第153話 バトルゴーレム
剛志と臼杵、そしてイチロイドによるマジックアイテムを使用したゴーレムの構想会議は、まだ続いていた。
現在もイチロイドの分体がモンスタードームを建設中のため、時間はたっぷりある。
「ま、マジックバッグの話はとりあえず置いといて、今あるマジックアイテムは把握しておこうぜ。どんなのがあるんだ?」
臼杵の提案に、剛志は自分のマジックバッグを確認する。
なんとなく「これがマジックアイテムだ」という感覚は分かるので、とりあえず思いつく限りのものをすべて取り出してみた。
剛志の殲滅力によって集められたマジックアイテムの山。
その多くはポーション類だったが、それでも残っている数は相当なものだ。
膨大なマジックアイテムが剛志の目の前に次々と放出され、やがて山のように積み上がっていく――その光景は、なかなかに爽快だった。
「おいおい、これだけあるのに何も使ってなかったのかよ。よくもまあ、ここまで貯めたもんだな。」
目の前に広がるマジックアイテムの山を見て、半ばあきれたように言う臼杵。
これほどの数を一度に見ることなど、普通ならあり得ない。
「確かに、我ながら壮観だね。でもこの数を調べるとなると面倒だな……。とりあえずイチロイドにゴーレムを使って分類してもらおうか。よろしく、イチロイド。」
「『かしこまりました。』」
そう言って剛志は、数体のゴーレムを召喚し、イチロイドに分類を任せた。
――そして、分類が終わった結果がこちらだ。
【武器】
剣×13
槍×32
斧×2
ハンマー×5
弓×21
【防具】
盾×44
兜×12
胸当て×21
靴×22
ローブ×32
【装備品】
指輪×29
腕輪×27
ネックレス×9
【その他】×53
大まかではあるが、ざっとこのような分布になった。
それぞれの効果を細かく見ていくときりがないが、武器系は攻撃力や属性付与、防具系は各種耐性アップといった特徴が多い。
装備品はステータスの強化や特殊スキルの付与など、やや変わり種が多い。
一方「その他」と分類されたものは、身に着ける類ではなく、時計や通信機器のような別用途のアイテム群である。
たとえば、空気中の魔素を利用して動き続ける時計や、遠距離通信が可能なトランシーバーのようなものなどだ。
こうして整理してみて、剛志たちは一つの問題に気づいた。
――これだけ多種多様なアイテムを、すべてまとめて一体のゴーレムに組み込むのは、どう考えても無理がある。
「これ、冷静に考えてさ……。こんだけ種類あるのに、一種類のゴーレムで賄うのって無理じゃない?」
剛志のつぶやきも無理はない。
ざっくり分けただけでもこの数だ。
とはいえ、種類ごとに分けて作るにしても、今度はどれだけの数を作ればいいのか分からない。
マジックアイテムは、いくら剛志といえども無限に手に入るわけではない。
どうするべきか――二人は頭を抱えた。
そんな時、イチロイドが静かに口を開く。
「『まず、マジックアイテムを使用してゴーレムを作成する際、どのようなことが可能かを考えるのが良いかもしれません。
例えば、“複数のマジックアイテムを切り替えて使用できる”という能力にするなら、アイテム本来の効果をそのまま活かすことができます。
ただし、その場合は複数を同時に使いこなせる構造にしなければなりません。
別の案としては、マジックアイテムの“効果のみを抽出して利用する”という方法もあります。
この場合、今までの傾向からして、引き継げる効果はかなり弱まると思われます。
ですが、今後の成長余地を考慮するなら、私としては後者をおすすめします。』」
イチロイドの提案――それは、マジックアイテムの効果を一体のゴーレムに集約し、徐々に成長させていくという案だった。
当初の方向性には近いが、問題は“どうやって使いこなすか”にある。
弓のマジックアイテムには弓専用の効果が、剣には剣専用の効果が付与されている。
つまり、弓の効果を剣で発動させることはできない。
防具系の効果もまた、硬化して防御を上げるタイプと、柔軟化して衝撃を吸収するタイプなどがあり、同じ「防御」でも性質が異なる。
「イチロイドの案、俺もやってみたいけどさ……。剣系と弓系で全然違うじゃん。
そこをどうまとめるかが問題なんだよね。だって剣を持ちながら弓を構えるなんて、できないでしょ?」
そう言って剛志は、また振り出しに戻ったように天を仰いだ。
だが、その言葉に対するイチロイドの反応は意外なものだった。
「『なぜです? 剣を持ちながら弓を構えればよいのでは?』」
思いもよらぬ返答に、剛志と臼杵は一瞬フリーズしたのち、顔を見合わせて笑い出した。
「面白いね。イチロイドがジョークを言うなんて初めてじゃない? “会話が効率的じゃない”って言われて、さっそく成長したのかい? すごい成長速度だね。」
笑いながら感心する剛志。だが、イチロイドは不思議そうに首をかしげる。
「『申し訳ございません、マスター。まだそのアップデートは実装されておりません。
私が申しているのは、単純に剣を持ちながら弓を構えれば解決するのでは? ということです。』」
真剣なイチロイドの発言に、剛志も思わず吹き出しながら返す。
「何言ってるの? だって手は二本しかないから、剣を持ちながら弓を構えることはできないよ。
……少なくとも、もう一本腕が必要だよ。――ん? 腕がもう一本あればできるのか?
そうか……そうだよ、ゴーレムなんだし腕が何本あったっていいじゃないか! そういうことか、ありがとう!」
イチロイドの一言をきっかけに、剛志の頭の中で一気にひらめきが広がる。
その方針を基に、すぐさま新たなゴーレムの設計に取り掛かった。
一度道筋が見えると、あとは驚くほどスムーズだった。
剛志の手によって、急ピッチで完成した設計図がこちらである。
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【ゴーレム名】:バトルゴーレム
【説明】:戦闘に特化したゴーレム。マジックアイテムを吸収することで、その効果を取り込むことができる。取り込んだ効果は自身の魔石に登録され、魔石のセットされた部位で効果を発揮する。
【ステータス】
名前:―
種類:バトルゴーレム
スキル:【増加】・【成長】・チャンネル
レベル:0
HP:50/50
MP:50/50
攻撃力:50
防御力:50
器用:500
速さ:50
魔法攻撃力:50
魔法防御力:50
【必要器用値:3,000】
【消費MP:2,500】
【消費材料:トレントウッド×25、ブラックアイアン×20、魔石(MP3000)】
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スキルは特殊コアの【増加】【成長】、そして【チャンネル】の三種に絞り、現在の剛志の器用値でも作成可能な設計とした。
このゴーレムの特徴は、【増加】の効果でマジックアイテムを吸収し強化し、【成長】の効果でレベルを上げながら性能を高めていく点にある。
そして今回の肝となるのが【チャンネル】スキル。
これは“複数用途の効果をどうやって併用するか”という課題への答えでもあった。
チャンネルスキルによって、ゴーレムは内部に複数の“チャンネル”(マジックアイテムの効果を格納する枠)を生成できる。
それぞれのチャンネルに別々の効果を蓄積させ、戦闘中に切り替えることが可能なのだ。
つまり――
剣専用チャンネル、弓専用チャンネルをそれぞれ持ち、剣を使用している腕では剣スキル、弓を構えている腕では弓スキルを発動させる、といったことが可能になる。
結果として誕生したのは、まさに“キメラ”のような異形のゴーレム。
千手観音やヘカトンケイルを思わせるように多数の腕を持ち、それぞれが異なる武器を構えている。
剛志にとって「腕がたくさんある姿」をイメージするうえで、これらの存在が一番近かったのだ。
「こんな感じになったね。あとは実際にどう動かすかってとこだけど……それはもうイチロイドに任せるしかないね。
むしろ、戦闘特化の分体を作って、その個体で常時運用する形にしようか。」
「『お任せください。』」
こうして、マジックアイテムを糧に成長する新たなゴーレムの設計図が完成した。
あとは――どれほどの強さを誇るのか。
それは、実際に作ってみてのお楽しみといったところか。
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