第136話 大成功?
「今回作るゴーレムが、俺が作る最高傑作になるってわけだよな。それなのになぜ引っ掛かっているんだ。もしかして、こいつを最高傑作にするのが嫌だとか?あれ、そうなると……なるほど!そういうことか!じゃあ、こうしたらどうだ……おお!めっちゃいいじゃん!」
そんな独り言をつぶやいて、何らかの正解を導き出した剛志。剛志自身は納得がいく結果になったようだが、それを見ていた周りの面々は置いてけぼりだ。
そこで臼杵が剛志に対し、何が起こったのか確かめた。
「おいおい、剛志。お前、自分一人で解決してないで俺らにも共有してくれよ。さすがにここまで一緒に考えているんだから、どんな結果になったかは知る権利があるだろ?」
「ああ、ごめんよ。ちょっと思いつきで動いちゃって、そのあとに伝えようと思ってはいたんだけどね。そもそも何が違和感だったのかから伝えると、俺の最高傑作を作るうえでこんなにとんとん拍子に進んでいいのかって感じちゃったんだよね。どこか寂しいような、そんな感情的な部分さ。」
そう剛志が少し恥ずかしそうに言う。それを聞いて臼杵は、よくわからないと思った。
「寂しい?ちょっとどういうわけかわかんないな。ゴーレムを作るうえで寂しいもへったくれもないだろ」
そういう臼杵。これは何も彼が冷たい人間というわけではなく、ごくごく一般的な感覚だ。そもそも一般的にゴーレムを作る行為は、ダンジョン探索におけるただの手段であり、そこには感情が入るようなものではない。
しかし剛志にとっては違った。今まで苦楽を共にしてきたゴーレムたちは彼の仲間であり、家族みたいなものだったのだ。それは剛志の作るゴーレムが感情豊かなリアクションをとることから、彼の認識がそういうものだということがうかがえる。同じゴーレムでも東雲教授が作るものは感情のないロボットのような動きをすることからも、その違いは一目瞭然だ。
そして、このスキルに対する認識という部分が、東雲教授が剛志たちに伝えたスキル発動の原理につながる。なので剛志にとって、このどこか寂しいと感じる部分を無視してしまうと、できるゴーレムの性能もそこそこまでしか上がらないのだ。
そんな剛志の心持ちを理解した東雲教授が、よくわかっていない臼杵に対して説明してくれた。
「なるほどな。岩井剛志君はゴーレムに対して自分の道具ではなく、仲間という認識を持っているのだったな。そうなると、その寂しいという違和感は無視してはいけないな。臼杵健司君、以前も教えたようにスキルというものは使用者のイメージを再現するものなのだ。だから岩井剛志君が違和感を感じるというのなら、その部分は解決しないと、スキルの威力が弱まってしまうということもあり得るのだよ。で、結局のところどうなったんだい?」
東雲教授の説明で納得した臼杵と、横で話を黙って聞いていた万葉、そして今剛志に尋ねた東雲教授。その三人の視線が剛志を見つめる中、剛志はどう解決したのかを踏まえて説明をする。
「これから先ずっと一緒に歩んでいく、そうなる予定のマザーゴーレムに対して何かできないかと思った俺は、今回を新たな門出だと捉えたんだ。そうしたときに、俺の最初の門出を共に歩んだ一郎の存在が浮かんだんだよ。今でこそ何千ってゴーレムを動かしているけど、初めは一郎一体だったんだって。まぁすぐに数が増えていったから一体だけの期間はほんの少しだったけどね。で、何が言いたいかというと、それでも一番長く一緒に戦ってきたのは一郎だったってところなんだ。だからせっかくなら、マザーゴーレムには一郎になってほしいと思ったんだよ。」
そう皆に独自の観点を伝える剛志。今はゴーレムたちに番号はつけているが、その実運用は複数体のグループごとの運用が主になってきている。そのため初めのように一郎、二郎、三郎のように各個体を認識することは少なくなってきていた。
まあ、ここまで数が増えれば仕方のない部分があるだろうが、ゴーレムを道具ではなく仲間ととらえる剛志にとって、その現状がどこか寂しいとも感じていたのだ。
ゴーレムに意思はないため、ただの剛志の自己満ではあるものの、この寂しいという感情も剛志のイメージによるものなので、それを解決できる方法があるのであれば、それが最も良い形になるというわけだ。
しかし、剛志の解決策を聞いてもよくわからない部分が出てきた臼杵が、質問をする。
「剛志、お前の気持ちはわかったんだが、一郎にマザーゴーレムになってもらうって、具体的にどういうことだ?」
「あ、そうだね。ごめんごめん、そこの説明ができてなかったね。一郎のゴーレムコアを材料に入れるんだよ。ゴーレムってのは元々コアが本体で、コアを流用することでそのゴーレムに蓄えた経験なんかを引き継ぐことができるんだ。だから初めミニサンドゴーレムだった一郎は、今ではブラックアイアンゴーレムになっているんだ。で、さっそく設計図の材料のところを一郎のコアにしたところ、東雲教授が言っていたみたいにイメージがうまくいったからなのか、ステータス自体もかなり伸びたんだよ」
そういって、少し興奮気味に新しくなったマザーゴーレムの設計図を見せてくる剛志。その設計図がこれだ。
【ゴーレム名】:マザーゴーレム
【説明】:ゴーレムコアのみのゴーレムで、他の人工知能ゴーレムを吸収し成長する。また、自身の分機を作成し、その分機を操ることで、そこで得た経験をもとに成長を重ねていく人工知能ゴーレムの本体。ベースに多くの経験を経たゴーレムコアを使用している。
【ステータス】
名前:一郎
種類:マザーゴーレム
スキル:
【増加】・【成長】・並列思考・思考加速・解析眼・自動記録・情報整理・思念伝達・情報共有・意識連結・模倣・シミュレーション思考・自動修復・再生・構造把握・魔力循環・魔力吸収・持久・分体生成・遠隔操作
レベル:0
HP:1000/1000
MP:7000/7000
攻撃力:100
防御力:2500
器用:12000
速さ:6500
魔法攻撃力:1200
魔法防御力:4500
【必要器用値:33,000】
【消費MP:55,000】
【消費材料】:特殊ゴーレムコア【増加】【成長】、魔石【MP55,000相当】、多くの経験を経たゴーレムコア
ここで言う「多くの経験を経たゴーレムコア」が、今回で言うと一郎になる。
また、各種ステータスを見てもらうと、そのすべてが大幅に上がっている。これが東雲教授が言っていた「使用者のイメージに合ったスキルの使用」の効果なのだろうか。まあ必要器用値は据え置きのものの、消費MPと魔石の消費量も増加してしまっているが……
「おいおい、さっきまでと全然違うじゃねえかよ!イメージに合うだけでこんなに変わるものなのか?」
あまりの変動に驚く臼杵。そんな臼杵に同調するように万葉も話し出す。
「一郎のステータスが加算されたと仮定しても、上がりすぎているわね。何か特別なことでもあるのかしら」
「確かに面白い結果だね。この差分は後で研究資料として記録させてくれ。それにしても、ここまで強力になったのなら、さぞかし有能なマザーゴーレムが生まれるんじゃないか?」
東雲教授までもが、剛志の作るマザーゴーレムに期待を寄せている。
ここまで状況が整った。あとは実際に作るだけだ。作成のための膨大な材料たちも、剛志のマジックバッグの中の在庫で何とか賄える。あとはこの設計図をもとにゴーレムクリエイトでゴーレムを作るだけだ。
準備が整い、あとは作るだけという剛志だが、さすがにここまでのゴーレムを作成するのは少し緊張する。そのため、生唾を飲み込んだ。
そんな剛志の緊張を和らげるように、臼杵たちが話しかける。
「ここまで来たんだ、失敗はしねぇよ。お前ならできる」
「バーサーカーの時間、10分間よ。戦闘では少し心許ないかもだけど、今回の作業には十分すぎるわ。大丈夫」
「スキルの発動は、基本失敗はない。どんな形でも必ず発動する。それに今回は岩井剛志君のイメージに合ったスキル発動だ。今までよりも簡単なはずだよ」
皆に励まされ、緊張は解けないものの、覚悟は決まった剛志。皆の視線が集まる中、ゴーレム作成を進める。
まずは、マジックバッグから必要な材料を取り出し、魔石変換機も出す。そのあとゴーレム異空庫から一郎を呼び出し、そのゴーレムコアを取り出す。
ゴーレムコアを抜き取られた一郎はその体を崩し、今は剛志の手の中にあるコアだけの存在になる。ここまで来たら、あとは作業を進めるだけだ。
一郎を持っている手と反対の手で持っていたバーサーカーのスキルオーブを使用し、10分間ステータスが10倍になる剛志。そのままゴーレムクリエイトで作成していた設計図をもとに、ゴーレムを作成する。
「【ゴーレムクリエイト:マザーゴーレム】!」
魔石変換機を介して不足分のMPが魔石を変換し補填され、追加で必要な魔石も光となって剛志の手に集まる。そして【増加】【成長】のゴーレムコアも同様に、剛志の手の中にある一郎のゴーレムコアを包むように光となり渦巻く。
そしてその渦に一郎のゴーレムコアが溶けるように混じっていき、渦が段々と一つの塊になるように一点に集まっていく。
そして剛志の手のひらの少し上で一つの球にまとまった光の塊は、一瞬強く光ったかと思った次の瞬間には、剛志の手の中にゴーレムコアとして転がっていた。
いつもよく見るゴーレムコアとの見た目の差がないため、これで成功したのかどうか不安になった剛志は、「成功か?」とフラグのような発言をした。次の瞬間、剛志の手の上にあったゴーレムコアが光りだし、周囲の砂を集めてミニサンドゴーレムの姿になってしまった。
「うぉ⁉ どういうこと?」
いきなりのことで驚いた剛志が大きな声を上げると、ミニサンドゴーレムの姿になったマザーゴーレムの一郎が、剛志たちに向かって話しかけてきた。
「『すみません。状況がよくわからないのですが、どういうことでしょうか?』」
あまりの出来事に、状況が分からないのはこっちの方だよというツッコミすら出てこない。4人は、目の前で首をかしげるミニサンドゴーレムの姿をした“何か”を見ながら、しばらくフリーズしてしまうのだった。
本作品を楽しんで頂きありがとうございます。
ブックマークや評価、感想、リアクションなどをしていただけますと幸いです。




