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ゴーレムの可能性は無限大 〜副業で探索者になったら職業とスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜  作者: 伝説の孫の手
剛志強化プロジェクト

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第158話 強敵襲来

剛志が格上相手の対策案を絞り出し、その準備を進めているころ。あの男がついに動き出していた。


「お尋ね者になって以降、動きづらくてかなわん。これだから面倒だったんじゃが、仕方がないのう」


そうぼやきながらやってきたのは、藤原権蔵ふじわらごんぞう。☆5スキル【バーサーカー】の所持者であり、現在はA.B.Y.S.S.の構成員。A.B.Y.S.S.の中でも屈指の実力者であるこのゴーレムマスターが、ついに重い腰を上げて動き出したのだ。


そんな権蔵は、A.B.Y.S.S.の移動網を利用して難なく横浜第三ダンジョン内に潜り込んでいた。


「ここから先は、何も手助けできませんので悪しからず」


「ふん」


案内役の男がそう言うと、権蔵はどうでもいいとばかりに、ろくに返事もせずダンジョン内を進んでいった。どこまでも自分勝手な態度だが、その実力はまぎれもなく本物だ。


そもそも権蔵は、A.B.Y.S.S.に加入する前からダンジョン界隈では有名な探索者の一人だった。今ではお尋ね者としても広く顔が知られており、変装すらしていない状態で歩けば当然目立つ。


「え、あれって……」


道行く人々が権蔵に気づき、ざわつき始めるまでに時間はかからなかった。


「ふん、遠目で見るだけの腰抜けどもが……これだから弱き人間は嫌いじゃ。誰か一人でもかかってくる者はおらんのか? 全く、最近の若い者ときたら……」


まったく隠す素振りもなく、むしろ周囲に語りかけるかのように話し出す権蔵。その傍若無人な態度に、周囲の探索者たちは驚きを隠せなかった。


そんな中、一人の男性が権蔵に声をかけた。


「元一級探索者の藤原権蔵さんですよね? 今は確か、A.B.Y.S.S.に所属しているとか……ここへは、どのような目的で?」


「馬鹿、そんなの正直に話してくれるわけないでしょ!」


すかさず隣にいた女性がツッコミを入れる。彼らは剛志と同時期に探索者となり、連絡先も交換していた田中正人たなかまさと渡辺美鈴わたなべみれい。そしてその隣には盗賊のジョブを持つ加藤幸助かとうこうすけもいた。


探索者としては同期にあたる彼らは、すでに剛志とかなりの実力差がついてはいたものの、いまだに多少の交流はあり、偶然出くわせば言葉を交わす程度の関係ではあった。


そんな彼らは、剛志の現状や立場をある程度聞かされており、今この場にA.B.Y.S.S.の構成員が現れたということの意味を察することができた。


そして、その悪い予感が権蔵の言葉によって確信に変わる。


「ほう、おぬしは見どころがありそうじゃな。男なら、そうでなくてはの。ま、全く以て相手にはならんがのう……まあ、若い者の質問に答えるのも年長者の務めじゃ。岩井何とかというゴーレム使いがいるそうでな、ちと挨拶に伺おうと思っての」


そう言って不敵な笑みを浮かべる権蔵。しかしその笑みは朗らかさとは無縁で、むしろ背筋が凍るほどの悪意に満ちており、圧倒的な威圧感と相まって、その場にいた者たちは思わず一歩後ずさってしまう。


田中も例外ではない。彼は一般の探索者としては優秀な部類に入るが、剛志や権蔵のようなイレギュラーとはまったく別次元の存在だ。だが、それでも田中は話すのをやめなかった。


「なるほど。教えていただきありがとうございます。剛志さんは友人なので助けたい気持ちはありますが、今の自分にできることはないでしょうね。一応お聞きしますが、お帰りいただくことは可能ですか?」


「別に、わし自身この件にさほど興味があるわけでもないがのう……だが、ここまで来たのじゃ。挨拶くらいはしていかねばなるまい。また出直すのも面倒じゃし」


「……ですよね。わかりました」


そう言って下がる田中。その様子に、意外そうな顔を浮かべた権蔵が口を開いた。


「ふむ? 玉砕覚悟でかかってくるのかと思ったが……つまらんの。まあよい。わざわざ羽虫を叩く趣味はないのでな。こちらに牙を剥かぬのなら、放っておくとしよう」


そう言いながら、権蔵はゴーレムを召喚する。そのゴーレムは全長5メートルの巨体で、ゴツゴツとした岩ではなく、木製の素材で構成されたゴーレムだった。表面はざらついており、木とは思えぬほどの威圧感を漂わせていた。


そのゴーレムに抱えられるように乗り込む権蔵。そして、ゴーレムはそのまま走り出す。


その速度は凄まじく、巻き起こった風圧だけで、道端にいた人々が吹き飛ばされるほどだった。


出発する権蔵の姿を確認し、田中は命が助かった安堵から深く息を吐いた。


その直後、渡辺が田中の頭をはたく。


「いたっ!」


思わず頭を押さえる田中。そんな彼に、怒り心頭の渡辺が声を荒げた。


「なんであんたは、そういうことするのよ! どう頑張っても勝てない相手だったでしょ!? そういう時は関心を持たれないようにするのが基本でしょ、それを何勝手に話しかけてんのよ!」


「いや、でも……あの人が来てるってことは、剛志さんが狙われてるってことじゃんか。それを知ってて何もしないなんて無理だろ。それに、ちゃんと戦いは避けたし……これで確信持って剛志さんに連絡できるだろ? そこまで怒らなくても……」


危ない橋を渡った自覚があるのか、だんだんと声が小さくなっていく田中。そして、怒ってはいるものの田中の気持ちも理解できてしまい、それ以上怒れない渡辺。


だがそこに、黙っていた加藤が口を開いた。


「いや。今の正人の行動は、はっきり言って愚策だね。もし僕たちが剛志さんの知り合いだと知られていたら、力で居場所を聞かれたときに抗う術はなかった。今回はたまたま向こうが、すでに心当たりがあったから尋問はなかったけど……最善策は気づかれないように立ち振る舞うことだったよ」


ため息まじりの冷静な指摘に、田中も何も言い返せなくなる。そして渡辺も、加藤の正論に打たれたことで、それ以上田中を責められなくなった。


「……とにかく! 今の出来事も含めて、剛志さんと組合に報告しましょう! それが最優先よ!」


その言葉にハッとした二人は、田中が剛志に連絡し、加藤が組合に報告を入れるという形で、すぐさま動き出した。


加藤が組合に向かう中、田中は携帯端末で剛志に電話をかける。数コールの後、通話がつながった。


「あ、もしもし、剛志さん?」


「ああ、田中君。どうしたの、電話なんて珍しいね」


「急で申し訳ありません。どうしても伝えなければならない緊急の件です」


そう言って、先ほどの出来事を説明する田中。話を聞き終えた剛志は、すぐに感謝の言葉を伝えた。


「ありがとう、教えてくれて。思ったよりも緊急事態だね。そっちは大丈夫だった?」


「はい、戦闘にはなりませんでしたので。自分の怪我といえば、美鈴に頭をはたかれたくらいです」


「はは、それはおっかないね。了解、連絡ありがとう。こっちのことは何とかするよ。気をつけてね」


「剛志さん、また今度ご飯でも行きましょう」


「そうだね。じゃあ、俺が行ったこともないような高級店でも行ってみようか。最近ちょっと羽振りいいんだよね」


「うらやましいですね。ぜひお願いします」


最後はいつものように、世間話で締めて通話を終了する二人。内心ではどちらも冷静ではなかったが、互いに冷静を装っていた。そういった感覚の近さこそが、剛志と田中がいまだ友人関係を続けていられる理由なのかもしれない。


一方、加藤が組合に報告を入れた頃には、周囲はすでに騒然としていた。加藤以外にも一連の流れを遠目で見ていた者は多く、それぞれが同じような内容を報告していたため、加藤の報告にも信憑性が与えられたのだ。


ダンジョンが警戒態勢に移る中、奥へと突き進んでいく権蔵。そして、今もなお60階層以降に滞在している剛志たち。


両者が交わるその時は、もうすぐそこまで迫っている。



本作品を楽しんで頂きありがとうございます。

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