第155話 ブショウの実力とキャラ付け
「よし、ブショウのキャラ付けは決まったね。じゃあ、イチロイドの分体改め『ブショウ』、これからよろしくね!」
そう言って、すでにイチロイドの分体のコアを取り込んだブショウに剛志は話しかける。先ほどキャラ付けが決まったばかりなので、今はほとんどイチロイドではあるのだが、これからこの個体はブショウとして成長を重ねていくことになる。
「『承知仕った。拙者、これより主の御命に従い、最強の戦闘ゴーレムとなるべく、日々鍛錬いたす。何卒、よろしくお頼み申す』」
さっそく剛志と臼杵のキャラ付けに忠実に従うブショウ。かなりキャラを盛り込みすぎな気もするが、ブショウのしゃべり方に馬鹿二人は満足そうだ。
「良いじゃねえか!なんだか古風な感じでかっこいいな。歴戦の猛者感あるし、しゃべり方も武将っぽい」
「ま、本物の武将のしゃべり方なんか知らないから、イメージでしかないんだけどね。でもこれでイチロイドとブショウの区別はつくし、いいと思う」
そんなブショウのキャラ付けという、本来なら全く意味のない部分に謎のこだわりを見せた二人だったが、マジックアイテムも取り込んだし、これで一旦完成と言えるだろう。次にやるべきなのは実力の把握だ。
「そういえば、ブショウ。マジックアイテムを取り込むことで、詳しくは何ができるようになったの?」
「『チャンネルごとに効果を分け、保存してござる。
具体的には、武器にて炎、氷、風、電撃といった属性を流すことが可能。
現状、炎の力が最も強うござるな。
また、防具においては、受けた攻撃を跳ね返す“リフレクト系”の力、あるいは防御を高めるもの、柔らかさを増して衝撃を吸収するものなど、状況に応じて切り替えながら戦うことができ申す』」
そう言って、実際に剣に炎を纏って見せてくれた。
「おお、さすがマジックアイテムを吸収して強くなるゴーレムだね。戦い方がトリッキーだ。それに攻撃力も防御力も強そうだし、今後どんどん成長して強くなってもらわないと。期待しているよ」
「『精進いたす』」
そんなブショウの今のステータスがこれだ。
【ステータス】
名前:ブショウ
種類:バトルゴーレム
スキル:【増加】・【成長】・チャンネル(武器強化・攻撃力UP・防御力UP・速さUP・属性付与・性質変化・リフレクション)
レベル:42(42up)
HP:290/290(240up)
MP:290/290(240up)
攻撃力:290(240up)
防御力:290(240up)
器用:900(420up)
速さ:290(240up)
魔法攻撃力:290(240up)
魔法防御力:290(240up)
こう見るとかなり強くなっていることが分かる。また、このステータスでは測れない強さが、チャンネルにまとめられたマジックアイテムの力だ。これによって同じようなステータスの敵とは互角以上に戦える。
そんな強くなったブショウだが、それでも今剛志たちがいる階層でいきなり戦わせるわけにはいかない。さすがに敵のレベルが高すぎるのだ。
なので剛志は、いつものように戦闘用のゴーレムたちを複数体用意して、それらに相手をさせることにした。
「ブショウ、これから先レベルアップすることでこの階層でも戦えるようになってもらうけど、今回はまだレベル不足だ。だから今回は用意したゴーレムたち相手に模擬戦を見せてくれないかな?」
「『承知』」
そう言って、複数あるすべての腕に武器を構え、仁王立ちの姿勢をとるブショウ。腕には対になるように大剣、斧、ハンマー、槍が片手で一つずつ、左右で二つ掲げられており、一番前の腕では大きな弓を構えている。
ちなみに、防具もそうだが、武器もすべてブショウの体から生成されるため、武器を持たせる必要はない。
そんな迎撃体制のブショウに対して、剛志は同じくらいのステータスのゴーレムを作成する。アイアンゴーレムからウッドナイトゴーレムなど、大体地下30階層辺りを探索していた際の主要なゴーレムたちだ。
「ブショウのレベルはまだ40くらいだけど、大体推奨レベルが60くらいの地下30階層くらいで戦っていたゴーレムたちだ。俺の見立てだとこのくらいは勝てると思うんだけど、どうかな?」
剛志のその発言に対し、ブショウは好戦的に返答する。
「『この程度、拙者にとっては朝の鍛錬にもならぬわ! 遠慮は無用、存分に参られよ!』」
ブショウの返答を受け、満足そうな剛志はどんどんとゴーレムの数を増やしていく。そうして最終的には、全部で300体ほどのゴーレムがブショウの前に召喚された。
それを受けて、若干引いた様子のブショウ。しかし、一度言ったことは曲げられない。そんなブショウは自らを鼓舞させるべく気合を入れる。
「『む……数多いな。されど、拙者が口にした以上、退く道などあろうはずもなし!
来い、寄せ手ども!まとめて相手してくれようぞ!』」
「よし!いけブショウ!やっちまえ!」
臼杵もこの状況に興奮しており、ブショウに声援を送る。さながら野球観戦をしているおっさんのような野次だ。
そして緊張感が高まったタイミングで、剛志はブショウに向かって300体のゴーレムたちを進軍させる。今回はイチロイドに指示してもらうのではなく、大雑把な命令だけをゴーレムたちに与える形だ。
理由は単純に、イチロイドが連携させてしまうと、さすがのブショウも勝ち目がなくなってしまうからというものなのだが、久しぶりにゴーレムに命令をしている剛志は若干懐かしさを感じていた。
しかし、目の前で行われているものはそんなにのんびりしたものではない。紛れもない戦争だ。
剛志の命により進軍を始めたゴーレムたちは、先頭にアイアンゴーレムたちが陣取り、盾の役割を果たす。そしてその後ろにはウッドナイトゴーレムたちが等間隔で隙間なく続いている。また最後尾にはウッドメイジゴーレムも陣取っているため、遠距離攻撃もお手の物だ。
実力は確かに地下30階クラスのゴーレムたちだが、その数が異常だ。また簡単ではあるがしっかりと統率された動きをしているので、剛志が今まで培ってきた必勝パターンである。そんなゴーレムたちに、シンプルなステータスでは劣っているブショウがどう立ち回るのか、お手並み拝見だ。
先頭のアイアンゴーレムがブショウに近づく前に、ブショウはまず自身の強化を行う。各武器に対しチャンネルを起動し、各種ステータスの強化を可能にする。そしてそのまま、自身に対して強化の重ねがけを行った。
マジックアイテムの効果によって、ステータスが約1.5倍にまで増加したブショウは、これによってゴーレムたちと一対一では勝てるくらいには強化された。しかし、だからと言って勝てる見込みはないのが、この数の暴力だ。そこに対し、どうやって対抗するのか。
自身のステータスを強化し終わったブショウは、さっそく攻撃に移る。大弓を引き絞り、強力な火矢を放った。もちろんこの火矢はスキルによるものだが、そもそも大柄なブショウが、その巨体を生かし強化されたステータスで放った矢は、それだけで大砲のようだ。
一直線にアイアンゴーレムの隙間を抜け、奥にいたウッドナイトゴーレムと、その後ろにいたウッドメイジを一発で貫通した。
「え、ブショウ?模擬戦なんだけど。確実に殺しにかかっているじゃん……」
自らブショウを追い込んでおいて、こうなることを予測していなかった剛志が思わずつぶやいた。冷静に考えれば、この数相手にとどめを刺さずに勝つなんてことは不可能なのは、わかってもいいと思うのだが……
そんな少し抜けた主のことは気にしていないブショウは、どんどんと目の前のゴーレムたちの数を削っていく。しかし、それでもそこまで多くの数を減らすことはできない。約10体ほど倒したところで、ついに戦闘のアイアンゴーレムがブショウに接触したのだ。
その瞬間、ブショウは今まで使用していなかった剣と斧、ハンマー、槍を縦横無尽に振り回し、真正面からアイアンゴーレムたちを迎え撃った。
強化されたブショウのステータスなら、正面から戦うことはできるが、それでもさすがに無謀だろう。そう考えていた剛志と臼杵だったが、思ったのとは異なる光景が目の前に広がった。
ただ武器を振り回しているように見えるブショウだったが、上手に攻撃が当たる瞬間に武器に適用させている効果を切り替えていた。
ハンマーには風の効果を付与して、衝撃を与える際に風圧の攻撃も追加で与え、より相手を吹き飛ばす。そんな感じで高速で効果を切り替えながら、一歩も引かずに、逆に前進すらしていくブショウ。その戦い方は、剛志たちが想像するブショウのキャラ設定にぴったりではあるが、いささか非効率的にも感じる。
「さすがブショウだぜ。あの数を物ともしてねえ。逆に押し込んですらいるぞ」
そう言って楽しそうな臼杵だったが、その一方で剛志は少し冷静になってしまった。
「う〜ん、でもこのままだとさすがに負けるよ。確かにブショウは強いけど、普通この戦力差だったらさすがに各個撃破にシフトしない? ちょっとキャラ付けをこだわりすぎたかも...」
その剛志の発言通り、数分後には多くの屍を築いたブショウだったが、体にガタが来てしまい、ゴーレムたちに飲み込まれる形で戦闘不能になった。
「う〜ん、まさかキャラ付けにこんな落とし穴があるなんて。これは要検討だね」
ゴーレムたちをしまい、ブショウに対してそう話しかける剛志。それに対し、ブショウは悔しそうに『無念……』とだけつぶやき、倒れてしまった。
そんなブショウをゴーレム再作成で治してあげた剛志は、今回の件も良い経験だと考え、次に生かすことにするのだった。
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