーレムたち。その光景を見た輪島は戦意を喪失する。


剛志は日を追うごとに成長を続け、今や輪島が一生かかっても到達できないであろう階層を探索している。その事実を認識したとき、輪島は完全に諦めた――はずだった。


ではなぜ、今輪島はこそこそと仮設テントを人目を避けながら移動しているのか? それは、剛志への闇討ちを決行するためである。


先ほどまでの流れとは矛盾するようだが、その理由は単純。輪島はA.B.Y.S.S.に寝返ったのだ。


話は今日の昼間に遡る。ダンジョンがスタンピードを起こし、緊急事態となったことで、組合からの依頼が輪島にも回ってくるようになった。


その依頼を受けて横浜第三ダンジョンの警備についていた輪島は、あくびをしながらダンジョンの0階層を見張っていた。


出てくる魔物はスライムのみだが、ここにはまだ一般職員の出入りもあるため、組合は念のため数名の警備を配置していたのだ。


輪島は、敵がスライムだけという状況を「ちょろい依頼」だと軽く見て、ダンジョンの0階層の廃墟となった建物内でサボっていた。


そこに、ある男が近づいてきた。


サボっていることがバレると思った輪島は、勢いよく立ち上がり、なんとか取り繕おうとした。そんな輪島の挙動を見た男は、深いため息をつき、次の瞬間には輪島の目の前に立っていた。


そしてその男は、輪島の首元にナイフを突きつけながら話し出す。


「おい!お前が輪島か? 何か言え!」


いきなりの出来事に硬直する輪島だったが、脅されたことにより無言でうなずく。


「ちっ、こいつが本当に使えるのかよ」


そう言いながら、面倒そうにする謎の男。その男に命を握られた輪島は、全身から汗を噴き出し、息を潜めて次の行動を待った。


ナイフの先端が首元をかすめ、じんわりと血が滲む感触を覚えた輪島がようやく声を上げる。


「な、なんなんだよ!」


「あ? まあ、いきなりじゃ意味わかんねぇか。悪いな。俺はA.B.Y.S.S.(アビス)の構成員だ。A.B.Y.S.S.は知ってるか?」


「A.B.Y.S.S.!? それって、この前のスタンピードの……」


おびえた表情の輪島。それを見て、男は不敵に笑い出した。


「へっ、そうさ。そのA.B.Y.S.S.だ。じゃあ、俺たちの目的も知ってるな?」


「A.B.Y.S.S.の目的って、確か探索者が一般人を統治する社会の実現? そのために今、国にテロを仕掛けてるって……」


怯えながらも必死に答える輪島。彼の脳内では、なぜ自分がそんなテロ組織に命を狙われているのか全く理解できていない。


「ああ、まあそんなとこだ。そして今やっているのは人材のリクルートと、俺らの邪魔になるようなやつの排除だ」


そう説明する男。その言葉を聞いた輪島は「スカウトか」と早合点し、嬉しそうに声を上げる。


「ってことは、俺をスカウトに来たってことか? やってやるぜ! 俺も今の世の中には飽き飽きしてたところだ!」


喜々として語り出す輪島に、うんざりした表情を見せた男は、突然輪島の腹に一発食らわせた。


「うっ」


内部にダメージが残るような一撃により、その場でうずくまる輪島。怯えた声で「じゃあ、排除の方か……」とつぶやきながら後ずさりを始める。


その様子に面白がった男は、大声で笑い出した。


「あははははっ、お前、面白いやつだな。まさかここまでのバカがいるとは思わなかったぜ。途中で面倒になって殺そうかとも思ったけど、当初の予定通り計画を進めることにするよ」


そう言って笑い泣きしながら目じりの涙をぬぐう男。


恐怖と痛みで混乱する輪島は、じりじりと後ずさりして壁に背を預け、もう後がないことに気づき、今にも泣き出しそうな表情を浮かべた。


それを見た男が再び口を開く。


「わりぃわりぃ、意味わかんねぇよな。俺の目的はスカウトと排除だ。お前は仕事を成功させてくれれば、スカウトしてやるよ」


そう言って、にやりと笑みを浮かべながら計画の内容を話し出す男。


そしてその計画に乗り、A.B.Y.S.S.に寝返ったのが今の輪島武人わじまたけひとなのである。


そしてその計画のもと、輪島が今まさに実行しようとしているのが――剛志の暗殺なのだった。

本作品を楽しんで頂きありがとうございます。

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