第41話 ぼくのこと、キライ…?
「実は――」
「……?」
「急ぎのご予定が入ったため、申し訳ないが、今日は時間が取れなくなったと」
「……え?」
今日は時間が取れないって、それってつまりぃ……
「えぇぇ……?」
う、うそぉ。急にご用……? え、今日とつぜん?
「残念でしたわね。さ、こちらでご本でも読みませんか?」
「ん……」
え、だってぇ、今までファランさまの約束がなしになったことって……あった?
んんん、ないない。今まで一回もなかった!
え……なのに、今日だけ? 急に?
「どしてぇ……」
「仕方ありませんよね。ファランさま、お忙しいですから」
「ん、ん……そう、そうね」
侍女さんに連れられてソファにぽすん。
「さ、今日はどのご本になさいますか?」
「…………」
目の前になにか置かれたけど、あんまり目に入ってこない。
ご用……急な用事って
何か急用って言ってたけど、どんな用事なんだろう?
「はっ……!」
も、も、もしかして……
急用って、なんかほら、いいわけにすることない? なんか、止めたくなったなーみたいなとき。
ね? あ、あるよね? 前のぼくのとき、なんかそういうのあった!
用事があっていけない~みたいなこと、15才の僕も言われたことあるような……。
そのあと、別の友だちと遊んでるの、うっかり見ちゃったやつ。
そして、なぜかこっちが、あわてて隠れちゃったやつ。
…………
え、それ?
今日のってもしかしてそういうやつ?
だとしたらぁ、なんでぇ?
なんで、約束したのに、急になしにしようってなったのぉ?
ぼく、ぼくなんかした?
え、なんかしたっけ? この前、部屋に送ってもらったとき、手をぎゅってしすぎた? 歩くの遅くてイヤだったとか?
はっ……!
やっぱり、お仕事してたのに、急に秘密のお部屋に入って行っちゃったから、迷惑だった!?
「…………」
それはそう。迷惑はまちがいない。それに、きゅうにバっていったから、ビックリしたよね……。まぁ、バっていったのはハロルドさまで、ぼくもビックリした側なんだけど。
けどぉ、ファランさまからしたら、ぼくも急にバってした人だもんね……。
ハロルドさまは弟だからいいけど、ぼくは他人だし。どっかの小さい国からきた、ただの人質だし。
ただの、人質……。
重たい現実。
なんか、急に胸がぐーーっとなる。
「しびあなげんじつ……」
そうだった。忘れちゃダメだった。ぼくは、10年後に処刑される、悪役なんだ。
無実とはいえ、そうなるってことは、「悪いことしそうな人」ってみられてる、ってことだ。
当然、優先度は最下位。いつでも約束なんかなしにしていいんだ。
「はぁぁぁ……」
ダメねぇ、ぼく。ちょっと王子様たちに遊んでもらったからって、なんかお友だちみたいな気分になってた。みのほどしらずもいいとこ。
はっ……!
もしやそれで、嫌われたとかっ!?
なんかずうずうしいやつ、って愛想つかされたみたいな。
「…………」
まさかでも、あんなにニコってやさしぃかったファランさまが、急にそんなこと……
あ、でもでも……あれは優しいから我慢してくれえてただけで、とうとう我慢できなくなって、それで……
けど、ファランさまがそんなこと――
けどけどっ! ぼくが知らないうちにダメなことしてたらっ?
どどど、どーーしよぉぉぉ!?
「ふぇっ……」
もし、もしもし、ほんとうに嫌われちゃってたら……!
そんなの、思っただけで目のとこがじわっと熱くなっちゃう。
ダメダメ、また目の蛇口こわれちゃう。
メソメソした子は、めんどくさいってみんなにいやがられちゃうよ、ね。
いい子にしてよ。そしたら、きっと――
……どうにもならないかも。




