第102話 わかったことと必要なこと
前回、臼杵が休みを取り服部に連絡を入れてからきっちり一週間後、臼杵のスマホに服部からメールが届いていた。
中身は、調査が完了したということと、詳しい中身は会って話したいという内容だった。
それを受け取った臼杵は、剛志に報告をし、再度休みを取って服部にあることにした。
またこの際に、この一週間の間で剛志、臼杵、万葉の三名で話していたこれからは適度に休みを取ろうという話も役に立った。
元々次の報告もあって行わなきゃいけないとわかっていた臼杵は、剛志と相談して休みやすい空気感をあらかじめ作っていたのだ。その時の理由として剛志と万葉二人だけの時に襲われなかったという事実と、剛志も成長しているということ、そしてそもそも剛志を襲っていた構成員は現在捕まっていること、これらを理由として挙げて、剛志からの提案という形で適度に休みを取ろうと話していたのだ。
個人事業主でもある探索者は働こうと思えば毎日働くことができるが、基本は命の危険と隣り合わせの仕事だ。本来であれば定期的に休息をとるのも大事な仕事なのだ。
ほとんど危険のないダンジョン探索を行っている剛志が異常なので合って、それにつき合わせるのもよくよく考えるとおかしいため、初めは心配していた万葉も少し考えると納得してくれた。
それに壁作成もそろそろ半分を超えて終盤と言ってもおかしくないくらいには進んでいるため、今更剛志を狙ってもうまみが少なくなっているんじゃないかとも考えられた。
まあ、そんな感じで色々と理由をつけて休日をとった臼杵は、前回と同じカフェで服部と会っていた。
「服部、結果が出たって。で、どうだった?」
「まあ、そんな焦らないでください。でも実際、かなりきな臭い気がしてますがね」
そういって、服部は話し出した。
「まず、今回言われたとおりに妹さんの担当医から調べてみました。そうすると、あの医者、相当借金を抱えていることが分かりましたよ。それも表に出せない借金をね。病院の金に手を出して投資に失敗し、負債を抱えたみたいです。まあ、ありきたりと言ってはありきたりですが、この時点でかなり疑いは深まりましたね。私目線でも宮本万葉自身がクロの線は薄まりました。」
それを聞いて、やはり何かに巻き込まれていることを確信した臼杵は、続きの話に耳を傾ける。
「じゃあ、その借金はどうなったかというと、これは今はもう別の人が立て替えたみたいです。それが誰かというと宮本万葉が所属している八王子ダンジョンの所長、鮫島澪司という男です。」
「鮫島か、俺は知らないな。でも万葉ちゃんからも今の病院に移れたのは所長のお陰だってことまでは聞き出せたし、ここまで状況証拠が出ていれば、そいつが犯人で決まりでいいんじゃないか?」
服部の調べによって、あまりにも疑わしい人物が浮かび上がってきたため、そいつが犯人だと確信した臼杵。しかし、それにしては服部の表情が曇っている。
「いや、そう簡単にはいかないですぜ。妹さんの病院移転の件はそっちも情報掴んでたんだな。こっちでもそれは調べがついてる。でもだからと言って、鮫島が犯人ってのは言い切れねぇんだ…」
「おいおい、なんでだよ。さすがにここまで出てると怪しすぎるだろう」
さすがに納得がいかなかった臼杵が、そうつめると服部が説明しだす。
「さすがに全くかかわっていないとは言えねえが、なんせ証拠が全くないんだ。それに鮫島の評判を調べたが、誰に聞いても聖人君子だって答えやがる。これで犯人だったら相当うまくごまかしているってことになる。そこまで徹底的に隠している相手に対し、調べるっていうのはこっちとしてもかなりリスキーなんだよ。誰か協力者がいる。心当たりないか?」
と逆に協力者がいないかどうかを聞いてきた。
ちょっと調べるだけで、怪しさ全開の鮫島という男。しかし証拠は全くなく、あるのは剛志と臼杵の違和感というだけ、これだと証拠としては薄すぎる。
先ほどの担当医の件も、古くからの知り合いで合った鮫島が困っていた担当医にお金を貸しただけで、別にそこに関しては事件性はない。あるとしたらそのお金に困った原因が横領だという部分だが、それに関しても悪いのは担当医で鮫島は知らないと言えばそれで終わりだ。
そうやって聞くと、いいところまでは行っているのに決定打にかけるというのが今の状況のように聞こえる。これを突破するべく誰か鮫島に近しい人物に協力者になってもらいたいのだが、話を聞くに人望が厚いらしく、鮫島の裏を探る臼杵たちの協力をしてくれる人が見つけられないというのだ。
「でも協力者っていったで、どんな人がいいんだよ。」
「そうだな、おそらく今回宮本万葉が受けているのが、何らかの精神攻撃だとするなら、そういった攻撃を受けていないであろう人物で、その上鮫島に近い人物。さらに言うと、鮫島に対してどこかマイナスの感情を持っているとなおいいな。できれば後々の問題も考えるとダンジョン組合側の人物だと最高だ。」
「おいおい、どんな無理難題だそりゃ。さすがに俺には思いつかないぞ…」
そういって、深いため息をつく臼杵。
しかし服部も現状手詰まりの様で、その日はひとまず解散することになった。
服部は今できる最大限の方法で調査を続行し、臼杵は剛志と相談してよさそうな協力者がいないかを探すことになった。
果たして協力者は見つかるのかどうか、それによって今後の動き方が大きく変わるだろう。




