第147話 モンスタードーム
いま剛志たちの目の前には、直径50mの円形状の空間に約20,000体の魔物がすし詰め状態になっている。
こういわれるとあまりイメージがつかないが、直径50mほどの円形空間は、面積にすれば中学校の体育館程度の広さだ。そこに2万体もの魔物が、まるで満員電車をさらに何十倍にも圧縮したように、押し合いながら詰め込まれているということだ。もう少し具体的に言うと、面積にすれば約2,000平方メートル。その中に2万体とは、1平方メートルあたり10体。つまり、一体がほぼ30センチ四方の隙間に押し込められている計算になる。
ここまでぎゅうぎゅうに詰められた要因としては、おおよそ半分の割合を占めるゾンビ系が地面の中で待機してくれたことにより、空間に少し余裕ができたからだ。そしてここまで言えば察しの良い人は気付くかもしれないが、すでにデコイたちが逃げ出す用の地下通路にもゾンビたちはあふれており、デコイは後半使い捨てになってしまった。
「ま、やってみないとわからないことってあるよな。それにこんな光景、普通じゃ見られないし、いい経験だね」
そう言って、開き直っている剛志にあきれる臼杵。しかし、本番はこれからだ。この大量の魔物たちを範囲魔法を使って一気に葬り去る必要がある。
その方法はすでに考えており、この建物の天井部が開くようになっており、またその縁には人が立つことのできる空間がぐるっと一周ある。そこにメイジ系統のゴーレムを配置して、集団魔法で一気に葬り去るという方法だ。
「じゃあ、さっそく仕上げといこうか。ここまで密集していてくれると倒しやすいしね。じゃあ、イチロイド、頼んだ」
「『かしこまりました』」
そう言ってイチロイドに指示を出した剛志は、このまま待機部屋にいると、もしかすると魔法の余波が来てしまうかもしれないと考え、一緒にメイジたちを配置する天井部分に移動する。
そして、剛志たちが移動し終わり、メイジたちの配置が完了したタイミングで、イチロイドはこの施設の天井部を開放した。
剛志たちの目の前で、徐々に開いていく天井。そしてその隙間から光が差し出すと、徐々に見えてくるのはぎゅうぎゅうに押し込まれた魔物たちの姿だ。そして向こうも剛志たちに気づいたのか、待機状態から戦闘モードに移行し、動きが活発になった。
そんないきなりうじゃうじゃ動き出す魔物たちに、どことなく大量の虫が入った瓶のようなイメージを連想してしまい、気分が悪くなる剛志。その横では臼杵もさすがに気味が悪いのか、かなりドン引きした様子で体をどこかしこ小さくしていた。
「うわぁ。さすがに目視で見るとグロいね。それに動き出したらなおさらだ」
「だから言ったんだ。これ本当に大丈夫なのかって!」
そう言って軽いパニックになっている臼杵。彼はこういう集合体みたいなのが苦手なのだろう。対する剛志は、普段からとんでもない量のゴーレムを操るゴーレムマスターだからか、臼杵よりは耐性がありそうだ。
まあ、この量の魔物は、見た目の気持ち悪さよりも、その危険性の方に本能的な恐れを抱くだろう方が正常だろうが。
そして、軽くパニックになっている臼杵をなだめるように、イチロイドが再度説明する。
「『設計上は、まったく問題ありません。向こうの攻撃方法も把握していますが、ここまでは届きませんので。ただ、不測の事態が起きることはあり得ると思うので、なるべく早く処理いたします』」
そう言って、さっそくメイジたちに命令をするイチロイド。彼の命令によって、目の前の開いた天井の外周にぐるっと展開されているメイジゴーレムたちが、集団魔法を発動する。
総勢約1000体のメイジたちによる集団魔法は、今回は風系統の魔法として発動された。建物に対する被害を最小限にしつつ、範囲攻撃に優れている風系統をチョイスしているイチロイドは、ちゃんとそのことも計算済みなのだろう。
そうして放たれた魔法は、魔物たちの中心に大きな竜巻を発生させ、魔物たちを飲み込み、鎌鼬のような風の斬撃で切り刻んでいく。大体30秒ほどで収まった集団魔法だったが、その一回でほぼ半数の魔物たちがドロップアイテムを落として倒されており、残っている魔物も多くは瀕死の状態だ。そこに容赦なく放たれた第二陣の魔法によって、大量にいた魔物の多くが消え去った。
一部生き残った者はいたが、それも虫の息のため、イチロイドが個別で操り、メイジたちの魔法が各個撃破していく。そうして大量にいた魔物たちは跡形もなく消え去った。
「おお、すごいな。さすがにレベルアップしたよ。それにこのレベル帯なのに一気に2つも上がった。これは効率がいいね!」
「お、おれも久しぶりにレベル上がってるな。まあ、効率がいいのは認めてやるよ。でもまだ慣れないけどな」
「『私もレベルが上がりました』」
今回の結果で皆のレベルが上がり、それによって皆ポジティブな感想を抱いていた。あれだけ怖がっていた臼杵ですら、少しうれしそうだ。
結果は良かったが、施設を見ると地面は掘り起こされており、ぐちゃぐちゃだった。一方、内壁はいくつか傷はあるが、まだまだ使えそうだ。この結果から、デコイゴーレムたちの逃げ道だけ考え直せば、まだまだ使えそうだというフィードバックも得られた。
「『マスター。今回の試運転ですが、結果としては上々かと。ただ、まだまだ改善の余地はありそうなので、そこはアップデートしていきたいと思います』」
「そうだね。それにこれの一番の利点が、俺たちがダンジョンにいないときも魔物たちを集めてくれるというところだから、これを作れる階層にはどんどん作っていきたいね。数があればあるだけ効率が上がるからさ」
「『はい、かしこまりました』」
悪くない結果に気分がよくなった剛志は、このプロジェクトを進めていくことを改めて宣言した。臼杵も、実際にレベルが上がったという実体験がよかったのか、今回は反対意見を出さなかった。
「いつまでも“この施設”とかって言うのは言いづらいね。何か名前を付けようか。せっかくだから臼杵、名付けてみる?」
急に無茶ぶりをされて、驚いた臼杵。驚きつつも、何度か名前を絞り出す。
「おいおい、急だな。そんなこといきなり言われても難しいって。まあ、せっかくだから考えてみるか。……やっぱり分かりやすさが一番だよな。よし、決めた。『モンスタードーム』ってのはどうだ?魔物ってモンスターのことだし、なんだかこの建物自体が魔物たちを飲み込むモンスターって感じがしたんだよな」
臼杵の説明を受けて、『モンスタードーム』という名前を頭の中で反芻する剛志。
「うん、いいね。分かりやすいし、言ってる意味も分かる。まあ、今回は臼杵にお願いしたわけだから、あまりにひどい名前じゃなかったらそれにするつもりだったよ。この建物は『モンスタードーム』って名前にしよう!」
そうして、この施設の名前は『モンスタードーム』ということに決まった。今回の件でいくつか改善点が見つかったモンスタードームだが、これから剛志たちのレベル上げに大きく貢献してくれるだろうことは言うまでもない。
そうして、モンスタードームの試運転は一応の成功ということで決着がついたのだった。
現時点での剛志たちのステータス
名前:岩井剛志
職業:ゴーレムマスター
パーティメンバー:臼杵健司・宮本万葉・宮本百花
スキル:所持制限無視・多重思考・二重詠唱・自動記録・高速展開・自動防御補助・全属性耐性・不屈の心
職業スキル:ゴーレム作成・ゴーレム再作成・支援魔法【ゴーレム】・ゴーレム強化・ゴーレム異空庫・ゴーレム償還・ゴーレムカスタマイズ・特殊ゴーレムコア作成・ゴーレムアップデート・高速召喚
レベル:421(9up)
HP:2,621/2,621(68up)
MP:7,601/7,601(189up)
攻撃力:1,500(37up)
防御力:2,945(77up)
器用:3,479(99up)(+121%)
速さ:3,152(81up)
魔法攻撃力:4,538(113up)
魔法防御力:5,357(134up)
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所持ゴーレム数 (省略)
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臼杵健司
パーティメンバー:岩井剛志・宮本万葉・宮本百花
職業:魔導士
スキル:雪魔法・怜耐性・視界良好・気配遮断
職業スキル:全属性魔法・支援魔法・MPバリア・MP自動回復・魔力暴走
レベル:911(1up)
HP:4,757/4,757(3up)
MP:17,178/17,178(25up)
攻撃力:1,948(3up)
防御力:1,995(3up)
器用:3,216(4up)
速さ:2,014(3up)
魔法攻撃力:21,128(28up)
魔法防御力:19,989(22up)
名前:イチロイド
種類:マザーゴーレム
スキル:
【増加】・【成長】・並列思考・思考加速・解析眼・自動記録・情報整理・思念伝達・情報共有・意識連結・模倣・シミュレーション思考・自動修復・再生・構造把握・魔力循環・魔力吸収・持久・分体生成・遠隔操作・形状記憶・自立思考・インベントリ
レベル:63(43up)
HP:1,567/1,567(360up)
MP:7,882/7,882(560up)
攻撃力:478(240up)
防御力:3,130(400up)
器用:13,260(800up)
速さ:7,319(520up)
魔法攻撃力:1,830(400up)
魔法防御力:5,256(480up)
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