第37話 プチバズリ
GWのダンジョン探索は順調に進んでいた。そのほとんどが剛志はゴーレム異空庫の練習とマジックハンドゴーレム、マジックレッグゴーレムの動作練習をしているだけで、あとはゴーレムたちがストーンゴーレムを倒してくれるだけだが。
そんな日々を過ごしている間に、もうGWも終わりに差し掛かっていた。今日の探索を終えると残りの休みは一日しかない。一日当たりの平均収支は買取金額で約30万ほどで、日々の仕事とで考えると毎日月給分稼いでいるような状態だ。なので二日目あたりからダンジョン探索での収支は、全く別物という感覚になり目標金額だけを考えている。
そんな目標の魔石変換機の値段が、相場で言うと数千万というものなので、そう考えるとまだまだお金が足りないという感覚になるから不思議だ。
しかし、順調にゴーレムたちの戦力も増加しており、剛志自身のレベルも上がっている。そんな剛志のステータスはこうだ。
職業:ゴーレム使い
スキル:所持制限無視・マルチタスク
職業スキル:ゴーレム作成・ゴーレム再作成・支援魔法【ゴーレム】・ゴーレム強化・ゴーレム異空庫
レベル:34(4up)
HP:75/75(10up)
MP:273/273(47up)
攻撃力:64(10up)
防御力:81(11up)
器用:161(18up)
速さ:82(14up)
魔法攻撃力:159(25up)
魔法防御力:183(27up)
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所持ゴーレム数
ストーンゴーレム×11
サンドゴーレム×19
ウッドゴーレム×18
マジックハンドゴーレム×2
マジックレッグゴーレム×2
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段々とレベルの上がり方も鈍化してきており、今の階層でのレベル上げはそろそろ潮時のような感覚になっている剛志だが、まだまだ戦力アップの余地がある。
それに地下20階層以降に出てくる魔物の種類が問題だ。
剛志の調べた限りだと、この横浜第三ダンジョンの最深階層記録は地下74階層の様で、そこまでの情報はホームページで公開されていた。そこの情報だがざっくりというと、
地下1~9階層 スライム、ゴブリン
地下10~19階層 ストーンゴーレム
地下20~29階層 スケルトン系、ゴースト系
地下30~39階層 オーク系、オーガ系
地下40~49階層 上位ゴーレム系
地下50~59階層 ワイバーン、ドラゴソルジャー系
地下60~69階層 上位スケルトン系、上位ゴースト系
地下70階層以降 ドラゴン系
となっている。ここで問題となってくるのが地下20~29階層で出てくるゴースト系の魔物だ。ゴースト系とはいわゆる霊体の魔物であり、本物の幽霊ではないが幽霊のように浮遊している魔物だ。
そして問題なのが、このゴースト系にゴーレムたちの物理攻撃が効かないというところだ。そのためこの魔物が出る階層で戦うためには何らかの魔法系の攻撃が必須であり、そのため魔法職の人とパーティーを組むことが普通である。
剛志は一応ゴーレム使いという魔法職ではあるが、その実戦闘手段のゴーレムたちはゴリゴリの物理系であり、ゴースト系の魔物は天敵なのだ。
一応新しい戦力のマジックハンドゴーレムで魔法攻撃相当の攻撃が可能にはなったので、何とかなりそうではあるのだが、やはり苦手な相手と戦うのは少し控えたいというが本音だ。
それにこれが一番厄介なのだが、ゴースト系は主に無機物であるゴーレムなどには攻撃してこないで、生身の人間である剛志を最優先で攻撃してくるだろうということだ。
これはゴースト系は霊体なので、ゴーレムをすり抜けることが可能だからである。
そういう理由もあり、剛志はゴースト系が現れた際に剛志自身が襲われる前にゴーストを倒せるようにより戦力を強化しているのだ。
まあ焦る必要はないため、地道に進むしかないということだ。
そんなこんなで、この日も普通に探索を終え、ダンジョン支部で買取をしていると上白根さんがこんなことを言ってきた。
「剛志様、剛志様が運営していらっしゃるDtubeのチャンネルの状況を今ご存じでしょうか?実はこのGWでチャンネル登録とコメントが増加しているんですよね」
「え、そうなんですか?なんであんなチャンネルが…見ても面白くないでしょう」
「やはり気づいていませんでしたか、増えているといっても今まで私しか登録者がいなかったのがせいぜい200人くらいに増えただけですが、何も説明もなく垂れ流しでゴーレムたちが蹂躙しているのがじわじわと人気になっているようですよ」
そういって、上白根さんはタブレットを取り出し剛志のチャンネルのコメント欄を見せてきた。そこには次のようなコメントがあった
・なんかゴーレムがゴーレムをボコボコにしてて草
・なんの音声もなく、蹂躙が定期的に見れるんだけどこれ何目的?
・なんか暇なときに見てみたら、意味もなく時間が過ぎてた。
そんなようなコメントがいくつかあり、内容はあまり好意的ではなく面白半分で見ているだけのようだが、ほかの配信と異なり意味もない映像の垂れ流しである今の状態が物珍しいようだ。
剛志は自分が確認するためだけにこのチャンネルを作っており、特に見る人向けに何かしているわけではなかったので、誰かがこのチャンネルを見るなんて想像していなかった。
唯一上白根さんは剛志自身が教えており、担当の職員ということもあって現状の確認程度に見ることはあると思っていたが、意外にもほかの人が見ておりびっくりしていた。
「現状特に話題になっているわけではなく、ダンジョン配信を見るのであればほかの方の方が良いと思うといったような立ち位置ですが、剛志様のスキルで実現している異常な数のゴーレムがどういうことだと若干話題になっているようです。」
「ああ、なるほど。確かにちょっと知識がある人からするとこの数のゴーレムは異常なんですね」
「そうですね、私も慣れてきており麻痺していましたが改めて考えると異常です。剛志様は認定探索者として当支部の保護下にいるという位置づけにはなりますが、ダンジョン内のことは自己責任になってきてしまいます。こうして認知されていくといろいろとトラブルに巻き込まれるということもあり得ますので、ご注意ください」
そういいながらいつものように買取を済ましてやり取りは終了した。
剛志はその日の帰り道、上白根さんが言っていたことを思い返していた。トラブルに巻き込まれる可能性、それを考えていなかったわけではないが、あまり実感はなかった。
剛志が経験したトラブルはイレギュラーエンカウントを倒した際に先輩冒険者にドロップアイテムを奪われた件がある。あの時はたまたまの出来事だったが、今後剛志が世間に知られていくとそういったこともあるのかとなんとなく頭の片隅で理解しておこうと思う剛志だった。
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