第55話 二重詠唱
今日一日で本章の復興と本業編最終話まで更新しちゃいます!
更新時間は12時から一時間おきになります。
ストックはまだありますが、そのうち尽きるため、今日の一斉投降を終えるとしばらくは通常の更新ペースに戻ると思いますのでご了承ください。
次の日、簡易テントのベッドで目を覚ました剛志は、昨日お風呂に入れていないためベタつく体を早くさっぱりさせたいと思い、外に出た。
そして職員の人にシャワールームがあるかと尋ねる。
すると、ダンジョン支部の建物内の設備が使用可能だと教えてもらったので、そちらに足を踏み入れる。
ダンジョンの裂け目に立っていた別の職員にシャワーを使う旨を伝えると、護衛は必要かと聞かれたため、一応ついてきてもらうことにした。
裂け目をくぐり、いつも見慣れたダンジョン内に入る剛志。中は先日見たように戦闘の跡が残っているが、まだ面影はある。
そんな慣れ親しんだ街並みを進み、ダンジョン支部の中に入る剛志。
いつものように支部の入り口を通ると、中からスライムが飛び出してきた。
「ああ、そうか。ここにも魔物が出現するようになったんだな」
そんなことを再確認しながらつぶやいた剛志だったが、スライムが今にも飛び込んできそうだったので、ゴーレム異空庫を使用し、ウッドナイトゴーレムを召喚して倒してもらう。
その後は職員とウッドナイトゴーレムに護衛をしてもらいながら、シャワーで汗を流した剛志は、さっぱりとした気持ちでダンジョンを後にした。
裂け目から出て地上に戻ってきた剛志は、そのまま昨日の作業場まで歩く。
作業場に到着すると、すでに鏑木たちが来ており、ゴーレムたちが行った作業の点検を行っていた。
「おお、おはよう。昨日は眠れたか?」
「おはようございます。ぐっすりと眠れました」
「そうか、俺らもゆっくりできたわ。それに起きたらこんなに進んでる。ゴーレムってのは便利だな」
そう言って感心する鏑木。
ゴーレムたちを褒められて剛志は少し嬉しく思いながらも、自身の仕事をするべく材料置き場に向かう。
材料置き場の位置はアイアンゴーレムたちの手により工事の最前線に動かされていたため、少し探すのに時間がかかったが、なんとか到着した。
材料置き場にはダンジョン組合職員の金田と、見知らぬ探索者がいた。
「じゃあ届けたぞ。またな」
見知らぬ探索者はそう言い、金田に挨拶をしてその場を去っていった。
初めて見る男に疑問を抱いた剛志は、尋ねてみることにした。
「金田さん、おはようございます。先ほどの男性は誰ですか?」
「ああ、おはようございます。先ほどの方は剛志さんと同じく所持制限無視のスキルを持っている大盛さんですね。本部から物資を運んできてくださったところです」
そう言いながら、昨日よりも増えている材料置き場の山を指さした。
昨日の作業でかなり減っていた材料だったが、今見ると昨日のスタート時よりも多くなっていた。
「おお、すごい量ですね。これだけあれば今日のところは間に合いそうですね。でも、彼も所持制限無視のスキルホルダーなんですね。同じスキルを持った人、初めて見ましたよ」
そう言いながら、去っていった男の後ろ姿を見返す剛志。しかしすぐに姿が見えなくなったため、前を向き直る。
すると金田が気さくに話しかけてきた。
「そうですね、割と珍しいスキルですから。それに、基本はサポートとして働いている方が多いので、剛志さんと出会う機会がなかったんでしょう。それにしても、かなりの量でしょう?これだけあれば数日は持つんじゃないですか?」
「そうですね。昨日のペースではそうかもしれないですね。じゃあ、私は金田さんが追いつかないと泣き言を言うようなペースで作業を進めることを目標にしましょうかね。勝負です!」
そんな軽口を交わし、和やかな空気の中で話す剛志と金田。どことなく似た性質を持つ二人は、気が合うようだった。
それはともかく、剛志は作業を始めようと自身のステータスを確認する。
「ステータスオープン。よし!MPは回復しているな。あれ、一個スキルが増えてる」
そう言い、新しく増えたスキルを確認する剛志。今回増えたスキルはこれだ。
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**二重詠唱**
効果:スキルの発動を一度に二つ行える。その際の使用MPは二つ分になるが、起動時間は1.5個分になる。【使用MP:0】
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「おお、二重詠唱か!これは便利そうなものが手に入ったな。さっそく使ってみるか!」
そう言って剛志はマジックバッグから魔石変換機を取り出し、ゴーレム作成でウッドカーペンターゴーレムを二体作成した。
すると、いつもよりも少しゆっくりとしたスピードで、しかし二体同時にゴーレムが作成されていき、完成した。
その際の脳への負荷は、ゴーレムを一体作成する数倍だったが、並列思考のスキルを持つ剛志はその疲労に耐えることができた。
「うわ、思ったより疲れるな。でもこれだと二体を作成するのにかかる時間が結局1.5体分になるってことだな。これは作業スピードがかなり上がるぞ!」
そう嬉しそうに語る剛志。そこからは二重詠唱のスキルを使いながら、昨日よりも早いスピードでゴーレムを作成していく。
本来、二重詠唱とは少し発動時間は伸びるものの、一度に二つのスキルを同時使用できるスキルで、☆2の中でもかなり優秀な部類に入る。
スキルの重ねがけなどが可能になるため、攻撃スキルの強化が本来の用途だが、作業効率アップという視点で喜ぶのは珍しいだろう。
そうして、昨日よりも速いスピードでゴーレムを作り続けた剛志。途中、集中力が切れて何度か休憩を挟んだが、昼を超え、日が傾く頃にはなんとMaxMPの三回分のMPを消費しきり、全部で2784体のウッドカーペンターゴーレムを作成しきった。
その後、昨日と同様に数分間の休憩を挟んだ剛志は、ゴーレムたちの作業現場へと移動した。
そこではすでに作業がかなり進んでおり、遠くには初期に着工した建築途中の壁が見える位置まで来ていた。
「おお、剛志。お前、さすがにこの数は多くないか?どんどん追加されてくるんで、さすがに後半怖くなってきたぞ」
そう言い、若干引いた様子の鏑木。
そう言われて剛志はゴーレムたちを見渡し、頭を横に傾ける。
「うーん、そうですか?確かに多いは多いですが、まだまだ足りないですよ。全国のダンジョンを壁で囲うのであれば、もっと数を増やして、一刻も早く壁を作ってしまわないと」
「うーん、言ってることは正論なんだがな……」
そう言い、まだ少し引いた様子の鏑木社長。しかし、それも無理はない。周囲を見渡せば、アイアンゴーレムやウッドカーペンターゴーレムなど、合わせて総勢約6000体のゴーレムがこの場で作業しているのだ。
しかも昨日から作成していたゴーレムたちは、デフォルトの姿をしており、番号も振られていなければ、おそろいのヘルメットもかぶっていない。
そんな魔物と同じ見た目のゴーレムがうじゃうじゃいるこの状況は、命令権を持つ剛志以外の人間にとって、かなり居心地が悪いのは当然だろう。
「でも、向こうの方に壁の端が見えてきましたし、そろそろ一周はつながりそうですね」
「ああ、そうだな。それに今回のつなぎ目部分は大きな門にしなくちゃならねぇし、そのあとの上部構造の建築も、まだゴーレムたちは経験してないよな。そうしたらその部分の指示は俺らがやっとくから、お前さんは今日は上がってくれや」
「え、いいんですか?そうすると、鏑木さんたちは徹夜になっちゃいません?」
突然の提案に驚いた剛志がそう返すと、鏑木は笑いながらこう答えた。
「まあな。でも元々うちも交代で一日中人員を回す予定だったんだ。昨日は寝れただけ儲けもんってな。それに、さっき言ってたみたいにできるだけ工事は早く進めないとだしな」
そう言う鏑木に感謝した剛志は、「では、お言葉に甘えて」とその場を後にした。
こうして、今日は昨日に比べて慣れてきたのか、まだ気力が残っていた剛志は、今度は先にシャワーを浴び、その後ベッドで眠りについたのだった。
【本日の作成ゴーレム】
ウッドカーペンターゴーレム × 2784
【本日の消費材料】
魔石(1,110,816MP分):約11,108,160円分
材木 × 11,136個:約1,113,600円分
特級MPポーション × 2個:約2,000,000円
※上記は剛志への報酬換算とは別に、材料は必要経費として扱われ、剛志の戦力構築の一環として計上。
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