第24話 連携
今日と明日の二日間限定でスタートダッシュということで一日10話更新いたします。
更新時間は12時・13時・14時・15時・16時・17時・18時・19時・20時・21時の一時間ごとになります。
楽しんでいただけますと幸いです。
田中達を逃がすために殿となった剛志。
最低限未成年を守る大人の役割を演じた剛志だったが、特に命を懸けて守ろうといった殊勝な考えがあるわけではない。
自身の戦力を考えた際に、勝てると見込んだだけのことだ。
今残っているゴーレムたちはミニサンドゴーレムが35体、ミニウッドゴーレムが18体で、相手はゴブリンイレギュラーエンカウント込みで4体。
いくら相手が強くても、単純に数的に圧倒的有利なのは間違いないのだ。
今まで人数を分けて戦ってきていたが、集合させれば今よりも下の階層で戦うことは可能だと考えていた剛志は、このイレギュラーエンカウントでも問題なく倒せると思っていたのだ。
剛志が誤算だったのはイレギュラーエンカウントが一体だけだと思っており、奥にいるのがゴブリンリーダーもイレギュラーエンカウントであるゴブリンコマンダーであるということを知らない事だった。
そんな事知る由もない剛志は、現在の道幅を考えゴーレムたちに指示を出す。
「一郎たちミニサンドゴーレムは横に7体ずつ並んで、壁を作ってくれ。一木達ミニウッドゴーレムは今回は全員石を拾い投石の準備」
そういって、目の前にミニサンドゴーレムとミニウッドゴーレムたちを並べた剛志は、その後方に位置取り全体を見渡す。
その後ろでは膝に手をついて息を整えている田中達が居た。
「俺でも勝てるかどうか自信がない、もし無理なときは逃げるつもりだからその時にここにいられると邪魔だ。息が整ったら逃げてくれ」
そういうと田中達はわかったと、うなずく。
その後前方に剛志が顔を向けると、ちょうどゴブリンたちとゴーレムたちがぶつかるところだった。
ドンッという大きな音が鳴り響き、車でもぶつかったのかと思うような衝撃を受けた最前列のゴーレムたちが後方に吹き飛ばされた。
それによってゴブリンたちの勢いは止まったが、勢いをつけたゴブリンたちの衝突はすさまじいものであった。
「うわっ、すごいな。ゴブリンの上位種ってあんなに強いのか?」
そう思い、ゴブリンたちをよく見ると、目が赤く光っており、血管が浮き出ている。
明らかに今まで見ていたゴブリンたちと違う。
「え、普通のゴブリンまで明らかに異常だぞ。息を切らしているところ悪いけどこれだけ聞いてもいい?ゴブリンの上位種って仲間を強化することも出来るの?」
そういって後ろにいる田中君たちに質問をした剛志に、答えてくれたのは盗賊の加藤君だった。
「…確か、ゴブリンリーダーの上位種のゴブリンコマンダーっていうのがゴブリンの強化を行うスキルを持っていたはずです。でもあのイレギュラーエンカウントはゴブリンの上位種のゴブリンソルジャーだったので、そういったスキルはないはずですが…え、もしかしてイレギュラーエンカウントがソルジャーだけじゃなくてコマンダーもいるってことか!?剛志さん、まずいです。だとしたらさすがに剛志さんでも厳しいと思います!」
そういって忠告してくれた加藤君。そういわれて奥にいるゴブリンリーダーをよく見てみると、いつもはゴブリンよりも身長が少し高いだけのゴブリンといったような見た目なのに、今奥の方にいるゴブリンリーダーは身長もそうだが体格も一回りほど大きい。
確かに奴も上位種のイレギュラーエンカウントの様だ。
そんな事を考えている際も、最前列のゴーレムたちのHPはガンガン削られており、ゴーレムたちは急所を守るだけで精一杯の様だ。
いつもだと攻撃の際に体勢などを崩したゴブリンに、隣にいるゴーレムが攻撃をくわえ、そこからどんどんと敵を削っていくのが戦法なのだが、今回は強化されているからなのか体制がぶれず、どんどんと攻撃をもらってしまっているようだ。
ミニウッドゴーレムたちは思い思いに足元の石を拾い、投げているがそれも敵に避けられたりガードされたりとダメージにつながっていないようだ。
どうしたものかと思いながらも、考えをめぐらせある一つの考えが浮かんだ。
それは、ゴーレムたちの動きがバラバラで、お世辞にも連携が取れていないということだ。
今までほとんど自分たちで考えて行動させていたが、ゴーレムは基本指示されたことしかできず、あまり自分で考えることは苦手なのだ。
初めてスライムと戦った時も、剛志が指示して初めて戦うことができた、それを思い出したのだ。
そこで剛志は、まず壁となって守ってくれているミニサンドゴーレムに指示を出した。
「一郎たちミニサンドゴーレム!動きを合わせろ。あいての攻撃の瞬間にこちらからもぶつかりダメージを負わせるんだ!その時に一体ずつでやらないで、タイミングを合わせて一斉にうごけ!力を合わせればお前たちの方が強いはずだ!」
剛志がそう叫ぶと、ミニサンドゴーレムたちから了解といったような意思が伝わってきた。
タイミングも剛志が合わせてやる必要があるので、いまだと思う際に大きな声で「いまだ!」と叫んでやると、ミニサンドゴーレムたちが密集しながら一斉に一歩前に進んだ
そうすると、今まで押されるだけだったミニサンドゴーレムたちの反撃で攻撃を加えていたゴブリンたちがたたらを踏んだ。
そのあとも「せーの、せーの」と掛け声をかけ、タイミングを合わせるということを教えてやると、段々とゴーレムたちの動きがシンクロしていき、少しずつゴブリンたちを押し戻すことができたのだ
「いいぞ、その調子だ!頑張れ!」
そういってミニサンドゴーレムたちを応援する剛志だが、その一方でミニウッドゴーレムたちの投石はいまだに当たってもそこまでダメージを与えることができていない。
これもバラバラに投げているのが原因だと考えた剛志は、ミニウッドゴーレムたちにも命令を下した。
「一木達ミニウッドゴーレムも、投石のタイミングを合わせろ!一郎たちが動いた後のタイミングで一斉に石を投げるんだ!」
そう指示すると、ミニウッドゴーレムたちはわかったといったようにうなずき、石を持ってもすぐには投げずタイミングを見計らうようになった。
ズッ、パン、ズッ、パン、ズッ、パン、とリズミカルに押し出しと投石を行うゴーレムたち。
その訓練された軍隊のような一糸乱れぬ連携に、初めは押していたゴブリンたちも段々と押されている。
唯一ゴブリンの上位種のゴブリンソルジャーだけ拮抗するように押し返しており、ゴーレムもHPを削り切られて倒されるものもいるが、すぐさま後方のゴーレムが前に出てその穴埋めをする。
そうやって段々と押し返しだしたゴーレムたちにしびれを切らしたのか後方にいたゴブリンコマンダーが前に出てきて大きな雄たけびを上げた。
その雄たけびを聞いた剛志は一瞬恐怖で固まってしまったが、恐怖といった感情のないゴーレムたちの動きは乱れない。
数秒たって硬直が解けた剛志は、先ほどの雄たけびがスキルによるものだったのだと気づいたが、ゴーレムたちには効かなかったようだ。
その後はたまにゴブリンコマンダーやゴブリンソルジャーからスキルが放たれるが、お構いなしに前進と投石を繰り返すゴーレムたちの猛攻を受け、ゴブリンのイレギュラーエンカウントは倒されるのだった。
それは剛志にレベルアップの通知が届いたときに気づき、あとには倒されてしまったゴーレムの残骸と、ゴブリンのドロップアイテムが残るだけだった。
ステータスボード
名前:岩井剛志
職業:ゴーレム使い
スキル:所持制限無視
職業スキル:ゴーレム作成・ゴーレム再作成・支援魔法【ゴーレム】・ゴーレム強化
レベル:10(1up)
HP:34/34(2up)
MP:60/60(7up)
攻撃力:27(2up)
防御力:33(2up)
器用:59(5up)
速さ:29(2up)
魔法攻撃力:40(4up)
魔法防御力:45(3up)
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所持ゴーレム数
ミニサンドゴーレム×30(5down)
ミニウッドゴーレム×18(3up)
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