第126話 人工知能ゴーレム作成へ向けて②
作成する人工知能ゴーレムの方針が決まった剛志。そんな剛志に対し、さっそく話を進めるべく東雲教授が話し出す。
「よし!方針が決まったところで、まずは準備を進めよう。私としては、後ほどヒアリングをしたり、この開発風景を映像に残したりしたいのだが、問題ないかい?」
「ええ、そういう契約ですもんね。問題ないです。よろしくお願いいたします。」
「よかった。では早速始めよう。ではもう一度整理するのだが、今考えている学習させたい分野を挙げていってくれないか?」
そう言って、持ってきたパソコンをカチカチ叩き始める東雲教授。それに対して臼杵が待ったをかけた。
「おいおい、もう少し落ち着けよ。そういう作戦会議なら、こんなダンジョンの中でやるんじゃなくて、どこか部屋を借りてやろうぜ。机もないと不便だろう。」
そう言う臼杵。それに対し万葉も頷くことで同意する。剛志としても、初めはさっそく進められることに頭がいっぱいで冷静に考えられていなかったが、目の前で片手でノートパソコンを持ちながら、もう片方の手でタイピングしている東雲教授を見て、確かにと思った。
唯一不服そうなのは東雲教授だ。移動するのが面倒で、そのまま話を進めたいというオーラがプンプン出ている。
「いや、私は問題ない。このまま進めよう。」
そう言う東雲教授だが、三人が一斉に「NOだ」という気持ちを表明したら、渋々移動を承諾してくれた。
そんな一幕があり、結局設備も整っているということで教授の研究室に戻ってきた剛志たち。しかし、あのまま進めるのは確かに不便ではあったが、毎回スキルを使うために研究室とダンジョンを行ったり来たりするのも不便で仕方がないのも事実だ。
「あのままやるのは不便でしたが、こうやって行ったり来たりするのも不便ではありますね。」
「だから言ったろう、あのままでいいと。」
剛志の発言に、若干不機嫌そうな東雲教授が突っかかってくる。かなり気分屋な人なんだろう。
そんな二人のやり取りに、臼杵が参入してくる。
「剛志。今回の件って日本ダンジョン組合も全面バックアップしてくれるって話だったじゃないか。だったら組合長にお願いしたら、ダンジョン内に作業施設や研究室そのものを作らせてもらうってのはできないかな?」
思いつきによる臼杵の発言だったが、それに食いついたのはもちろん東雲教授だ。
「なんだって!そんなことが可能なのかい?私が今まで何度も申請しては拒否されてきたのに、それができたらどれだけ良いか!聞いてみてくれないかな?」
東雲教授のあまりの剣幕に押されながらも、剛志は臼杵の提案を頭の中でイメージしてみた。確かにかなり便利になる。そのうえ組合長の話ぶりからして可能なのではないか?
そんな結論になった剛志。なので、一先ず相談してみることにした。
「えっと、まだ確約はできませんが、可能性はあるように思えます。臼杵、そうだよね?」
「ああ、ありえそうだなって思ったんだよ。万葉ちゃん、どうかな?」
「そうね。可能だとは思うわ。ただその場合、デメリットもしっかりとあると思うわよ。今回のケースは特別対応だということにもなるから。その場合考えられるのは、組合の管理下に置かれることね。例えば東雲教授が研究結果を発表しようと思っても、それが自由に行かない可能性もあるということよ。たぶん剛志は、自分が使えればそれで問題ないって感じでしょうけど。」
そう言われて剛志は、管理下に置かれるのは確かになんとも思わないと感じた。でもせっかく協力してくれている東雲教授が動きづらくなるのは申し訳ないと思い、教授の意見を聞こうと思った。
「そうだね。俺は問題ないけど、東雲教授の迷惑になりそうなら却下かな。」
そう言う剛志に、東雲教授が話し出す。
「何言っているんだ?そもそも私は研究者だぞ。国との研究なんかを行った日には、そんなことは日常茶飯事だ。研究にスポンサーは必要不可欠。そんなことよりも、研究が進むことの方が最重要事項だ。今すぐ聞いてくれ!」
そう言って、今にも剛志につかみかかりそうな剣幕で催促をする東雲教授。それならと思い、剛志は以前聞いていた上白根さん(剛志の担当者)に電話をかける。
するとすぐに出たので、状況を伝えて町田所長にアポイントを取ってもらうことにした。すると、今すぐ会えると連絡が返ってきたので、東雲教授に伝えると剛志の人工知能の件はすっかり忘れてしまっているのか、「さっそく行こう」と言い動き出してしまった。
今さっきダンジョンから戻ってきたばかりなのに、もう動き出す。そんな行動力を見せつける東雲教授を見て、臼杵がみんなに謝った。
「皆悪い。俺がもう少し早く思いついていたら、わざわざここまで戻らずに済んだのにな。それにあの人は止まることを知らないのか?マジでキャラの濃い人だぜ…」
そんな臼杵の発言に苦笑いをする剛志と万葉。まあ、そんなことを言っていてもしょうがないので、置いていかれないうちに移動を開始する剛志たちだった。
剛志たちが町田所長の執務室に入ると、開口一番東雲教授が町田所長に声をかけた。
「桃花!ダンジョン内に研究室を作っていいって本当か?今まで私があれだけ掛け合ってもダメだったのに、どういう風の吹き回しだ。でも、ダンジョン内研究室ができるのであればそれも関係ないな。で、どうなんだ?」
いきなりの東雲教授に対し、呆れた表情の町田所長。
「全く、あなたは変わらないわね…。まあ、今回の剛志君が提案してくれたダンジョン内研究室の作成は可能だと思う。ただし、研究内容は組合に提出してもらうし、研究室自体の警備や管理もこちら持ちになると思う。それでもいいかい?」
「おお、それでいいそれでいい。では早速お願いしよう!」
そう言って興奮気味の東雲教授。とにかくダンジョン内に研究室を作るという方針が固まったようだ。
しかし、この流れに疑問を持った万葉が町田所長に質問をした。
「所長。こんなに簡単に話がまとまるなら、なんで今まで教授の提案は通らなかったの?」
「ああ、確かにそうだな、説明しようか。もともとダンジョン内の空間で研究室を作って研究するというのは、何も珍しいことではない。世界中でそういうことが行われているのは事実だ。しかし、世知辛い世の中だけど、それにはそれなりの資金力やコネが必要ってのが正直なところだな。彼女、こんな性格だろ?こんな変人に資金力やコネがあると思うかい?」
そう言われて、剛志たち一同は深く納得してしまった。当の本人はそんなこと全く気にした様子もなく、これからの自身の研究が楽しみで仕方がないといった感じだ。
そのまま町田所長は補足を話し出す。
「ま、それが大きな理由ではあるのも事実だが、それ以外にも理由はある。世界各地で行われている研究の多くは、一般の人がダンジョンの恩恵を受けるためというものが多い。その理由はそちらの方が儲かるからだろうな。でも彼女の場合、研究の結果得をするのは探索者だ。それも受けが悪い大きな要因だろうな。ま、そんなこんなで今までは条件を満たせていなかったのだが、今回は組合もバックアップするという約束だし、剛志君のゴーレムがあれば建築も問題ないだろう。で、あるならば断る理由はないという話だ。」
そう言って、剛志たちに説明してくれた町田所長。なんとも世知辛い説明ではあったが、大いに納得できる内容だったし、世界のダンジョン研究についてのトレンドもなんとなくわかった気がする剛志だった。
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