第125話 人工知能型ゴーレム作成へ向けて①
東雲教授の話は続く。
「でだ、岩井剛志君の頭がパンクしないうちに話を本題に戻したいと思う。ゴーレムで人工知能を作るということが可能かどうか。これに関しては可能だと先ほど説明したな。では実際に作るにはどうすればいいのか、それをここで説明していこう」
そう言って、東雲教授は持ってきていたノートパソコンを広げた。
剛志はさっそく本題のやることを説明してくれるということもあり、食い入るようにその画面を見つめる。剛志の後ろから画面を見つめる臼杵と万葉の二人も興味津々だ。
「さて、では実際にゴーレムで人工知能を作るにはどうするか、だ。
大まかには六つの手順に分けられる。【学習させたい分野を決める】【データを集める】【脳となるゴーレムを構築する】【学習フェーズ】【判断基準の固定】【実地試験】。この流れを踏むことで、ゴーレムに人工知能を宿すことが可能となる。もっとも、言葉だけでは理解しにくいだろうから、それぞれの段階を順に説明していこう」
そう言って東雲教授は持参したパソコンを開き、講義資料を映し出す。どうやら研究室で用いている説明用の資料らしく、要点をかみ砕いて解説してくれているようだった。
まとめると次のようになる。
【学習させたい分野を決める】
・戦闘、探索補助、搬送や観測といった作業――何を学習させるかを明確にする必要がある。方向性を定めなければ、ゴーレムは“何を最適化すべきか”を理解できない。
【データを集める】
・人間の探索者がスキルを使った記録、ダンジョンでの戦闘映像、あるいはゴーレム自身の行動ログ。こうした“例題”を大量に集めることが重要だ。これは人工知能にとっての教科書に相当する。
【脳となるゴーレムを構築する】
・ただのデータではゴーレムは理解できない。そこでゴーレムクリエイトと特殊ゴーレムコア作成のスキルを組み合わせ、魔力を媒介にして情報を解釈可能な“魔導演算核”を作り出す。これがゴーレムにとっての脳となる。
【学習フェーズ】
・収集したデータを繰り返し再生し、成功と失敗を比較させる。経験を疑似的に重ねることで、行動の最適化を学ばせる段階だ。
【判断基準の固定】
・ある程度学習が進んだら、導き出された“正解パターン”を魔導回路に刻印し定着させる。これによりゴーレムは、似た状況に遭遇した際、自らの判断で動けるようになる。
【実地試験】
・最後にダンジョンや訓練場で試験運用を行い、予期せぬ挙動を修正していく。この工程を繰り返すことで、ようやく“実用に耐える人工知能ゴーレム”が完成するのだ。
そんな説明を受けた剛志は、なんとなく理解できたような、できていないような、不思議な感覚に陥った。大枠は理解したが、実際にやってみないとイメージしづらいといったところか。
「えっと、なんとなくは理解したと思います?」
そんな、理解したのかしていないのかわからない返事をする剛志に、東雲教授は笑いながら答える。
「まあ、一般の人工知能についての理解はそんなものだよな。ただ便利なもの、みたいなイメージだろ。紐解くとこんなふうな手順を踏んでいるのだよ。まあ、これでもかなり簡略化しているけどね。とりあえず岩井剛志君にお願いしたいのは大きく分けて三つだ。データの提供、脳みそとなるゴーレムの作成、試験運用の三つだ。これさえやってくれればいいと考えてもらえれば、少しは理解できるかな?」
そう言われた剛志は、それなら大丈夫だと感じたので「はい」と答えた。
「よし、では契約成立だな。あ、私への報酬は今回のデータの共有と、私の研究への人員提供だね。人員と言っても、ゴーレムを貸してくれればという感じさ」
そう言って、納得した様子の剛志に自身の報酬を提示する東雲教授。後出しのため本来ならマナー違反なのだが、剛志は別に問題ないと思い、突っ込まなかった。
そして協力体制の構築を終えた東雲教授と剛志一行は、そのまませっかくなので剛志の人工知能ゴーレムを作成するために作戦会議を始めた。
やはり音頭を取るのは専門家の東雲教授だ。
「では早速、作成していきたい人工知能についてのヒアリングを行いたいと思うのだが、初めの【学習させたい分野を決める】については、どのようにしたいかイメージはついているかい?」
「そうですね、戦闘についてのサポートも欲しいし、探索補助、搬送や観測……欲を言えばすべてに対するエキスパートを作りたいんですけど、難しいですかね」
そう答える剛志。そんなものができればもっともいいが、それが難しいからこそ、まずは分野を決めるということをするのだが、どうなのだろう。
「う~ん、難しいことを言うね。でも考えてみようか。ゴーレムは自身のコアに経験を蓄積していき、ある程度最適解を見つけ出せるようになる機能があるな。これもある意味では人工知能のような役割をしてくれるね。でもあくまでも経験によってしか最適化されないから、新しいゴーレムに対しその経験を共有することが難しい。そこをつなぐ役割を担わせれば……いや、それだと目的の物とは異なる感じになるな」
そう言って、ぶつぶつと考え込んでしまった。剛志は自分の安易な発言でこうなってしまったのを悪いと思いながら、ただ待つことしかできない。
そんな時間を過ごしていると、ああでもないこうでもないと悩んでいた東雲教授が、あることをひらめいたような表情になり、剛志に向かって口を開いた。
「岩井剛志君。一つだけ方法がありそうだ。それは“複数個”人工知能ゴーレムを作るというものだ。各分野のエキスパートになる人工知能を作成し、それぞれの人工知能を操るための人工知能を作ればいいと思うよ。君みたいにいくつもゴーレムを作れる人間ならではではあるかもだけど、これが結局のところ最もいい解決策だろうね」
そう言って、すっきりした表情の東雲教授。確かに、剛志の最も強い特性は数の暴力だ。それなら人工知能も複数個作ればいいということだ。足りなくなったらその都度足す。そんな芸当が可能な剛志だけのやり方だろう。
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