第31話 ゴーレム異空庫
二日間限定でスタートダッシュということで一日10話更新。二日目です。
更新時間は12時・13時・14時・15時・16時・17時・18時・19時・20時・21時の一時間ごとになります。
楽しんでいただけますと幸いです。
地下15階層でレベル上げを進める剛志。この階層は本来なら剛志のようなレベル12の者がソロで活動するには深すぎる、危険だ。しかしそこは剛志のスキルと職業の相乗効果で何とか戦えているという感じだろう。
出てくる魔物は一番最悪なケースでストーンゴーレム3体。本来ならそれを同じ体格のサンドゴーレムが倍の数いないとまず釣り合わない。そこをほかのゴーレムたちのサポートで乗り切っているが、本来のゴーレム使いの最大戦力はレベル12ではMAX6体なのでギリギリなのが本来の姿。
しかし、スキル所持制限無視を持っている剛志の戦闘シーンを見ると一方的だ。
まず、ストーンゴーレムのことをサンドゴーレムたちが複数で羽交い絞めにし動きを封じる。そして動けなくなったストーンゴーレムたちにミニサンドゴーレムたちが四方八方から殴り掛かり、ミニウッドゴーレムたちが石の投擲でチクチクとダメージを与える。まさに一方的といっても過言ではないだろう。
ただ、元来の性格故か安全マージンを多くとる剛志は、この一方的な状態をもう一つ作れるようになるまではチームを分けるつもりが無いようで、今は戦力の拡充と資金力アップを目的にこのワンサイドゲームを続けるようだ。
元々副業としてダンジョンに潜っている剛志は、最近自身が強くなることも目標に加わってはいるのでこの状況は正しいのだろう。別に無理して急いで強くなる必要も稼ぐ必要もないのだから。
そんなこんなで、そこからは特に面白いところもなく、ただ魔物たちを倒してドロップアイテムを回収するだけの時間が続いた。
剛志も段々と飽きてきて、何か別のことができないかと思い、以前やっていた投擲の練習と回避の練習、それに最近は一チームなので必要なく起動していなかったカメラも起動し、画面を見ながら動く練習も行って時間をつぶしていた。
その後何度かレベルアップを重ね、レベル15になった際の新しいスキルを覚えた。
ステータスボード
名前:岩井剛志
職業:ゴーレム使い
スキル:所持制限無視
職業スキル:ゴーレム作成・ゴーレム再作成・支援魔法【ゴーレム】・ゴーレム強化・ゴーレム異空庫
レベル:15(3up)
HP:41/41(4up)
MP:92/92(20up)
攻撃力:33(3up)
防御力:41(5up)
器用:81(13up)
速さ:36(5up)
魔法攻撃力:63(14up)
魔法防御力:73(17up)
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所持ゴーレム数
サンドゴーレム×9
ミニサンドゴーレム×21
ミニウッドゴーレム×18
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ゴーレム異空庫
効果:自身のゴーレムを異空庫に収納できる。
異空庫とこちらの世界との入口を作成することができる。
「ゴーレム異空庫か、久しぶりの新スキルだな。これでゴーレムたちをしまって移動できるようになったということか。まあ元々マジックバックで収納できていた俺には利点が少ないスキルだが、普通のゴーレム使いからするとなくては困る必須スキルって感じだな。」
そういって剛志は、さっそく『ゴーレム異空庫』を使用してみた。
使用するにあたって特にMP等は消費されず、ノーコストで使える珍しいスキルであったが、使うにあたって感じたのはかなり頭を使うということだ。
正確には脳みその処理能力を使うというのが正しいのだろうか。
今までのスキルはMPを消費して使用していたため、体的にも体力を使うような疲労はあったが特に何も考えなくても使ったら使用できた。しかし、今回の『ゴーレム異空庫』というスキルは、MPを使用しない代わりにしっかりとイメージをしないとスキルそのものが失敗する感覚があった。
普通に地面にゲートを作り出そうと思い、近くの地面をイメージしながら使用してみたら、しっかりとその個所をイメージすることを強制されるような感覚に陥り、一瞬そこに視線が釘付けになった。
その後その個所を中心に魔法陣が広がるように出現し、ある程度広がるとこれ以上は広げられないと感じ止まった。
なんだかまだ修練度的なものが足りないというような、もっとできるような…。とりあえずいつもと違った感覚を感じた剛志は、こういうスキルもあるのかと納得した。
この剛志が感じているのはMPを消費しないタイプのスキルには必須の感覚であり、誰にでも感じるものだ。というのもこういうMPが対価として要求されないスキルは技術型のスキルと呼ばれ、使用者の技量によってできることが大きく異なるスキルになる。
なので今回の『ゴーレム異空庫』で言うと、剛志の技量が上がれば一気に複数のゲートを出現させたり、巨大なゲートを出現させたり、はたまたゲート自体を自分の目視範囲外や空中に出現させたりすることができるようになるのだ。
その反対にMPを消費する対価型のスキルは、レベルアップなどの外的要因以外でできることが変わらない代わりに、MPという対価さえ払えばだれでも同じ結果が引き起こせるスキルになっている。
そういった技術型、対価型という概念を知らない剛志でもなんとなくの感覚で技術型は使いこなすとやれることが増えるという感覚は持つことができる。なのでそれからの探索ではこの『ゴーレム異空庫』のスキルと何度も使用し、使いこなすことも時間つぶしの練習メニューに組み込まれた。
そしてここでMPが回復したことで新たにサンドゴーレムを二体再作成できるようになった剛志は、今のサンドゴーレム×11、ミニサンドゴーレム×19、ミニウッドゴーレム×18のメンバーを半分に分け、チームを二チームに増やすことにした。
今までの戦闘を見るにサンドゴーレムが5体いれば敵の魔物たちを足止めし、ほかのゴーレムたち攻撃で一方的に倒すことができるという判断だ。
一応ほかの探索者に遭遇した際には剛志が出ていき説明する必要があるため、以前のように離れ離れで運用するのは難しい。だがそれでも剛志が駆け付けられる距離を保ちづつ、2チームなら運用可能だと判断し効率を上げることにしたのだ。
それから数時間のダンジョン探索を進め、ストーンゴーレムのドロップアイテムの石の数が約300個を超えた頃、時刻で言うと22時くらいだろう。いつもと違って遅くまで探索していた剛志は、地下15階層から地下16階層への階段近くにいた。今日はダンジョン内で泊まるつもりなのだ。
ダンジョン内で泊まる際には、基本誰かと交代交代で見張りをするのだが、そこは剛志はゴーレム使いだ。自分の周りをゴーレムたちに守らせることで一人でも休むことができる。
なので剛志は自身の周りにゴーレムたちを出し、本来なら入口の階段近くの安全地帯で止まるのが探索者の基本なのだが、スキルの使用可能な安地外で剛志は寝泊りの準備をしているのだ。
「しかし、この『ゴーレム異空庫』ってスキル、今日一日いろいろと練習したけど奥が深そうだな。まだ近くの地面にしか作れないけど段々とその作成スピードが上がっているのが分かる。基本的にゴーレム使いって職業柄俺自身の戦力が弱いから何とか守る力を身につけなきゃって思っていたけど、これを使えばその懸念も解消できるかもしれない。今後は重点的に練習しよう」
そういいながら、取り敢えず展開のスピードを上げようと何度も近くにゲートを出したり引っ込めたりする剛志。その都度中に入ったり外に出たりと忙しくしているゴーレムたちが何だかモグラたたきの様で少々滑稽だ。
しかし当人の剛志は真剣に練習をしており、そのうち脳みその疲れがピークに達したあたりで持ってきていた寝袋にくるまり、周囲をゴーレムに見張らせて眠りにつく。
限界まで酷使した脳みそは、急速な休憩を必要としたのか、一瞬でその意識は眠りに落ち、次の日の朝まで深い眠りにつくのだった。




