第131話 不安なスタート
東雲教授からアドバイスとステータスについての講釈をもらった剛志は、さっそくそのアドバイスを元にしたゴーレムの作成に取り掛かろうとしていた。そこに東雲教授の待ったがかかった。
「ああ、岩井剛志君。ちょっと待ってくれ。せっかくだからスキルの検証も一緒にやらないか? 今あるスキルは必須だと考えて固定だとして、私が調べたスキルのどれがどれだけ効果を発揮するのかも調べておきたい。本音を言うとすべて使いたいところだが、そうもいかないからな。」
「ああ、そうですね。それも検証対象ですね。わかりました」
そうして、剛志は東雲教授から新しいスキルの案をもらった。それが以下になる。
【思考加速】【並列思考】【スピードアップ】【情報整理】【認識共有】。思考にかかわるスキルが多く、通信速度向上に関係するかもしれないというわけだ。
ひとまず、それぞれのスキルを覚えさせることで必要になるコストを確認し、そのコストの中でも例えば思考加速と情報整理ではコストが違うため、それらはレベルを調整することで同じくらいのコストに抑えるようにした。
そして、それぞれのスキルを覚えさせたゴーレムたちの処理速度はこうなった。ちなみにベースは器用と速さを同じ値にした人工知能ゴーレム_iで、こいつの処理速度は1分30秒だった。
人工知能ゴーレム_i(器用200、速度300)→1分30秒
人工知能ゴーレム_i_1(器用200、速度300+【思考加速】)→45秒
人工知能ゴーレム_i_2(器用200、速度300+【並列思考】)→55秒
人工知能ゴーレム_i_3(器用200、速度300+【スピードアップ】)→50秒
人工知能ゴーレム_i_4(器用200、速度300+【情報整理】)→1分30秒
人工知能ゴーレム_i_5(器用200、速度300+【認識共有】)→1分20秒
こう見ると、かなりよくなってきたな。スキルの中で最も処理速度が上がったのは【思考加速】、次点が【スピードアップ】、その次に【並列思考】という結果になった。
この結果を踏まえると、スキルによる処理速度の向上がかなりあることが分かる。それに、そもそも比較用になんとなくで速度と器用を決めた人工知能ゴーレム_iの処理速度も、今までは最速だった。
どんどんと改善していく処理速度に、楽しくなってきた剛志。今の剛志のステータスでは足りず、「もっと器用の値があればいいのに」と、ないものねだりしてしまうくらいだ。
しかし、ないものは仕方がない。そう諦め、今あるステータスで最も処理速度が高くなる組み合わせを探す剛志。今までほとんど使ってこなかったゴーレム償還のスキルが活躍したのは、今回が初めてかもしれない。
そんな剛志の試行錯誤の結果、現時点で最も処理速度が速く、実用可能だと東雲教授から太鼓判をもらった人工知能ゴーレムがこちらだ。
【ゴーレム名】:人工知能ゴーレム002
【説明】:ゴーレムコアのみのゴーレムで、他のゴーレムを操ることができる。
【ステータス】
名前:
種類:人工知能ゴーレム002
スキル:【成長】・シミュレーション思考・記憶・通信・指揮・思考加速・並列思考・スピードアップ
レベル:0
HP:10/10
MP:100/100
攻撃力:0
防御力:1
器用:150
速さ:350
魔法攻撃力:100
魔法防御力:100
【必要器用値:3,300】
【消費MP:6,000】
【消費材料:特殊ゴーレムコア【成長】、魔石【MP7,500相当】】
かなりスキルをふんだんに覚えさせたおかげで、ステータスの値自体はそこまで高くないにもかかわらず、かなり重たいコストになったいびつなゴーレムだが、今回のゴーレムは処理速度が今までで一番早く、なんと15秒でダウンロードすることができる。
ちなみに、今まで明言していなかったため説明するが、この15秒というのは「別で1時間行動したゴーレムが得た情報をもらうのにかかる時間」を指している。なので、ある程度の個体差はあれど、1分あれば、1時間活動したゴーレムの情報を4体分手に入れられるということになる。
さらに、今回のこのゴーレムは【並列思考】のスキルも持っており、そのレベルは3だ。ということは、一度に2つの脳を動かせることを意味するので、1時間での処理量は単純に倍になる。
剛志のゴーレムたちの数が膨大なのを生かすには、今でも遅いくらいなのだが、ひとまず及第点だろう。
「よし、やっとデータ収集のステップに移れますね。ここからが本番ですかね。」
そう尋ねる剛志だったが、肝心の東雲教授は渋い表情だ。
「う~ん、確かに実用可能になったとはいえる。でもこれだけだと岩井剛志君の強みを生かし切れていないな。それに今後の運用を考えると、もっとスピーディーに行きたいところだ。しかし今のままでは現実的ではないしな……」
そう言って、悩んでいる。
確かに剛志も、そこは気になっていたところだ。この人工知能ゴーレムを複数作るという案も出たのだが、それだけだと結局のところ人工知能ゴーレム間での情報の共有がまだ見つかっていない。それも送受信するとなると、容量がどんどん重くなっていくので、どこかで破綻してしまう。
何か強力な一体を作成するか、複数体を常につないでしまうような仕組みを考えなくてはいけない。そこがまだ詰め切れていないのだ。
だが、今すぐに良い案が出てくるわけではないと判断した東雲教授は、取りあえず進めてしまうことにしようと剛志に言った。
剛志自身も今までの経験から「今回のことで進めても、どこかで手戻りが発生するかもしれない」と思っていたので、先ほどの問題点は認識しつつも、実際に進めてみて分かる問題を洗い出すためにも、このまま進めることに了承したのだった。
そうして、剛志と東雲教授による人工知能ゴーレムの作成は、少しの不安を残しつつ、ようやくスタートラインに立てたのだった。
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