第135話 マザーゴーレム作成
組合から☆5のバーサーカーの使い捨てスキルオーブを一個だけ用立ててもらった剛志は、もらったスキルオーブをマジックバッグに一旦しまい、研究所に戻ってきていた。
研究所に戻ると、今もまだ学習を続けている人工知能ゴーレムと、その周りに座って作業をしている東雲教授がいた。
東雲教授が戻ってきたことに気づいた剛志は、今考えているマザーゴーレムの計画を東雲教授に伝えた。
「なるほどね。思いつき発進とはいえ、かなりいいアイデアだと思うよ。ただスキルオーブが一個しかないことを考えると、今回は失敗できないね。だから“とりあえず”でやってみることはできなくなると思う。だとするなら、私としても今考えられるすべての案を出すことにしようか」
そう言って、パソコンを開きカタカタと作業を始めてしまった。
東雲教授が言っていることは、剛志たちもここに戻ってくる道中に話し合っていた。
今回剛志のアイデアで☆5のバーサーカーの使い捨てスキルオーブを使用して、一時的にステータスを強化し、強力なゴーレムを作成してしまおうという作戦はかなりいい。しかし、その回数が一回しかないというのが、今までの剛志のトライアンドエラーのスタイルからは逸脱しているのだ。
そのため今回は、慎重に今できることをすべて考えたうえで、今考えうるすべてを出し切る必要があるということだ。
幸いにも、今回作る予定のマザーゴーレムは、元々それ自体を何個も作るということは想定していないものだったので、その部分は問題ない。あとは、しっかりと必要なものを出し切り、すべて組み込めるかどうかにかかっているというわけだ。
そこで剛志、臼杵、万葉の三名も、各々考えられる要素を出し合い、そこに東雲教授の頭脳も追加する形で、今理想とするマザーゴーレムの完成図を組み立てる。
そうして出来上がったマザーゴーレムに必要な要素をまとめると、次のようになった。
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**強固な基盤コア**
・必要スキル:【増加】【成長】
・関連ステータス:耐久力・魔法防御力
・解説:膨大なデータ処理に耐える安定した器を作るには、耐久力と魔法防御の高さが求められる。
**魔導演算回路**
・必要スキル:【並列思考】【思考加速】【解析眼】
・関連ステータス:器用
・解説:人工知能の計算や学習を担う部分であり、思考系スキルと高い知力が不可欠。
**大規模な記憶領域**
・必要スキル:【自動記録】【情報整理】
・関連ステータス:器用
・解説:戦闘記録や探索データを蓄積するため、情報を正確に記録し整理する能力が求められる。
**通信・同期機能**
・必要スキル:【思念伝達】【情報共有】【意識連結】
・関連ステータス:器用・速さ
・解説:ゴーレム同士や探索者との情報交換を行うために必要。速さは回線速度、器用は送受信精度に関与する。
**学習データの供給源**
・必要スキル:【模倣】【シミュレーション思考】
・関連ステータス:器用
・解説:得た情報を模倣し、仮想的に繰り返すことで効率的に経験値を積ませる。
**自己修復・再構築機能**
・必要スキル:【自動修復】【再生】【構造把握】
・関連ステータス:耐久力・器用
・解説:長期運用を支えるため、自動的に破損を直し、回路を再構築する能力が必要となる。
**エネルギー供給機構**
・必要スキル:【魔力循環】【魔力吸収】【持久】
・関連ステータス:MP・耐久力
・解説:演算に必要な魔力を絶えず供給するための仕組み。MP量と循環効率が重要となる。
**分機作成・運用機能**
・必要スキル:【分体生成】【情報共有】【遠隔操作】
・関連ステータス:器用・速さ
・解説:マザーゴーレムは自身の一部を分機として生成し、外部に展開して行動させる能力を持つ。これにより一度に多方面での作業・戦闘が可能となる。分機は独立して行動しつつ、母体との通信・同期を通じて経験を共有し、学習効率を飛躍的に高める。
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各目的に沿って、どんなスキルが必要か、はたまたどんなステータスの値が重要かをまとめている。今回は失敗するわけにはいかないため、かなり真剣に詰めた結果だ。
「よし、これで一通りマザーゴーレムに必要な要素はそろっただろう。では、どうする。もう作ってしまうか?」
そう剛志に尋ねた東雲教授は、一仕事を終え、あとは結果を待つだけといった表情だ。
剛志はどこか物足りないという気持ちになったのだが、それでも何か答えがあるわけではないため、気のせいだと思い忘れることにした。
そうしてゴーレムクリエイトを起動し、マザーゴーレムの設計図を作成する剛志。必要なスキルとステータスのバランスを考え、出来上がった設計図がこちらだ。
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【ゴーレム名】:マザーゴーレム
【説明】:ゴーレムコアのみのゴーレムで、他の人工知能ゴーレムを吸収し成長する。また、自身の分機を作成し、その分機を操ることで、そこで得た経験をもとに成長を重ねていく人工知能ゴーレムの本体。
【ステータス】
名前:
種類:マザーゴーレム
スキル:
【増加】・【成長】・並列思考・思考加速・解析眼・自動記録・情報整理・思念伝達・情報共有・意識連結・模倣・シミュレーション思考・自動修復・再生・構造把握・魔力循環・魔力吸収・持久・分体生成・情報共有・遠隔操作
レベル:0
HP:100/100
MP:5000/5000
攻撃力:0
防御力:1500
器用:8000
速さ:3500
魔法攻撃力:800
魔法防御力:2500
【必要器用値:33,000】
【消費MP:15,000】
【消費材料:特殊ゴーレムコア【増加】【成長】、魔石【MP15,000相当】】
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必要器用値は今の剛志の約10倍の33,000にも上る。そこまで上げることで、ここまでのスペックのゴーレムを作ることができるということのようだ。
作成した自身の設計図を見直し、問題がないか確認する剛志。何度も見返すが、特に問題はなさそうだ。しかし、何か重要なピースが足りない。そんな気がしてならなかった。
剛志のそんな気持ちなど露知らず、隣から設計図をのぞき込んだ臼杵が声を上げた。
「おお!めっちゃいいじゃんか!これだけそろってたら、かなり強いやつができるんじゃないか?」
「ん?あ、そうだね」
そう言う臼杵に対し、剛志の反応は少し弱い。そんな剛志のことを心配に思った万葉が、理由を尋ねた。
「剛志、なんだか納得がいっていないようだけど、気になる点でもあるの?」
「ん?別にそういうわけじゃないんだけど、なんだか何かが足りない気がして……でも何が足りないのかわかんないんだよね」
そう言って、まだ悩む剛志。それを見た東雲教授が剛志に一つアドバイスをした。
「岩井剛志君。君のその直感は往々にして正しい。スキルというのは術者のイメージが大事だということは伝えているね。では、そのイメージに対して違和感を感じている状態では、そのスキルを使用するのは避けたほうがいいのだよ。まずはじっくり考えて、君なりの答えを導き出すことのほうが大事だ」
そう言って、剛志のことを待ってくれるようだ。その後も剛志は、この違和感が何なのか、見当もついていない中でその正体を探ることにした。
「何が気になっているんだ……これが完成形にするわけなんだし、これ以上のものはないだろう。でも、なんでこんな気持ちになるのかがわからない。なぜだろう」
そうしてしばらく悩んだところで、剛志は一つの可能性を導き出す。
「今回作るゴーレムが、俺が作る最高傑作になるってわけだよな。それなのになぜ引っ掛かっているんだ。もしかして、こいつを最高傑作にするのが嫌だとか?あれ、そうなると……なるほど!そういうことか!じゃあ、こうしたらどうだ……おお!めっちゃいいじゃん!」
そうして剛志は悩みに悩んだ末に、自分の違和感の正体を見つけ、その対策を設計図に組み込んだ。するとどうだろう、先ほどまでのものよりも良いものができ、そのうえで剛志の違和感はなくなったのだった。
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