第54話 工事開始
今日一日で本章の復興と本業編最終話まで更新しちゃいます!
更新時間は12時から一時間おきになります。
ストックはまだありますが、そのうち尽きるため、今日の一斉投降を終えるとしばらくは通常の更新ペースに戻ると思いますのでご了承ください。
剛志たち一行は横浜第三ダンジョンに戻ってきた。
これからこのダンジョンの外周部分に壁を建てる。
今回建てる壁の設計図を確認すると、幅20m、高さ40m、長さ約3キロの超巨大建造物だ。そしてその外側の表面はダンジョンの空間に沿うように若干丸みを帯びており、ダンジョン空間とそうでない空間を分ける役割を果たしている。
スキルというものはダンジョン空間に体のすべてが入っていないと使用可能にならないため、人が入れないように隙間を埋める必要がある。
本来であればダンジョン空間外に壁を作れれば一番なのだが、スキル使用不可の状態でこの大型建造物を短期間で作るのは現実的ではないため、今回のような方法を取ることになっている。
そのざっくりとした概要を把握して、剛志は今すでに作成済みのウッドカーペンターゴーレムを召喚し、それらに対して目的を伝えた。
彼らは一様にやるべきことを理解したのだが、剛志自身の理解度が低く、うまく作業ができそうになかった。そのため剛志は鏑木さんに頼ることにした。
「鏑木さん、おそらくゴーレムたちは作成するための力はあるはずです。ただ肝心の自分がこういった建築の知識が足りないため、うまく彼らに伝えることができないみたいです。一度作ると覚えるのですが、今回の作業は鏑木さんチームに現場監督をお願いできないでしょうか?」
「やっぱりそうなるか。でもそれで同じ作業なら二回目以降はできるってんなら問題ないかもな。よし、分かった。まず俺らが指揮をしてやる。行くぞ!」
そう言って鏑木さんは部下を連れてダンジョンの外周部分に向かって歩き出した。
その鏑木さんに続き、彼らの指示のもとでこの設計図の建造物を作成せよという命令を出した剛志は、ゴーレムたちが続々と向かうのを確認しつつ、木材を出す必要があるので、自身もついていく。
そうしてダンジョンの外周部に到着した一行は、鏑木さんの会社の人たちの指示のもと作業を開始した。
今、剛志のウッドカーペンターゴーレムの総数は250体。実際に作業をするのは彼らだが、それ以外にも物資の運搬やこのダンジョン自体の守りにもゴーレムたちが必要だと考えた剛志は、一部をゴーレム異空庫の中に残し、残りをすべて召喚した。
そしてウッドナイトゴーレムやウッドハンターゴーレムたちはメイジたちとともにこの周辺の警備を担当し、アイアンゴーレムたちは物資の運搬と足場の代わりになるように指示を出した。
とんでもない量のゴーレムが作業を始めたことで、今まで剛志のことをただの青年だと思って若干見下していた職員や職人たちは、その総戦力を目の当たりにして認識を改めたのは良いことだっただろう。
そんなタイミングで、一緒についてきていた金田が話しかけてきた。
「こう目の当たりにすると、すさまじいですね。これで総戦力ですか?」
「まあ、現時点ではそうなりますね。でもこれからどんどん増やさないと人が足りなくなるので、バンバン増やしていきます。逆に一番心配なのが、材料が足りるかという点です。ウッドカーペンターゴーレムはアイテムとしては最もランクの低い材木から作れますが、さっきの話だとその上のトレントウッドなんかも今回の壁には必要みたいですし、壁の材料と、ゴーレムの材料が枯渇しないかが心配です。」
「今時点で材料の枯渇を心配されるなんて、さすがですね。確かに現時点では、かき集めたとしてもすべてのダンジョンに壁を作るのは難しいでしょう。なので別の方法で壁を建築することも並行して進められています。それに、材料として足りない分は、探索者の皆さんを通じて集めてもらいますので問題ないはずです。今まで毎日集まっていた材料をすべてここに集結させれば問題ないと、計算では出ています。」
そう自信満々に言われた剛志は、「わかりました。では、そこはお任せします」と言い、自身の作業を開始する。
今回の作業は、まず働き手を増やすことだ。そのため剛志は魔石変換機を取り出し、どんどんウッドカーペンターゴーレムを作っていく。
ダンジョン組合から受け取った魔石と材料を消費し、次々とゴーレムを作成する剛志。
そのスピードは一体作るのに約10秒。そのため一時間で約360体しか作れない。
実際には、水分補給や息継ぎなど、様々な要因で遅れは出るため、剛志が自身のMPをすべて消費し、928体の新しいウッドカーペンターゴーレムを作るのにかかった時間は、約3時間半に及んだ。
そこまで一気に作成した剛志は、そこで一度大きく息を吐き、水分補給をしたのちに息を整える。
そうして落ち着いたのを自分で確認した後、マジックバッグから支給されたMP回復薬を取り出し、それを飲んでMPを回復させる。
今回飲んだMP回復薬は、一回で1000MPを回復させる高級品だったが、それでMPを最大まで回復させた剛志は、そのまま新たなウッドカーペンターゴーレムの作成に移った。
剛志がゴーレムを作成している間も、新しく作られたゴーレムたちは命令に従い、すでに働いているゴーレムのもとに行き、鏑木の社員たちの指示を受けながら作業を続けている。
そうやって再度MPを使い果たすまでゴーレムを作り続けた結果、二回目の作成は4時間ほどかかり、完了した。
すさまじい集中力でゴーレムを作り続けた剛志だが、最後の一体を作り終えたところで限界を迎え、その場に座り込んでしまった。
途中、集中が切れたりすること数回。何とか合計で1856体ものウッドカーペンターゴーレムを作成した剛志は、その場で数分、力尽きたように休憩をとったのだった。
数分の休憩ののち、辺りもすっかり暗くなってきたため、剛志は一度自分のゴーレムたちが働いている現場まで足を運んだ。
すると、そこにはまだ高さこそそこまでではないものの、かなりの範囲が壁で囲まれている様子が見えた。
「うわ、もうこんなにできているんですか?」
そう言う剛志に対し、現場にいた鏑木が答えた。
「いや、さすがに単純作業はゴーレムのほうが早いな。このペースだと一週間くらいで出来ちまうかもしれねぇぞ。今のところ全体の4分の1まで壁が伸びてやがる。俺らも指示出したのは最初の2、3時間くらいで、あとは同じ作業の繰り返しだからほとんど指示はいらない。今は問題がないかチェックしてるだけだ。」
そう言って、非常に感心した様子だった。
それを聞いて安心した剛志は、今日の作業をここまでにする旨を伝えた。
「では、今日の作業はここまでにしましょう。作業自体はゴーレムがやってくれるので、鏑木さんたちは明日の朝一番に、夜間にゴーレムが行った作業を確認していただければと思います。」
それを聞いた鏑木は、今になって気づいたような顔をして、
「そうか!こいつらは休まなくていいのか!それってとんでもねぇな!剛志、もしこの壁建設が終わった後になるが、ゴーレムのレンタルとかに興味はないか?俺も人件費削減できるし、工事のスピードも上がる。ぜひ検討してくれ!」
と、提案をしてきた。
瞬時にこういった発想が出てくるのが、やり手の社長の所以だろうと、疲れた頭で感心した剛志。今まで思いつきもしなかった発想だが、ダンジョン探索を本業とするようになった剛志にとっては、新たな道の一つになるかもしれないと思い、「考えてみます」とだけ返答した。
その後、ゴーレムたちには引き続き作業と警備を命じ、剛志は簡易テントへ戻った。
そこで一気に疲労を感じ、着替えもそこそこにベッドに倒れ込むように眠りについてしまったのだった。
【本日の作成ゴーレム】
ウッドカーペンターゴーレム × 1856
【本日の消費材料】
魔石(740,544MP分):約7,405,440円分
材木 × 7424個:約742,400円分
特級MPポーション 1個:約1,000,000円
※上記は剛志への報酬換算とは別に、材料は必要経費として扱われ、剛志の戦力構築の一環として計上。
本作品を楽しんで頂きありがとうございます。
ブックマークや評価、感想、リアクションなどをしていただけますと幸いです。




