第29話 ボス部屋
二日間限定でスタートダッシュということで一日10話更新。二日目です。
更新時間は12時・13時・14時・15時・16時・17時・18時・19時・20時・21時の一時間ごとになります。
楽しんでいただけますと幸いです。
ボス部屋の順番を待ちながら剛志は自身のステータス確認している。
「いや~、でもここまで潜ったはいいけどずっと固まって戦っていたから、全然レベルが上がらなかったな。戦闘自体もそんなにしてないし。レベルが上がらないとMPの回復が少ないからゴーレムたちを強化してやれないよ...」
ステータスボード
名前:岩井剛志
職業:ゴーレム使い
スキル:所持制限無視
職業スキル:ゴーレム作成・ゴーレム再作成・支援魔法【ゴーレム】・ゴーレム強化
レベル:10
HP:34/34
MP:38/60
攻撃力:27
防御力:33
器用:59
速さ:29
魔法攻撃力:40
魔法防御力:45
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所持ゴーレム数
サンドゴーレム×1
ミニサンドゴーレム×29
ミニウッドゴーレム×18
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そういって自身のステータスを確認した剛志だったが、MPはまだミニサンドゴーレムをサンドゴーレムに再作成するには足りない。
「あ、そうだ。今日ここに来る前に買ったMPポーションを使えば一体は作れるじゃん。ボス部屋だし準備するに越したことはないな」
持ってきていたMPポーションの存在を思い出した剛志は、さっそくマジックバックからMPポーションを取り出し飲み干す。
その味はお世辞にもおいしいとは言えず、青汁を飲んでいるような感覚だった。
そのあと口に残る薬草臭さを我慢しながら自身のステータスを確認すると、MPが20回復していた。今回のMPポーションは一番安いもので、それでも一本5千円したのだが、一度に回復するMPの量は20の様だ。
それでもサンドゴーレムを作るのには十分なため、さっそく作成する。
「よし二郎、【ゴーレム再作成:サンドゴーレム】」
そうして、二郎をサンドゴーレムに強化した剛志は、そのあともボス部屋が開くのをただじっと待つのだった。
それから時間にして10分か20分たったぐらいで、ボス部屋の扉が開いた。ゆっくりと開いていく扉の奥には何もない広場が広がっており、中にはだれもいないようだ。
「お、順番が来たのかな?じゃあ入りますか!」
そういって立ち上がった剛志は、自身の周りにまだ出していなかったゴーレムたちを出し、ゴーレムに囲まれるようにしながらボス部屋の中に足を進める。
剛志たち全員が部屋の中に入りきると、ゆっくりと入口の扉が閉まっていく。これでもうあとには引き返せない。
中の大きさは目算だがおそらく直径100メートルほどの円形の広場の様で、かなりスペースがある印象だ。そんな感じであたりを見わたしていると、入口と反対の方に魔法陣のような図柄が浮かび上がり、それが光ったかと思うと中から魔物たちが歩いて出てきた。
「おお、ボス部屋ってこんな感じでボスが出てくるんだな、勝手に待ち構えている印象だったけど、どちらかというと迎え撃つって感じだな」
そんな感想を剛志が言っている間に、魔物たちは出きったのか魔法陣は光を失い消え去った。そしてその場には剛志たちのほかにボス部屋の魔物たちだけが残された。
この階層で現れたボス部屋の魔物は遠目で確認した限り、全部で10体。すべてゴブリン系統の魔物で、姿形や、持っている武器などから判断すると、普通のゴブリン7体、ゴブリンリーダー二体、ゴブリンコマンダー一体の構成の様だ。
イレギュラーエンカウントで現れた以来のゴブリンコマンダーで、その上二体のゴブリンリーダーもいるためかなりの強敵だと思われるが、ここに来るまでの戦闘で自信をつけている剛志には十分戦える相手に映った。
「よし、皆。いつものようにしっかりと連携をとってくれ。いけ!」
そう剛志が掛け声をかけると、一斉にゴーレムたちは歩を進めだした。
ゴーレムの特性なのか、剛志が連携を教えだした途端に完全に連携を始めたゴーレムたちは、ここに来るまでの道中ですでに確立した戦い方を見つけていたのだ。
まず、今回は二体に増えたサンドゴーレムの一郎と二郎が、ツートップで前進していき、それに追従する形でミニサンドゴーレムたちが全く同じ動きで並びながら前進していく。そしてその後ろにミニウッドゴーレムたちが並んで進んでいくのだ。
一応剛志の周りには数体のミニサンドゴーレムとミニウッドゴーレムが待機して護衛をしているが、それ以外のゴーレムたちはいっせいに突撃していく。
そうすると約50体のゴーレムたちvs10体のゴブリンという見るからに戦力差が分かる構図が出来上がるのだ。それにこのボス部屋は今までのダンジョン内と違い、横幅も広いため、ゴーレムたちが広がりゴブリンを囲むように追いつめることができる。
そこまで確認した剛志は、この戦いもう負けることはないと確信するのだった。
勿論さすがに地下9階層のボス部屋の魔物なので、下っ端のゴブリンでも一体同士ではミニサンドゴーレムの相手にならない。ましてや今回はゴブリンコマンダーたちのバフもかかっているので、ゴブリンの達の方が個の力は強い。しかしこちらは5倍の兵力を持っていて、それが完全に連携して攻撃を繰り広げるためゴブリンたちはなすすべなく一方的に攻撃を食らい数を減らしていく。
サンドゴーレムの一郎と二郎は奥のゴブリンリーダーとコマンダーに向かっていく。
こちらは単純な戦力差で考えても、3対2でこちらが人数が少ないが力はこちらの方が高い。そのため3対2でもやられることなく押し込んでいくのが見える。
ゴブリンリーダーたちも必死に抵抗しているが、そもそものガタイからしてサンドゴーレムの方が大きく、その大ぶりだがスピードのある攻撃になかなか守るのに必死の様子だ。
そしてそこに今度はミニサンドゴーレムたちの後ろに控えているミニウッドゴーレムたちが石の投擲で援護していく、まだまだ投擲の精度は低いままだが、ゴーレムたちは石に当たってもほどんどダメージを食らわないのに対し、ゴブリンたちは少しうっとうしそうにする。その差でどんどんとゴーレムたちの攻撃がゴブリンたちに当たりだし、一気に形成が決まるという状態だ。
そうして、特に苦戦することもなくボス部屋の魔物たちを倒した剛志たちは、ドロップした魔石などを回収し、入口と反対側にあった扉が開くのを確認し地下10階層へ向け進んでいく。
地下10階層までの階段の途中に転移陣を発見した剛志は、一度そこを使い地上に戻りこの転移陣を使用可能にした。
本来ならこのまま地下10階層を探索するつもりだった剛志だったが、時間も割と夕方できりもいいので今回はここまでで一度帰宅することに切り替えた。そこでいつものようにダンジョン支部の受付に行き、買取のために上白根さんを呼んでもらった剛志はついに地下10階層まで進んだことを伝えた。
「おお、ついにですか!おめでとうございます。以前から聞いてた内容からそれくらいの実力はあると思っていましたが、これでやっと一般的にも探索者として見られるレベルですね。そうだ、少し早いかもしれませんが剛志様の探索者ランクを9級に昇格できないか聞いてみます。おそらく可能だと思うので次回こちらに来て頂いた際にはそちらも更新させていただくかと思います。」
「おお、探索者のランクですね。ありがとうございます。そういえばなんですが、ランクって結局どういうものなんでしたっけ?」
そもそもの探索者ランクの立ち位置をあまり詳しく聞いていなかったことを思い出した剛志はそのまま疑問に思ったことを聞いた。
「ああ、ちゃんとお話ししたことはなかったかもしれませんね。探索者のランクとは基本的に10級から始まり、1級まであります。ランクによって大体のイメージがありまして、10~7級は初心者、6~4級が中級者、3~1級が上級者といった感じですね。そして結局探索者のランクは上がるといいことがあるのかというところなのですが、周りからの見る目が変わるという一種のステータス以外の面で言うとランクが高いほうがよりいいサービスを受けられるというところが違いですね。宿泊施設の提供や、ちょっとしたマッサージなんかも優遇されたりします。あとはダンジョン支部からの依頼が回ってきやすくなったりとかですね。まあ、ランクが上がればお得なことが増えたりするくらいで問題ないと思います。探索者は実力主義で個人判断が基本ですので。」
「なるほど、そうなんですね。わかりました。」
そうして、会話を終わらした剛志は、今日出たドロップアイテム等を売り、その日は一時帰宅することにした。
電車でそこまでかかるわけではないが、ここまで頻繁にやってくるなら引っ越すのもありだななどとたわいもないことを考える剛志だったが、その日はいつものように帰り、ご飯を食べ寝る。明日からのダンジョン探索へ向けて英気を養う剛志だった。
因みに、上白根さんと剛志の会話で、探索者のランクを上げることのメリットが少なく語られていたのは、すでに剛志は登録した際に獲得しているスキルのお陰でダンジョン支部からサポートを受けられる探索者、いわゆる認定探索者というものになっているからだった。
認定探索者の剛志はすでにかなり手厚いサポート体制が受けられているので、あまりランクは意味がないというような感じで語られていたが、一般の人にとってはランクアップで得られる恩恵は大いにあり、皆ランクを上げたいと思い探索にいそしんでいるということをここで明言しておきたいと思う。




