第101話 サンドカーペンターゴーレム
横浜第三ダンジョン地下61階でゴーレムを作りながら、万葉と世間話を続ける剛志。
そんな剛志が今作っているゴーレムは主に4種類だ。
それは各種メイジゴーレム、マジックガードゴーレム、ヘキサボード、サンドカーペンターゴーレムの4種類になる。
ここでサンドカーペンターゴーレムというゴーレムが初めて出てきたため、どんなゴーレムかと説明すると、大雑把にはウッドカーペンターゴーレムのサンド版という感じだ。
今まで手先の器用なゴーレムはウッド系列と決まっていたが、ゴーレムカスタマイズによってそのゴーレムの材料を砂に変えたサンドカーペンターゴーレムというものの作成が可能になったのだ。
これは性能で言うとあまり優秀ではない、なぜなら比較的脆く柔軟性のない砂という材料で作られているため、あまり細かい作業をするのは得意ではない。しかしサンドカーペンターゴーレムも大雑把な作業は可能で、今回の砦建設など、あまり大きくなく壁だけの建物などは問題がないのだ。
そのうえ、作成にかかる材料がダンジョン内では取り放題の砂なため、作成コストがかなり抑えられ、そのうえで性能は限定的だが、十分雑用をこなすことができるのだ。
そんなかなりコスパの良いゴーレムを思いついた剛志は、最近ではサンドカーペンターゴーレムも適度に作成し、砦建設や、ドロップアイテム回収などの雑用を主にやってもらっている。
そのうち、性能を上げることができるようになったら、サンドカーペンターゴーレムでの壁建設なども出来るかもしれなく、そうするとより早く壁建設が進むだろう。
そんな可能性を秘めているコスパ最強ゴーレムが、今のサンドカーペンターゴーレムの立て付けになる。
そのほかにも、いろいろとマイナーチェンジは行っており、わかりやすく言うとメイジゴーレムの性能を強化している。
色々と悩んだのだが、基本移動はヘキサボードで運用する前提で移動に必要なステータスは最低限に削り、その代わりMPなどの魔法にかかわるステータスを上げたり、そのほかには、集団魔法で扱える魔法の種類を増やしたりしている。
最初は大きな魔法球を作る程度だったのが、今では爆発する火魔法だったり、竜巻を起こす風魔法など、バリエーションが増えてきた。
また、マジックガードゴーレムも強化しており、なんといっても大きいのが挑発のスキルだろう。これを覚えさせるために少しステータスを削る必要があったが、それでもこいつによって効率がバク上がりした。
戦法としては、まず敵の中心にマジックガードゴーレムを投下し、そこで挑発のスキルを使ってもらう。そうすると敵がマジックガードゴーレムめがけて集まってくるので、その間は何とか耐えてもらう。そしてある程度集まったところで、マジックキャンセルのスキルを使用してもらい、そこに集団魔法での強力な一撃をお見舞いする。
このコンボで、ほとんど作業で魔物を狩ることができるようになっており、最近ではとにかく戦力を増やして時間当たりの収穫量を増やしたいというわけだ。
そんな感じで、最近の剛志の状況を説明していたが、肝心の本人というと、やっていることが砦に入ってゴーレムを作る、そのゴーレムに働いてもらう、タブレットで状況を確認すると、あまり変わり映えのない生活を送っている。
これも彼自身の危機感の無さにつながっているのは確実だろう。
まあ、安全なのはいいことなので、変える必要もないのだろうが…。
そんな中、万葉の一件は剛志にとってかなりの大事なため、今も作業を続けながらも頭の中は万葉の現状に対する推測でいっぱいだ。
特にそういったことが得意ではないため、あまりわからないというのが正直なところだが、今わかっているのは病院の担当医が怪しいというのと、あの病院に百花ちゃんを移動することができたのは万葉が所属しているダンジョン支部の所長だということ、この所長も今のところかなり怪しい。
その辺も今剛志が聞き出すことができるのか、それとも今臼杵が依頼をしている服部という本職の男に任せた方が良いのか、そんなことを考えながらゴーレムを作成していると、いくら多重思考のスキルを持った剛志と言えど、注意力が散漫になってしまっていた。
そのため万葉との雑談の返事がおざなりになってしまい、彼女に怪しまれてしまったのだ。
「って、さっきから私の話ばかりじゃない!あんたも相当謎よ、あんたのことも少しはなしなさいよ!」
「なるほどね」
「…。はぁ!?なるほどねじゃないわよ。剛志、あんた会話が成り立ってないわよ。どうしたのよ、今までそんな事なかったじゃない、何か悩み事でもあるの?」
今まで、スキルのお陰かしっかりと会話はこなせていたことが裏目に出てしまったのか、二人きりなのに会話が上の空という状況に違和感を覚えた万葉が、剛志に対し心配してきた。
本来なら、上の空で会話していたことで怒りを買っていないことを喜ぶべきなのだが、臼杵とも万葉に気づかれないように調査をしようと言われていたこともあり、ドキッとしてしまう剛志。
「えっ、ああごめん。ちょっと考え事をしてて、この後のゴーレムの強化の仕方とかどうしようかなって。申し訳ない」
と言ってとっさにごまかし謝った。しかし、その際も額からはじんわり汗をかいており、少しても震えていたと思う。
そんな剛志の反応に、さらに怪しく感じた万葉だったが、まあ気のせいかと今回は深く追求することはせず、その場は流れた。
その後は特に大きな出来事もなく、一日を終え、剛志と臼杵はテントで二人話し合いをしていた
「臼杵、どうだった?」
臼杵に今日の出来事について聞く剛志、臼杵も声を潜めながら返事をする。
「ああ、取り敢えず服部に依頼はしてきたぜ。それとびっくりしたのが、外では剛志の壁作成が一応ニュースで追われているらしいぜ。まあ、最も個人情報とかは出ていないし、そこまで大きなニュースではないみたいだけどな。」
「え!そうだったの!?」
いきなり思いもよらないことを教えてもらい驚く剛志、それに対し臼杵も慎重に説明を重ねる。
「ただし、個人情報も今のネットでは調べれば憶測程度だがでちまっているようだぜ。まあ、これだけ大きなことをしていて隠すというのも難しいとは思うんだがな。そっちはどうだった?」
「ああ、そうだね。こっちもいろいろ聞けたよ。今の病院に移ることができたのはダンジョン支部の所長の口添えだとかね。でも少し不自然だったのか途中で怪しまれちゃって、そこからはあまり聞けてないね」
「なるほど、そいつも怪しそうだな。でもやっぱり彼女の目を盗むのは至難の業だな。わかった、ありがとう」
そんな風に、その日の進捗を共有しあった剛志と臼杵は、そのまま眠りにつくのだった。




