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ゴーレムの可能性は無限大 〜副業で探索者になったら職業とスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜  作者: 伝説の孫の手
剛志強化プロジェクト

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第138話 【実地試験】その①

ついにイチロイドの実践投入を行うときが来た。これまでさまざまな情報を詰め込み、その都度学習を重ねてきたイチロイドは、かなり賢くなっていた。


おさらいすると、東雲教授から教えてもらった人工知能ゴーレム作成の6ステップは、

【学習させたい分野を決める】

【データを集める】

【脳となるゴーレムを構築する】

【学習フェーズ】

【判断基準の固定】

【実地試験】

の6つだ。現在はこの【判断基準の固定】まで進んでいる。


この【判断基準の固定】の設定が難しかった。今回はすべての機能を網羅する人工知能ゴーレムを作成する予定のため、「剛志の命を最優先にする」という考えと、「敵の殲滅を最優先にする」という考えの間に矛盾が生じてしまう。そのすみ分けが困難だったのだ。


結局のところ、その解決策は見つかっておらず、現状は「剛志の命令に絶対服従する」というあいまいな判定基準のみが固定されつつある状態だ。


まあ、その話は今回はあまり関係ないので置いておくとして――今回は6ステップの最終段階である【実地試験】を行うことになっている。


意気揚々と、勝手知ったる横浜第三ダンジョンの50階層付近へ移動しようとした剛志たちだったが、ある問題が立ちはだかった。東雲教授が「跳べない」のだ。


ダンジョンには10階層ごとに転移陣が存在し、その前の階層をクリアしている者は、転移陣まで一気に移動できる仕様となっている。しかし東雲教授は、このダンジョンを探索したことがなかった。


「あちゃ~、それは考えてなかったね。どうしよう?」


そう言って頭をひねる剛志。今のような浅い階層では、敵のレベルも低く、イチロイドに活躍してもらいたい条件を満たしていないのだ。


そんな剛志に助け舟を出したのは、臼杵だった。


「まあ、今回は移動だけでもいいんじゃないか? それもイチロイドにとっては初めての経験だろうし、逆にいい訓練になるかもしれないしさ」


「なるほどね。確かに臼杵の言うことももっともだ。せっかくだから、今回はイチロイドに地下50階まで最速で行けるように頑張ってもらおうか。イチロイド、頼む」


「『かしこまりました。では最短ルートを計算いたします。それとマスター、今回の移動に必要なゴーレムを伝えますので、召喚をお願いできますか?』」


「了解」


そう言って、剛志はイチロイドに言われるままにゴーレムを召喚し、そのゴーレムたちにイチロイドの指示に従うよう命じた。


イチロイドが指定したのは、ヘキサボード型のゴーレムだった。これは宙に浮く板型のゴーレムで、移動手段としてはぴったりだ。


「『では、出発します』」


そう言ってイチロイドは複数のヘキサボードを操り、スムーズな動きで剛志たちを運び始めた。


本人が気に入っているのか、普段からミニサンドゴーレムの姿で動くイチロイドは、今もなおその姿のまま、剛志の腰元にくっつきながら、絶え間なく指示を出し続けている。


これまでの移動ルートは、経験データの共有によってある程度インプットされていたようで、50階層までの行き方を理解しているイチロイドは、時に通ったことのないルートも周辺の地形情報などからつなぎ、上空を飛びながら障害物を避けつつ、階段から階段へと一直線に進んでいく。


「おいおい、マジかよ。これができるだけで、実験はほぼ成功なんじゃねえの?」


「確かに、これはかなり便利ね」


臼杵と万葉がイチロイドのあまりの有能さに驚いている中、東雲教授は興奮気味にぶつぶつとつぶやいている。


「……なるほど。この一週間で教えていない部分の知識もしっかり備わっているな。これはベースとなった一郎の記憶なのだろうか? それともマスター・岩井剛志君の脳内をスキャンしたためなのか……初めての事例が多すぎて、逆に研究に取り組めない状態だね」


そんなこんなで、剛志たちはヘキサボードに乗っているだけで、あっという間に地下10階層前のボス部屋に到着した。所要時間は30分程度。文句なしの最速記録だ。


「あんなに上空を飛んでいたら、この階層までの敵は問題ないね」


「『はい、そう判断いたしました。また、今後上空で敵が襲ってきた場合は、私が対処いたします』」


そう言って、力こぶを見せるようなポーズをとるイチロイド。その動きは、ベースとなった一郎の仕草にそっくりだった。


しかしこのかわいらしい見た目とは裏腹に、今のイチロイドは【増加】【成長】の特殊ゴーレムコアの影響で、学習のために人工知能ゴーレムたちを吸収することで経験値が入り、すでにレベルが数段階上がっている。


さらに、イチロイド作成時に、一郎のゴーレムコアが設計図に組み込まれたことで、ステータスやスキルにも若干の変化が生じている。


そんなイチロイドの現在のステータスがこちらだ。


【ステータス】

名前:イチロイド

種類:マザーゴーレム

スキル:

【増加】・【成長】・並列思考・思考加速・解析眼・自動記録・情報整理・思念伝達・情報共有・意識連結・模倣・シミュレーション思考・自動修復・再生・構造把握・魔力循環・魔力吸収・持久・分体生成・遠隔操作・形状記憶・自立思考・インベントリ


レベル:23(23up)

HP:1,207/1,207(207up)

MP:7,322/7,322(322up)

攻撃力:238(138up)

防御力:2,730(230up)

器用:12,460(460up)

速さ:6,799(299up)

魔法攻撃力:1,430(230up)

魔法防御力:4,776(276up)



これまでのゴーレムは【ゴーレム強化】を使ってもレベル10を超えることがなかったため、今回のイチロイドのようにレベル23のゴーレムは初めてだ。もっとも、これはイチロイドが特別というわけではなく、【成長】の特殊コアを付与すればどのゴーレムでも同様に育成可能な仕様ではある。


それでも、剛志にとっては「ゴーレムを成長させること」自体が楽しくなってきているようだった。


また、当初の設計図に比べてイチロイドが保有するスキル数も増えている。具体的には【形状記憶】【自立思考】【インベントリ】の3つが追加されている。


【形状記憶】は、記憶したゴーレムの形状に自在に変形できるスキルで、今イチロイドがミニサンドゴーレムの姿をとっているのも、このスキルによるものだ。理論上、すべてのゴーレムの姿に変形できるという、極めて高性能なスキルである。


【自立思考】は、その名のとおり、自立した思考能力を可能にするスキル。これについては東雲教授も「世界初のスキル」だと見立てており、イチロイドが獲得した思考能力を、システム側が“スキル”として後付けで表示しているのではないかと分析していた。


剛志は詳しい理屈こそ理解できていないが、これまでの驚きに慣れてしまっていたため「なるほどね」くらいの感想で済ませていた。


なお、教授の考察では「生き物は本来、思考能力を持っているため、それをスキルとして再現する必要がなかった。だから存在しなかったスキルなのだろう」とのこと。今回、無機物であるゴーレムが例外的に思考能力を得たことで、それが“スキル”として現れたというわけだ。


さらにもうひとつ、【インベントリ】のスキルは、レベル10に到達した際に解放された。これはゲームプレイヤーにはおなじみの、収納用の別空間を作り出せるスキルで、いわばマジックバッグ要らずの便利スキル。現在このインベントリ内には、さまざまな素材が保管されており、それらを使ってイチロイドはいつでも別のゴーレム形態に変化できるようになっている。


こうして振り返ってみても、イチロイドは単体でも十分に強力な戦力となり得る。しかし、彼の真価はそこではない。


イチロイドが真に輝くのは――剛志の代わりに指示を出せる存在である、という点だ。


今はまだ未熟かもしれない。それでも、ここから【実地試験】を通して、その指揮機能をさらに磨いていきたいと剛志は考えている。


そんな思いを胸に、剛志はイチロイドに次の指示を出した。


「イチロイド、一旦次は戦闘を経験してもらうよ。このボス部屋を、イチロイドの指揮で戦ってみてくれ。ただし地下9階層のボスは、今のイチロイドや強力なゴーレムを使えば圧勝してしまう。今回はあくまで“経験を積む”のが目的だから、そこは制限を加えさせてくれ」


「『かしこまりました』」


――次は、イチロイドによる戦闘指揮のお手並み拝見といこうか。


そう意気込みながら、剛志は地下9階層のボス部屋への準備を進めるのだった。


本作品を楽しんで頂きありがとうございます。

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