第38話 地下20階層
GWの最終日も特に問題なく終わり、あれから剛志は週末になるとダンジョンでレベル上げと金策をやるという日々を過ごしていた。
上白根さんのトラブルに巻き込まれるという言葉が頭から離れなかった剛志は、あれから自身の身を守る方法を模索しながらも、最近では作業と化しているダンジョン探索を続けていた。
対策として考えた方法はより早くゴーレム異空庫を展開することと、マジックハンドゴーレムたちを使った機動力の強化だ。実際問題剛志の移動力が強化されても出来ることは逃げるくらいなので重要なのは早くゴーレム異空庫を展開することだと思っている。
まあ、そんなことに注力しながらも愚直に金策と戦力アップを進めていた剛志だが、GWから大体三カ月ほど時間が過ぎていた。
初めのうちはすさまじいスピードで探索階層を更新していた剛志だが、ここのところ一切更新していない。いまだに地下20階層には挑戦していないのだ。
この三カ月はダンジョンのゴーレムたちを倒しながらレベル上げと金策、戦力アップに注力していた。たまに出るイレギュラーエンカウントやミステリーボックスからのドロップアイテムも一部は保持し一部は売却してお金に換えたりしながら、それなりに楽しいダンジョンライフを過ごした三カ月だと言えよう。
そうこうして、ようやく戦力が整ったと感じた剛志は、ついに地下20階層へと挑戦することにした。
今の剛志のステータスはこうだ。
職業:ゴーレム使い
スキル:所持制限無視・並列思考
職業スキル:ゴーレム作成・ゴーレム再作成・支援魔法【ゴーレム】・ゴーレム強化・ゴーレム異空庫
レベル:42(8up)
HP:97/97(22up)
MP:368/368(95up)
攻撃力:84(20up)
防御力:104(23up)
器用:196(35up)
速さ:108(26up)
魔法攻撃力:209(50up)
魔法防御力:238(55up)
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所持ゴーレム数
ストーンゴーレム×30
ウッドメイジゴーレム×18
マジックハンドゴーレム×2
マジックレッグゴーレム×2
マジックウイングゴーレム×1
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以前との変化点で言うと、剛志自身のスキルがマルチタスクから並列思考に変化したことがある。これは今まで複数のことを考えやすくなるというマルチタスクから、完全に二つ思考を同時に出来るようになったというものだ。イメージとしては脳みそが二つになったような不思議な感覚だ。
そのほかには、持っているゴーレムが大幅に変わった。
すべてのサンドゴーレムはストーンゴーレムに変化し、ウッドゴーレムもウッドメイジゴーレムという魔法職のゴーレムに変化した。
ウッドメイジゴーレムはウッドゴーレムを最大レベルに強化すると作成可能になる。
ウッドゴーレムはそのほかにも選択肢があり、それぞれウッドソードゴーレム、ウッドアーチャーゴーレム、ウッドクラフトゴーレムなど様々な選択肢があった。
それぞれウッドゴーレムが特定の職業を得たようなゴーレムで、いろいろ作ってみるのも楽しそうだと思ったのだが、すべてメイジで統一することにした。
ウッドメイジゴーレムはあまりMPが多くはないので、すぐガス欠になってしまうが、そこは数でカバーする予定だ。
地下20階層を挑戦することにしたのはすべてのウッドゴーレムがウッドメイジゴーレムに変わったことが大きな要因だ。これでゴースト系も何とかなるのではないかと思っている。
変わり種で剛志のレベルが40になった際に新しくマジックウイングゴーレムというのが作れるようになった。これはマジックハンドゴーレム系列の翼版で、背中に装着することで飛べるようになるというものだ。
翼といっても鳥のようなものではなく飛行機のような翼で、ジェットで飛ぶ感じになる。初めて使った際に剛志は子供の様にはしゃいでいたことは言うまでもない。今のところスピードも速くなく、滞空時間も30秒ほどだが、今後に期待だろう。
基本的にマジックハンドゴーレム系列はいろいろと面白いゴーレムが多いが、こいつ一体でゴーレムの使用枠を消費するくらいなら別のゴーレムを使うかなと思わされるロマン系統のゴーレムだ。しかし剛志はスキルを活かしてどんどん使っていきたいと考えてはいる。これも魔石変換機を手に入れてからの話だろう。
魔石変換機に関しても今のところ順調に貯金ができており、目標金額の半分を超えたあたりだ。これも今後地下20階層以降を進むことでより早く貯められると嬉しい。
前置きが長くなったが、ついに剛志は地下20階層へと足を踏み入れた。
「うわ~こんな感じになっているんだな。どうせなら準備が整ってから見ようと思って一度も来なかったけど、今までとは全然違うな」
そういいながら周りを見わたす剛志。
剛志が今まで探索していた地下19階層までは、いわゆる洞窟型と呼ばれるダンジョンで洞窟状の迷路が広がっているタイプになる。しかしこの地下20階層以降はフィールド型と呼ばれる一つの空間がダンジョンの一階層になっているタイプになる。
基本的にフィールド型のダンジョンは空間を大きく使う魔物や大型の魔物がいる場合が多く、より困難なダンジョンだといわれている。しかし、空間を広く使えるのは剛志にとってもプラスだ。
「それにしてもなんだか寒いな。明かりもほとんどなく暗いし、長くは居たくない階層だな。」
そういいながら暗視ゴーグルをつける剛志。そう、この地下20階層はフィールド型の階層でもあるが、暗闇型の階層でもあるのだ。そうなると懐中電灯等で光を灯すと目立ってしまい狙われる。そういうときのための暗視ゴーグルなのだ。
剛志は事前情報から自身用の暗視ゴーグル買い、ゴーレムたちを写すカメラも以前よりも高性能のドローン型に買い替えている。もちろんこのドローンも暗視機能付きだ。
少し出費としては痛かったが、先行投資と考えて泣く泣く良いものを買ったため、より一層頑張って金策に励む必要がある。
「でも地下20階層にもなると、あまり人が多くないな。さすがに転移陣近くの階層だからちらほらと人が居るが、思ったほどじゃないな。」
そんな事をつぶやきながら剛志は階段近くの安全地帯を抜ける。そうすると一層肌寒い気がしてきて、辺りの空気も変わったような気がする。
その空気を察知して警戒を強める剛志だが、少し進むと奥の方に魔物の群れがいるのが見えた。
カタカタと骨が当たる音がしているため、魔物はスケルトンだろう。どんどん近づくとその姿がくっきり見えてきた。そこにいたのは約10体ほどの骨の騎士、スケルトンナイトだ。
カタカタと不気味な音をさせながら歩くスケルトンナイトだが、その手には剣と盾が装備されている。
しかしいきなり十体の群れか。さすが地下20階層、魔物の強さも脅威度も高いな。
そんな事を考えながらも剛志は周りに二つのゴーレム異空庫を一瞬で展開しそこからどんどんゴーレムたちを呼び出す。
すべてのゴーレムたちが出きると剛志たちはいっせいにスケルトンナイトに襲い掛かる。
スケルトンナイトたちも今までの魔物とは比べ物にならない俊敏さで対応しているが、こちらは明らかに数が多いため飲み込まれるようになぶり殺しにされ魔石を残して消えてしまった。剛志のお得意のゴーレムたちによる波状攻撃がうまく決まった形だ。
「よし、一体一体の強さはそこまで脅威じゃなさそうだな。個人の力じゃまだストーンゴーレムとかの方が厄介そうだ。その代わり数がいるみたいだけど数なら俺たちの方が多い。あとはゴースト系たちが来た際にどう対処するかだね。その時は任せたぞ」
そういいウッドメイジゴーレムになった一木達に指示を出す剛志。その指示を聞き各々腕に持っている木の杖を頭の上に持ち上げ意気込みを見せる一木達。剛志とゴーレムたちはここでもいつものペースの様だ。
ここに来るまでのたっぷりと準備をしていた剛志は、この階層でも問題なく戦えることが分かったので、余っているMPを使ってさらにウッドメイジゴーレムを作り、今いるストーンゴーレムとウッドメイジゴーレムを3等分にわけ、三チームでダンジョン探索を進めることにした。
基本はストーンゴーレムたちだけで戦い、ウッドメイジゴーレムにはゴースト系の警戒をしてもらいながら進んだ剛志たちだが、ゴースト系の魔物が全然出てこないのでサクサク進んでいく。
スケルトンも剣を持ったナイトのほかに、狼型のスケルトンウルフと、杖を持ち魔法を使うスケルトンメイジなどもおり、メイジ系の魔法攻撃で何体かのストーンゴーレムが傷つくということもあったが、すぐに回復させることができる程度で特に問題がなかった。
そうこうしているうちに昼頃には地下25階層まで来ていた。
「準備に時間をかけていただけあって、このあたりまで楽勝だね。今のところ一木達の出番もないし。でもそろそろゴースト系も出てくると思うから気を引き締めていこう」
そういい進む剛志。ダンジョン探索はいたって順調だ。




