第42話 魔石変換機その2
今日一日で本章のA.B.Y.S.S.編最終話まで更新しちゃいます!
更新時間は12時から一時間おきになります。
ストックはまだありますが、そのうち尽きるため、今日と明日の一斉投降を終えるとしばらくは通常の更新ペースに戻ると思いますのでご了承ください。
「ここまで結構時間かかったから、感慨深いな。まあ最後は所長の力でショートカットさせてもらったけど。それはこれからの頑張りで恩返ししていこう。」
そう剛志が言いながら見ているのは念願の魔石変換機だ。その購入金額は約5000万、結構いい車を購入したようなのと同じ感覚だ。つい半年前まではただの庶民だった剛志はこんな高額な買い物は初めてであり、じっくりと嘗め回すように見ている。
そんなに面白い形状をしているわけでもなく、見た目は勉強机くらいの大きさで、どちらかというと洗濯機が一番近いかもしれない。上面に大きな穴があり、その中に魔石を流し込むことで魔石を補充する。そしてこれまた上面になる手の型の部分に自身の両手を当ててスキルを発動すると必要MPを補充されている魔石で補ってくれるという構造だ。
今回の購入品はかなり性能のいいやつを購入したため、魔石1kgで100MPになる。剛志は今までのドロップアイテムなどで手元には約1トンほどの魔石があるため、約10万MPを魔石で置換できる計算になるのだが、これはあまり多くはない。
なぜなら単純計算で今の剛志のMPの最大が368、ストーンゴーレムを一体作成するのに必要なMPが250、そのうち一回当たり249MPを魔石変換機で補えるとしてMP最大までストーンゴーレムを作ろうとすると368×249=91,632となり、10万MPはほぼ一日分のMPにしかならないからだ。
そのため剛志は今日も今日とてたくさんの魔物を狩るしかない。
幸いなことに20階層以降に出てくるスケルトンたちのドロップアイテムは魔石だ。それも一体辺り約200gほどの大きさとなる。そうなると単純計算で一日で5000体のスケルトンを狩らないと一日当たりのMPにもならないということだ。
「あれ、これってまずくないか?ゴーレムたちの数が増えると一日5000体のスケルトンは倒せると思うけど、これだとドロップアイテムを換金できないぞ。そしたらいつまでたっても借金が返せないじゃないか!?」
昨日まですぐに返せるだろうと考えていた剛志は、昨日までの自分をぶん殴ってやりたい気持ちに陥った。なんて楽観的だったんだろう。これだとせっかく魔石変換機を購入したのにまずは借金返済に追われてしまうのではないか。
そう思った剛志だが、その後考えを改めることにした。
「いやそうか、ずっとこの階層にいるとよくないんだ。どんどん階層を下りて行ってより稼げるようになれば問題ない。でも魔石は必要だな。…あ、そうか。平日もゴーレムたちには魔石を回収してもらえばいいのか!様子は配信で確認して、毎日魔石の回収だけすれば結構回収できるぞ。往復で移動を込みでも一時間から二時間くらいかかるけど、それはしょうがないだろう。いっそのこと近くに引っ越すか?」
そして、剛志は後日横浜第三ダンジョンの徒歩圏内に引っ越すことになるのだが、その話はおいておこう。
なんだかんだ考えていた剛志だが、結局のところはようやく魔石変換機を手に入れたので浮かれているというだけなのだ。
そんな剛志の姿は現在地下20階層にいた。地下20階層以降は出てくる魔物がスケルトン系だということと、一気に複数出てくるという性質上あまり人気ではなく、人が少ない。
そもそも横浜第三ダンジョンので地下20階層以降に来れる人はかなり少なく、その多くはベテランになるため、もっと稼ぎの良いより深い階層にいるのだ。
そのため剛志は20階層以降で他の探索者と出会ったことがほとんどない。
ということは剛志はかなりやりたい放題できるということだ。
魔石変換機を手に入れ、一気にゴーレムを作れるようになった剛志はまずストーンゴーレムとウッドメイジゴーレムを増やした。そして増やした後のゴーレムたちの内訳がこうだ。
所持ゴーレム数
ストーンゴーレム×150(120up)
ウッドソードゴーレム×15(15up)
ウッドアーチャーゴーレム×1(1up)
ウッドクラフトゴーレム×100(100up)
ウッドメイジゴーレム×150(133up)
マジックハンドゴーレム×2
マジックレッグゴーレム×2
マジックウイングゴーレム×1
全部のゴーレムたちを一度出してみた剛志は、その光景に圧倒された。
「これが全部俺の戦力!?やばい、語彙が落ちるくらいやばい…。魔石変換機一つでこうも世界が変わるのか…恐ろしいな。そしてとても頼もしい」
剛志の目の前には文字通り軍隊が存在した。約2.5mのストーンゴーレムが150体、そしてウッドゴーレムたちも身長で言うと2m近くはあり、それがざっと300体近くいる。
学校の体育館が埋まりそうなその光景に、圧倒されるとともに頼もしさを感じる剛志だった。この戦力があれば何でもできる、そんな気さえしてくる。そしてこれらは魔石さえ集められれば明日には約倍になるのだ。笑いが止まらなくなるだろう。
そして剛志の蹂躙が始まった。
レイスが出てくる地下25階層までは何も警戒せず、ストーンゴーレムたちがスケルトンを蹂躙して、ウッドクラフトゴーレムたちが魔石を回収してくる。むしろ倒し残しが無いように狩りつくす勢いで階層を蹂躙していく。
ある程度見晴らしは良いが、この数だと把握できない場所もあるので、こちらもウッドクラフトゴーレムに持たせたカメラで中継を配信で確認しながら進む。
そうして地下25階層に来るまでに剛志はレベルが二つほど上がり、魔石もざっと4000個ほど集まっていた。おそらく途中でスケルトンのイレギュラーエンカウントでも倒したのだろう、見慣れない剣のドロップアイテムもある。
「う~ん、贅沢な悩みなんだけどな…。レベルアップするとMPが回復するけどそれを魔石変換機で使いきれないのがもったいない気がするよね。魔石がないから仕方がないんだけど…」
そんな贅沢な悩みを吐露する剛志だが、そればかりはしょうがないとしか言わざるを得ない。そして先ほどまでの剛志の軍隊はレベルアップで回復したMPと魔石変換機によりほぼ倍に膨れ上がっていた。
「地下25階層以降はレイスが出てくるから気を付けよう。でも前回と違ってメイジたちがゴーレム異空庫の中に残っているし、困ったときは彼らを召喚すればいい。それに今時点でも俺の周りに約100体のメイジが取り囲んでいるし、これも気にする必要はなさそうだ。むしろせっかく身についてきた警戒心が薄れていく方が問題な気がするよ」
そういう剛志の予想通り、地下25階層以降も全く持って問題がなかった。ただただ魔物を蹂躙していく、それだけの作業と化していた。しかしその作業も興奮すら覚える気持ちの良いものであり、剛志は少しハイになっていた。
「よし、このままボスまで倒すか!」
そういい剛志は本当にその日は地下29階層のボス部屋まで到達してしまい、そのボスを倒すことに成功した。
ボスはジェネラルスケルトンという骨の将軍で、魔法陣から大量のスケルトンを召喚してくるタイプだった。しかしそのスケルトンの数よりも剛志が召喚するゴーレムたちの方が多く、こちらも圧倒してしまった。
しかしそんなときに少し問題が発生した、ここのボスはジェネラルスケルトンだけではなく、ハイドレイスという隠密に特化したレイスもいたのだ。
ハイドレイスはゴーレムたちをすり抜け剛志の後ろを陣取り、後ろからいきなり攻撃をしてきた。攻撃方法はナイフで切りつけるというシンプルなもので、この階層まで来れる探索者にとってはあまり脅威とならない攻撃ではあるのだが、本体の弱い剛志にとっては十分脅威だ。
急に後ろから殺気のようなものを感じ取った剛志はとっさに頭を守りしゃがんだ。これは達人たちが殺気を読みあうたぐいのものではなく、弱者がその身を守る際の第六感のようなものだが、それが功を奏した。
腕を少し切りつけられたが、それまでだ。その後は一瞬にして周囲にいたメイジたちの一斉攻撃により消え去ったハイドレイスだったが、剛志は今まで若干ハイになっていた頭が一瞬で冷やされた感覚に陥った。
その後問題なくボス部屋を踏破した剛志は、ドロップアイテムをクラフトたちが持ってくるのを受け取りながらも、反省をしていた。
「少し調子に乗りすぎていたようだ。俺自身は全然強くなっていないんだから…。ちょっとのことですぐ調子に乗るのは俺の悪い癖だな。気を引き締めよう」
そうして、剛志の蹂躙から始まるダンジョン探索は、頭を冷やすという結果で終わった。結果としてはよかったのかもしれない。なぜなら剛志はそれから慎重すぎるくらい慎重に行動するようになり、今回の様なことは起きなくなったのだから。
そして、今日一日の終わりの剛志のステータスがこれだ。
職業:ゴーレム使い
スキル:所持制限無視・並列思考
職業スキル:ゴーレム作成・ゴーレム再作成・支援魔法【ゴーレム】・ゴーレム強化・ゴーレム異空庫
レベル:46(4up)
HP:108/108(11up)
MP:30/418(50up)
攻撃力:94(10up)
防御力:116(12up)
器用:212(16up)
速さ:122(14up)
魔法攻撃力:233(24up)
魔法防御力:268(30up)
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所持ゴーレム数
ストーンゴーレム×300(150up)
ウッドソードゴーレム×120(105up)
ウッドアーチャーゴーレム×150(149up)
ウッドクラフトゴーレム×100(100up)
ウッドメイジゴーレム×250(100up)
マジックハンドゴーレム×2
マジックレッグゴーレム×2
マジックウイングゴーレム×1
もはや、剛志の成長スピードはさらに一段階加速されたといってもいいだろう。
一日の成長で言うと圧倒的に過去最高だ。
そして剛志はストーンゴーレムとウッドメイジゴーレムたちをダンジョンの地下29階層に残していき、ウッドクラフトゴーレムに魔石の回収を頼んだ。その際に木材も渡したので何らかのアイテムも作っていいと言っておいた。
明日また来た際に、どうなっているのか確認するのが今から楽しみで仕方がない剛志であった。
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