第2話 ☆5スキル『所持制限無視』
翌日ダンジョン組合に来て、ダンジョンに入るために必要なことなどを聞いていた剛志は、せっかくだからとそのまま登録を行うことにした。
今まではダンジョン探索のための登録は、スキル取得料と、ジョブ取得料併せて5万ほどかかっていたのだが、今は一年間限定で無料キャンペーンを実施中の様で、無料でスキルとジョブを取得できるようだったのだ。
人は無料という言葉に弱いため、剛志もあれよあれよという間に登録を進めていき、今はスキル取得を待っている状態だ。
改めて軽く説明すると、ダンジョンとは一階にスキルの石板と、ジョブの石板があり、そこをダンジョン組合が管理している。そして地下一階、地下二階と地下に潜るように進んでいくようだ。そのあと10階ごとに転移陣があり、そこを一度通るとショートカットが可能になるようだ。
スキルとジョブは、その石板に触れることで、誰でも手に入れることができ、スキルはランダムで一つが付与され、ジョブは取得可能ジョブが表示され、そこから選ぶことになる。
そのため初めにスキルを手に入れ、それに対してシナジーのあるジョブを手にするのが一般的だ。
スキルはレアリティも様々で変更不可なので、このスキル取得はとても重要だが、最悪やめればいいと考えている剛志は気軽にスキル取得を待っている状態だ。
周りには剛志と同様にスキルの石板待ちの人々が数人いるがその誰もが、剛志よりも若い。そんな中一人おっさんが混じっているので、少し気まずい思いをしながらも、自分の番を待つ剛志を組合の職員が呼ぶ。
「29番でお待ちの岩井剛志様。石板の間までお進みください。」
自分の名前が呼ばれたことで立ち上がった剛志は、周りの視線を少し感じながらもまっすぐに石板の間まで進んでいく。
石板の間に入ると、中には大きな石板が真ん中にあるだけのシンプルな作りで、ほかには何もない。
入口で身分証を見せた後ついてきた職員の人にやり方を教わる。
「石板にただ触れてもらうだけで問題ないですよ。そのあとどんなスキルだったか教えてもらいます。これらの情報はステータスボードに記載されますが、所持スキルとジョブは登録制ですので、毎回しっかりと登録してください。入口の無人機械で登録可能ですので」
「すみません、ステータスボードってなんでしたっけ?」
「あれ、説明受けていませんでした?もう一度説明しますが、ステータスボードとは個人のスキルやジョブ、そしてその他のステータスが記載される板になります。これはダンジョンに一度はいると誰でも出すことは可能で、心の中で思い浮かべるだけで目の前に浮かんできますよ」
「なるほど、うわっ」
説明を受けながら、思い浮かべてみた剛志の前に半透明の板が浮かび上がってきた。
ステータスボード
名前:岩井剛志
職業:
スキル:
職業スキル:
レベル:0
HP:9/9
MP:13/13
攻撃力:8
防御力:11
器用:11
速さ:8
魔法攻撃力:8
魔法防御力:11
それを見て、職員が話しかけてきた。
「ステータスボードは基本的にあまり人に見せびらかすようなものではありません。個人情報ですので。しかしそこに記載されている職業、スキル、職業スキルは登録制ですので、登録をお願いいたします。これはスキルホルダーの管理の意味合いもありますが、そのスキル等を踏まえて仕事の斡旋なども行っているので、登録することのメリットも大きいですよ。一先ず今はしまっていただいて、スキルの取得をお願いします。あとが詰まっていますので」
と冷たく言われてしまった。
「すみません、今やります。」
そういいながらステータスボードを消した剛志は、右手で石板に触れた。そうすると石板が一瞬ひかり、その後石板に文字が浮かび上がってきた。
『所持制限無視』
石板にはそのように書かれていた。
「おお!岩井さん。このスキルは所持制限緩和系スキルの中でも最上位スキルになります。レアリティで言うと☆5です。おめでとうございます!」
と、少し興奮気味に言ってくる職員にびっくりしながらも、☆5のレアリティということを聞いて嬉しくなった剛志だったが、あまり強そうに思えない名前にどういったものなのか聞くことにした。
「☆5はすごいですが、あんまり強くはなそうな名前ですね、そもそもどうやって攻撃するんでしょうか?」
「ああ、こちらは攻撃スキルではなく、補助スキルになります。装備や所持品にはそれぞれ所持制限というものがあり、その制限は重さだったり数だったりと様々ですが、こちらのスキルはその制限を超えて持つことが可能になるといったスキルになります。戦闘で使うのはあまり想像できませんが、例えば本来の容量より多くの物を入れられるマジックバックなどと組み合わせると、最小の容量で無限に物を運べるようになったりしますので、このスキルの所持者はとても重宝されますよ。今調べたところ日本にも15人しかいないようなので、岩井さんで16人目ですね。おそらく運送などの依頼がひっきりなしにやってくると思います。」
その説明を受けた剛志は、荷物運びか…と少し残念な気持ちにはなったが、本来の目的である副業と考えれば最高だと思い直し、その部屋を後にすることにした。
やはり剛志も男の子なので、ダンジョンの中でかっこよく戦う姿なんかを妄想することはあり、この機会にそうできないかと淡い期待を持っていたことも事実だったのだ。
そして、少したってジョブの間に行き、先ほどと同様に石板に触れた剛志はいくつかの職業が選択可能だったが、すでにダンジョン内で戦うことはほとんどないんだろうなと思っていたため、よくある剣士や魔法使いみたいな職業は選ばず、雑用等に便利そうといった理由でゴーレム使いを選択した。
このゴーレム使いは後で知ったことなのだが、割かしレアな職業ではあるものの、使い勝手が悪くあまり人気ではない職業みたいだった。
そうして、一通り登録作業を終えた剛志は、☆5のスキルを取得したことで、あとで受付に来てほしいといわれていたため、そのままの足で受付に行くと、奥の部屋へ通された。
そこに待っていたのは、見るからにキャリアウーマンといったような見た目の女性で、渡された名刺を見てみるとこのダンジョンの支部長の様だった。
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レアリティについて
レアリティは☆であらわされ、基本的には☆1~5で5が最大。
そのほか世の中で一人しか保持できないユニークスキル/アイテムも存在し、それらは☆0で表され、通称星なしと呼ばれる。
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