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ゴーレムの可能性は無限大 〜副業で探索者になったら職業とスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜  作者: 伝説の孫の手
復興と本業

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第52話 副業から本業へ

今日一日で本章の復興と本業編最終話まで更新しちゃいます!

更新時間は12時から一時間おきになります。

ストックはまだありますが、そのうち尽きるため、今日の一斉投降を終えるとしばらくは通常の更新ペースに戻ると思いますのでご了承ください。

剛志は、寝ぼけ眼で辺りを見渡すと、徐々にここが簡易テントの中だということを思い出した。


そう、スタンピードから一夜明けたのだ。


簡易テントなので、体の疲れは完全には取れていないが、それでもかなり眠れた剛志は、覚醒した頭を回転させ、今何をするべきかを考える。


ひとまず外に出ようと思い、テントから出ると外には上白根さんが立っていた。


「剛志様、お目覚めでしょうか?昨日はありがとうございました。寝起きで大変恐縮なのですが、所長が待っておられます。ついてきていただいてもよろしいでしょうか?」


そう言う上白根さんに、剛志は「わかりました」とだけ言い、後をついていく。


そうしてついていった先は、ダンジョンの裂け目近くに建てられた大きめの簡易テントで、中ではいろいろな人が忙しそうにしていた。


剛志が入ってきたのを確認した町田所長は、「こっちだ」というようなジェスチャーをしたので、剛志は町田所長のもとに近づいた。


「やあ、よく眠れたかい?」


「はい、じっくりと眠らせてもらいました。そういう町田さんはあまり眠れなかったようですね」


町田所長の目の下のクマや、見るからに疲れたような表情からそう言った剛志だが、町田所長はそれでも元気そうだった。


「まあ、一睡もできていないが、こんな状況だと仕方がないね。正直今はこの国の一大事ってことだ。それも、批判を受けるのは我々ダンジョン組合になるだろう。否が応でも働かないわけにはいかないのさ。」


そう言う町田所長は、見た目こそ疲れていそうだが、目の中に灯る輝きはいつにも増してギラギラしており、エネルギーに満ちていた。


そんな町田所長に少し押されながらも、剛志は今回の要件を聞くことにした。


「お呼びと聞いたのですが、どうかしましたか?」


「ああ、その件だったな。昨夜あれから本部でいろいろ会議をした結果、当面の方針が決まった。君には申し訳ないが、こちらの提案を飲んでいただきたい。」


そうして剛志は護衛を付ける件を町田所長から聞かされた。


そこで剛志は昨日の権蔵の発言を思い出した。あの暴挙を見ると、何をしでかすかわからないし、あの場にいた身としては自分がターゲットになりうるということは理解できた。


しかし、護衛が付くとなると活動範囲が狭まってしまう。その点が気になり、聞くことにした。


「はい、内容は理解しました。一点確認なのですが、この護衛というのはダンジョン内でもいるということでしょうか?」


「あ〜、その点に関してはいろいろ意見が割れていてね。必要という意見と、ダンジョン内では必要ないという意見が5:5くらいなんだ。私としてはダンジョン内はいらない派なんだが、相手に高位の探索者がいる現状、ダンジョン内も安全ではない。そこで定期連絡を義務づけるということで落ち着いたよ。逆にダンジョン外では当面すべてに護衛がつくことになる。」


そう言われ、剛志はなるほどと納得した。納得はしたのだが、すぐには受け入れることができなかった。ダンジョン外で護衛が付くということは、仕事場にも護衛がいるということだ。剛志の場合フルリモートも可能ではあるが、守秘義務的な観点から仕事中に護衛がいることはよろしくない可能性がある。


その辺が会社に理解されるかどうか、最悪副業の探索者自体も禁止されるかもしれない。


そんなことを考え出した剛志は、その場で黙ってしまった。


その間、町田所長は黙って待ってくれていたのだが、剛志の頭の中である考えが浮上した。


本業の方をやめるということだ。


現状、本業の仕事の環境に不満はないし、給料も生活に困らないだけはもらっている。しかし、最近の剛志は明らかにダンジョンにすべての時間を使うほうが稼げてしまうのだ。


唯一の懸念点としては、ダンジョン探索者は危険の伴う仕事で、安定とは程遠いということだ。その辺も気になる小市民の剛志だが、まあそれもそのうち何とかするかと勢いづいてしまった。


「わかりました。護衛の件、了承いたします。しかし一点だけお手伝いいただけないですか?こうなってしまっては本業をやめようと思うのですが、理由の説明が難しいため、そちらをダンジョン組合側でお願いできますか?どこまで話してよくて、どこから話してはいけないのかの選別ができないので。」


そう覚悟を決めた剛志の発言に、町田所長もそうなることを予見していたのか、二つ返事で「わかった、任せてくれ」と返してきた。


そのあとの話をする前に、まずは会社とのやり取りを終わらせようということになったので、続きは後でということで剛志はいったん席を外す。


それから30分後、会社から電話がかかってきた。内容は先ほどの件だ。どこまで話せるかわからない剛志だが、向こうが聞いている件は問題ないだろうと思い、聞かれたことに答えていく。


その後、引継ぎの件や、事務手続きの件で話をしたが、有事ということもあり、あっさりと退職が決定してしまった。


剛志はついに、専業探索者となったのだった。


会社の同僚や、友人との関係が切れることに若干の寂しさを感じる剛志だが、元よりプライベートでの付き合いがほとんどなかったため、意外とあっさり気持ちの切り替えが済んでしまった。


約五年間過ごした会社員生活だったが、最近の剛志の楽しみはダンジョンだったので、そちらにすべての時間を使えるようになることの嬉しさが勝ってしまったのだ。


そんな自分のドライな性格を改めて感じながらも、若干の物思いにふけっている剛志のもとに上白根さんがやってきて、先ほどのテントまで案内される。


そして、中に入り町田所長に会うと、第一声「改めてようこそ横浜第三ダンジョンへ。これからは専業の探索者になるということなので、より手厚いサポートを約束するよ」と言って、手を差し出してきた。


その手を握り、握手を交わした剛志は、今の自分の居場所はこのダンジョンなんだと、深く実感するのだった。

本作品を楽しんで頂きありがとうございます。

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