第1話 副業で『ダンジョン』始めませんか?
副業で『ダンジョン』始めませんか?
そんな広告を剛志が目にしたのは、会社から帰る電車の中だった。
主に仕事は在宅が多く、出社するのは珍しい剛志だったが、たまには出るのも悪くないな、そんなことを思いながら帰宅し、そのままダンジョンについて調べ始めた。
「いや~ダンジョンって今こんな感じになっているんだ」
ノストラダムスの大予言で騒がれていた2000の年明けに世界中に突如として発生したダンジョン。その中に入りスキルやジョブを得た者たちは、不思議な魔法のような力を使えるようになった。
当初は世界の終わりや、人類の進化だなんだと騒がれていたようだが、時の流れは残酷で、今では当たり前の現実でしかない。
ダンジョンを出るとその力は大幅に減少し、あまり危険ではなくなるというのも理由の一つだろうか。しっかりと管理さえすればダンジョンは危険ではなく、むしろ様々な資源をもたらせてくれる金脈だったのだ。
大きなもので言うと、電気エネルギーの増幅や、電子回路の大幅強化だろう。
これによって急速にパソコンなどの電子機器が普及していき、今ではとてつもない処理速度の電子機器が巷にあふれている。
剛志の仕事もダンジョン関連企業で、主に仮想空間での破壊などのシミュレーションなどを行っている。
まあ、そんなことはおいておいて、剛志はダンジョンの恩恵は受けながらも、危険なダンジョンにかかわりを持たないで暮らすただの一般人だったのだが、今回副業という観点でダンジョンのことを調べてみるといろいろとわかった。
一つはダンジョンに入る人間の数が減少傾向になるということだ。
理由は単純で、ダンジョン内は危険だからだ。命を落とすかもしれない。また少子高齢化というのも原因だそうで、シンプルに若い人間が少なく、仕事の特質上肉体労働な部分も大いにあるため、若者の方が向いているということの様だ。
二つ目はダンジョンに入る人間が減ると、社会に大きな影響が出てしまうということだ。主な内容としては、ダンジョン資源の需要に対し供給が減ってしまうことがあげられるが、そのほかにも治安の面で国としては手を打たざるを得えない。
最後にこれが一番の問題だと思うが、ダンジョンとは中の魔物を定期的に間引いていかないと、ダンジョンの外にあふれ出すというスタンピード現象が起こるからだ。もしそれが起こったときには太刀打ちできるのはスキルホルダーたちだけで、一般人が何人も犠牲になることは想像しやすい。
それの防止のためにも、国としても現状を危険視しており、最近になっていろいろな優遇措置を行ってダンジョンで戦うスキルホルダーたちを増やそうと画策しているという状態の様だ。
そんな中、その制度を機にダンジョンに入ってみませんかという内容なのが剛志が帰りの電車の中で見た広告の中身だった。
「国が推しているなら、それなりにありかもな。最近はどの副業がいいのかわからなくなってきていたところだし、今の給料だけだと生活はできるがちょっとの贅沢とか、貯金は難しいのが本音だからな。取り合えず明日は休みだからいろいろダンジョン組合に行って聞いてみようかな」
そうして、剛志は翌日ダンジョン組合に向かうことにしたのだった。




