第42話 ファランさまが、ぼくをキライな理由
いい子にしてよ。そしたら、きっと――
……どうにもならないかも。
だってぼく、悪いことしてないのに、冤罪で処されるポジション……だもん。
すーっと、体が寒くなる。
もしかしたらどんなにがんばったって、なんか強制力みたいなので原作とおんなじように――
「――さま、サファさま」
「……?」
はっ! 気がつくと、侍女さんがぼくの目の前に。
「さ、お茶をいれましたわ」
「わ……ありがとぅ」
いつの間にか、テーブルには絵本の代わりにお茶とお菓子。
「マカロンは、サファさまがお気にめしていたものですわ」
「わわ……ピンクのやつ」
「はい。お花が可愛いですね」
ぐぐっと身を乗り出すと、ピンクのマカロンには白い小さなお花がいくつも描かれている。
「かわいいぃ……」
「ふふ。さあ、どうぞ召し上がってください」
「はぁぁい!」
マカロン! これ、さくふわとぅろん、でおいしいやつ!
「でもぉ、お花のとこ食べちゃうの、もったいない」
マカロンの、お花がないとこを、ちみっとかじる。
「おいしぃ……」
「まぁ、サファさま。そんな遠慮なさらず、もっとパクっと召しあがればよろしいのに」
「うん、でも……」
「こぼしてしまわれたらもったいないですわ。マカロンはまだありますから」
「そっか、こぼしたら――」
はっ! もしかして――
この間のお茶会のとき、ぼくがおかしこぼしたの、バレてた!?
ファランさま見てた!?
クッキーの粉、ポロポロしたの、見てたらきっとお行儀悪いってなるよね……
ファランさま、お行儀きっちりしっかりだから、そういう子はきらいかも。
そんな子、一緒に歩いたりもちょっとやだよね。
今日きゅうに、やっぱやだ!ってなっても、ムリはないかもぉ……。
「こぼしちゃったから、ぼくがぁ……」
「サファさま? どうかなさいました」
「マカロン、お口に合いませんでしたか?」
「ほかのお菓子を用意しましょうか? なにがよろしいでしょう。プチケーキか、チョコレート、それともクッキー――」
クッキーはだめぇぇぇ!
「もぉ、もぉ!」
「サファさま?」
「なんでみんな、ぼくにそんなに親切にするのぉ!」
「あらあら、どうなさったんですか?」
「理由なんてありませんわ。したくてしてるんですのよ、サファさま」
もぉぉぉ、みんなぼくを甘やかしたらダメえ!
ちょっとウキウキして、だんだん調子にのったりしたらぁ、どーするのおお!
「もっとぉ、みんなはぼくに厳しくしないとぉ」
超絶覚悟で言ってみたけど、侍女さんたちはきょとんだ。
「あらあら」
「おかしな、サファさま」
おかしそうに、ニコニコだ。
「もぉぉ、なんで厳しくしないでやさしくするのぉ?」
優しくされるのになれたらぁ、ダメでしょお……。
なのに、なのに!
「もう、サファさまったら」
「だって厳しくする理由がないですもの」
「そうですわ」
「えっ! なんで」
今度はこっちがきょとんだ。
「だって、サファさまなにもダメなことなんか、なさらないじゃないですか」
「えっ、ほんとに!?」
「もちろん。それどころか――」
ぼく、ダメじゃない! ダメなことしてない!
よかった。じゃあ、きっとファランさまも今日はほんとうにたまたま用事で――
ファランさま、予定はずっと先まで決まってるって言われてたのに、今日だけたまたま急なご用ができること、あるのかな。
あるのかな……
「さ、お茶がさめてしまいますわよ」
「マカロンもお召し上がりください。他に青と黄色のもありますわよ」
「ん……いただきますぅ」
あまぁぁぁい。侍女さんたちがぼくに、マカロンよりあまいぃぃぃ!
***
「あ、サファさま。あれをご覧ください」
「んーー? あれ、おはなー?」
結局、お茶とマカロンをパクっと食べたぼくは、侍女さんと一緒にお庭をお散歩。
「はい。あの白い花、今ちょうどとってもきれいに咲いているんですよ。見に行きましょう」
「うん! いこー」
あんまり走るのはよくないって言われてるから、てくてくの早足だ。
「わーー、たくさんさいてるーー」
「あれれ? このお花、あれににてる! マカロンにかかれてたお花」
「ああ、そういえばそうですわね」
「このお花は食べられませんけど、実はいい匂いがするんですよ」
「えっ、そうなの?」
侍女さんに言われて、お花に近づいて、くんくん。
「わ、ほんとだ! あまくていいにおい」
「ふふ、サファさまったらそんなに近づいて。お花を食べてしまわれるかと思いましたわ」
「ええー、マカロンのお花じゃないから、食べたりしないよー」
でもほんと、いいにおい。お花の匂いをかぐと、なんでこんなに、ふぁ~ってなるんだろう。
「これ、好きぃ」
もう一度、ちょっとひかえめに顔を近づけてくんくん。
これ、なにかに似てるなぁ……。
――はっ!




