第144話 効率的?ダンジョン探索
イチロイドが提案してきた効率のいい方法、それはとてもシンプルかつ大それた提案だった。
「『マスター、私が提案するのは現在のモニターで確認するやり方ではなく、実際に目の前で確認していただく方法になります』」
「ん? それだと、効率悪くなっちゃわない?」
「『いえ、私の考えでは効率は良くなると思います。この方法は条件がそろっていないと意味がないですが、この階層では十分可能かと』」
そんなやり取りから始まった、イチロイドからの提案を聞いた剛志の心境は、まさに目から鱗だった。
そのやり方は次の方法だ。
まず、ゴーレムたちをフロア内にばらけさせ、魔物を探してもらう。ここまでは同じだ。しかしこの次が変わっており、見つけた魔物をその場で倒すのではなく、うまく誘導して一か所に集めるという方法だった。
この方法に必要な条件はいくつかある。まずは魔物から逃げつつ、その魔物たちをおびき寄せることができるゴーレムの存在。次に、集めた魔物たちを閉じ込めておく施設や場所の存在。最後に、集まった魔物を一気に殲滅するだけの殲滅力だ。
そして、これらすべてがイチロイドの計算では可能だと出ており、この方法を取るのであれば剛志はいちいちモニターを見る必要がなくなるのだ。さらに魔物と戦うのもまとめて行えるため、アイテム回収などにも時間がかからなくなり、時短になるのだ。
そして、これが一番大きなポイントなのだが、この方法ではイチロイドがあらかじめ魔物たちを集めておくだけで、剛志は後からくればいい。つまり、ダンジョンに入っていないときも魔物を集めることができるということだ。
聞けば聞くほど、「そんなことができるならぜひともやりたい」と思い出す剛志。そもそもゲームとかだと、こういったある意味効率のみを考えた方法というものはたくさん検証されてネットに出回っている。しかし、ダンジョン探索でこんな方法を行おうという人は今までいなかっただろう。
単純にできなかったという部分もあるかもしれないが、それよりも大きいのが「考えもしない」という部分だろう。
通常、魔物と戦う行為は命の危険と隣り合わせであり、その魔物を集めるという危険行為を行おうという考え自体が探索者にはないのだ。その点、剛志はこの前死にかけたのを除いて、魔物の危険性に対してはあまり感じてこなかったし、イチロイドに至ってはゴーレムだ。
そんな普通の感性と異なる異常な二人だからこそ、思いつき前向きに検討しているといっても過言ではない。
現に、この内容で盛り上がっている剛志とイチロイドの話を聞いた臼杵は、普通に引いていた。
「おいおい、剛志。お前、魔物を集めるってかなりの危険行動だぞ。普通、思いついても実行しようとはならないだろ」
「でも、臼杵も可能だとは思うでしょ?」
「『私の計算上は可能です。それにこの方法だと、今までの効率の325%まで効率を上げられる計算です』」
「ほら、イチロイドもこう言っているし。三倍だよ?」
そう剛志とイチロイドにセールスをかけられる臼杵。実際にこの方法は剛志だからできるもので、臼杵がやれることは最後の殲滅以外に何もないので、あまり否定しても意味はないのだが、なんだか良くない気がしてしまう臼杵。
これは、今まで命がけでダンジョンを攻略してきた者と、ゴーレム任せで攻略してきた少し頭のネジが外れている者との違いが原因だろう。臼杵の考えが一般的であることは間違いない。
しかし、何かに秀でるためには普通のやり方ではいけないというのも確かだし、臼杵自身トップクラスの探索者になるにあたって、いくつも普通ではないことをやり遂げてきているため、気持ちが反対しても頭では正しいとわかっている。
そのため、苦言を呈していたが、最終的には剛志たちの意見に賛成することになった。
しかし、だからと言ってすぐにこの方法を試すというわけにはいかなかった。それは、まだ必要なゴーレムが作成できていないということと、壁作成を行っているカーペンターゴーレムたちを使って魔物の殲滅場所を作るのがいいという結論に至ったからだ。
もうすぐ壁作成の業務が終わるということもあり、それまでは方法を模索しつつ準備をするのが、臼杵をはじめイチロイドの意見であり、剛志もかなり乗り気だったのだが、安全策は取っておくべきだということで、あと一週間は準備期間に当てようということになった。
それからの一週間は、基本的にはレベル上げをしながら「どういった施設を作るのか」「材料はどうするか」などを話し合った。そして準備を進めながらも、必要なゴーレムの設計図を一体作成した。
【ゴーレム名】:デコイゴーレム
【説明】:魔物に接近し、ヘイトを集めおびき寄せるゴーレム。素早さと身のこなしを兼ね備えており、目的地まで魔物を誘導する。
【ステータス】
名前:
種類:デコイゴーレム
スキル:挑発・立体駆動・騒音
レベル:0
HP:200/200
MP:100/100
攻撃力:10
防御力:800
器用:1,000
速さ:3,300
魔法攻撃力:10
魔法防御力:900
【必要器用値:3,000】
【消費MP:2,200】
【消費材料:トレントウッド×25】
このゴーレムは、見た目は普通のトレントウッドゴーレムのような見た目をしているが、身のこなしが軽やかで、敵に近づき「挑発」のスキルと「騒音」のスキルで広範囲の敵からヘイトを集め、魔物を誘導することができる。
また、実際に作るまでは至っていないが、イチロイドにどのような施設が必要かなどを考えてもらい、それに必要な材料を集めることで時間をつぶした。
その間、万葉と百花の両名にも一度会っており、剛志のゴーレムをサポート用に貸し出し、イチロイドも分体を作成してついていった。その時この話を万葉にもしたところ、おおむね臼杵のファーストリアクションと変わらなかったが、この方法なら百花のレベル上げもはかどるということを伝えると、かなり乗り気になってくれた。
肝心の百花だが、まだレベルを上げられてはいない。しかしステータスとジョブはすでに獲得しており、今後の未来に向けて進みだしたところだ。今まで長い間、病院のベッドの上で寝たきりだったので、病気とはまた別に体力もないためステータスもかなり低かったが、それはこれからの頑張り次第でなんとでもなるだろう。
そうしてついに壁作成が終わり、カーペンターゴーレムたちを自由に動かせるようになった。
これから、実際にイチロイドのやり方でレベル上げ等を行うべく、我が家のような安心感のあるホーム――横浜第三ダンジョンに潜るのだった。
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