第100話 剛志と万葉
《剛志side》
臼杵がお休みをとった当日、剛志と万葉の姿は横浜第三ダンジョン地下61階にあった。
メイジ軍団とヘキサボード、マジックガードゴーレムのコンボが思いのほか有効だったのに加え、ゴーレムの数が増えるにつれ得られる魔石の数も増えていくという好循環もあり、今の剛志のダンジョン探索は順調そのものだった。
今では地下60階層と地下61階層に大きな砦みたいな建物を建築し、その中で剛志の居ない間に手に入れた魔石を保管している。
ダンジョンの階層一帯を剛志専用の魔石牧場と化してしまっているというのが一番正しい表現かもしれない。そんな順調なダンジョン探索において最近は緊張感の薄れていた剛志一行だったが、本日は違う。いつにもまして万葉がピリピリしているのだ。
普段は武器こそ持ち歩いているが、どこかリラックスした様子なのだが、今日は常に刀に手がかかっており、どこか目つきも鋭い気がする。
「宮本さん、どうしたの?なんかいつもよりピリピリしていない?」
そんな空気感に耐えきれなくなった剛志が、デリカシーが無いと捉えられるような質問をすると、刀に手を置きながら万葉が返答する。
「いつもよりピリピリしているって、逆になんで剛志はいつも通りなのよ。今日は臼杵がいないのよ。前回襲われた時を忘れたの?一人護衛が減ったんだから、今日も襲ってくるかもしれないじゃない」
そういってあたりを見わたす万葉、それを見て確かにそうかもとも思った剛志だが、本人はあっけらかんとしている。
「う~ん、確かにそうかもだけど、そこまで緊張しなくてもいいんじゃない?俺も結構強くなったし、今回は宮本さんはいるわけだし。それに今から緊張していたら、もし何かあったときに体が動きずらいよ、ちょっとはリラックスしないと。」
剛志の言うこともある意味で正解なのだろうが、今までの言動から大物だというよりは何も考えていないだけだという印象が強い。そんな剛志に対し、半ば飽きれながらも、少しは肩の力が下りた万葉だった。
因みに、剛志がこんなに自信を持っているのは最近調子がいいというほかにも、剛志自身が成長しているというのも確かにある。
そんな剛志の今のステータスがこれだ。
名前:岩井剛志
職業:ゴーレムマスター
パーティメンバー:臼杵健司・宮本万葉
スキル:所持制限無視・多重思考・二重詠唱・自動記録・高速展開・自動防御補助・全属性耐性
職業スキル:ゴーレム作成・ゴーレム再作成・支援魔法【ゴーレム】・ゴーレム強化・ゴーレム異空庫・ゴーレム償還・ゴーレムカスタマイズ・特殊ゴーレムコア作成・ゴーレムアップデート・高速召喚
レベル:412(69up)
HP:2,553/2,553(519up)
MP:7,412/7,412(1,449up)
攻撃力:1,463(280up)
防御力:2,868(588up)
器用:3,359(759up)(+121%)
速さ:3,071(621up)
魔法攻撃力:4,425(864up)
魔法防御力:5,223(1,031up)
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
所持ゴーレム数 (省略)
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
レベルはついに400台に到達し、その上新しいスキルも取得している。
高速召喚という名前のスキルで、このスキルの特徴は召喚にMPを使用するが、一瞬でゴーレムを自身の近くに召喚することができるというものだ。
主な使い方は、すでに近くから離れてしまっているゴーレムを戻すのと、一瞬でゴーレム異空庫の中からゴーレムを召喚するの二つだろう。消費MPも一回に付き1MPとかなり低く、とっさに戦えるようになるため剛志にとってかなり有効なスキルだった。
因みにこのスキルは剛志が何度も大量のゴーレムをゴーレム異空庫から召喚していたために生えた様で、これも実績による解除の様だ。
そのほかにもゴーレム作成で作れるゴーレムが増えたり、支援魔法【ゴーレム】の魔法の種類が増えたりはしているのだが、ゴーレムカスタマイズが有能すぎて、あまり使用されていないのが現状だ。
そんな剛志だったが、いまも尚横浜第三ダンジョン地下61階に建築された要塞内で、万葉とトレントウッドゴーレムたちに守られながら、タブレットで自身のゴーレムたちの活躍を確認している。
因みに今剛志が一日に獲得している魔石の総数が、約80万MPほどだ。このMPは例えばウッドカーペンターゴーレムを一体作る際に必要になるMPが約400なので2000体分になる。そう、まだまだ魔石は足りないのだ。
最近ではこの魔石の回収量を増加させるべく、施策をいろいろ打っており、階層を一つ進めたのもその一環だ。
魔石は数だけで総MP量が決まるわけではない。なぜなら一個当たりのMP量がそれぞれ個体差があるためだ。そして、そのMP量は落とす魔物の強さに比例する。
なので、より強い魔物からドロップアイテムを回収していくと、MP量的により稼ぐことができるという算段だ。
また、階層を一つ進めた今も60階層では今迄通りゴーレムたちが働いている。
そんな剛志は、今日の分のゴーレムを作成しながら、万葉に世間話を振ってみる。
「宮本さん、この前妹さんに会いましたけど、彼女はいつごろから入院されているんでしたっけ?」
「そうね、私が探索者になってから今の病院に移ったから大体5年くらいかしらね」
「え、宮本さんが探索者をされる前は、あの病院ではなかったんですか?」
万葉が探索者になってからというのが気になり、そこを訪ねてみる剛志。
それに対し、万葉は隠すこともなく答えてくれた。
「ええ、そうね。それまでは今みたいにお金もないし、もっと設備の少ない病院だったの。それを私が探索者になったときに、そのダンジョン支部の所長が便宜を図ってくださって今の病院に移れたってわけ。あの人には頭が上がらないわね。」
「へ~、宮本さんにも頭の上がらない人が居るんですね。なんかイメージとは合わないですね」
「うるさいわね」
万葉の口から聞けた頭の上がらない人物。その人物が今回の件にかかわっているのか、それとも関係ないのか。
こういったことは全く持って慣れていない剛志は、そんなことを考えながらもどうしたものかと悩むのだった。




