第39話 王宮探索、まさかの結末!?
「さあ、どうぞ」
「……えっ!」
扉の向こうにあったのは、広い重厚な書庫。
「……!?」
そして、そこにいたのは――
「サファ……? ハロルドも! お前たち、なぜここにいる!?」
そこには机に向かい、静かに筆を持って固まっている――
「ファランさま!?」
「やっほー、あにうえ~。ここにいたんだね~」
「ハロルド、お前いったいなにを……」
やれやれを通り越してちょっとよくない気配のファランさまが、ゆーっくり席を立つ。
「まぁまぁ」
けど、ハロルドさまはおかまいなしのマイペースだ。
「ほら~、おちびちゃん。 ここが、王族の禁断の執務室~!」
「ええっ! きんだんのっ!」
「ファラン! お前、なにを――」
「そんなすごいとこにっ、ファランさまがっ!」
ってことはなにぃ! ファランさまが「きんだんのしつむ」をやってるってことぉ?
まさに、今ここでぇ!?
「すごいっ!」
ええっ、そんなことを!? ファランさまが、ここで!?
「ちょ、サファ、そなた違うぞ、これは――」
「ひ、ヒミツですか! ぼく、なにもいいませんっ! ほんとうですっ!」
どどど、どぉぉぉしよおおお!? そだよね、ぼくが見ちゃダメなのだよね?
うぇぇぇ、しまったぁぁぁ!!
きんだんのしつむ、をいきなりのぞくなんてっ! 許されるわけないやつぅっ!!
これは、これは下手したらこのまま処される案件!?
「…………」
困った顔のファランさまが、急にじろー、とハロルドさまを見た。
「お前、適当なこと吹き込んでサファを連れ回すものではない!」
「えー、適当じゃないですぅ~」
「――はぁぁぁ」
どこ吹く風のハロルドさまに、ファランさまが盛大なため息。
「いつものようにあちこち歩き回ってるだけならともかく、サファを連れ回すなど!」
「いいじゃないですか~。ちびちゃんも楽しんでたんですから~」
「…………」
ちらー、とファランさまの目がこちらを向く。
「あわわ、ちが、あの――」
わーーん、ごめんなさいぃぃ……。
「わかっている」
ビクビクしてたら、ファランさまが、かまわん、よいよい。みたいにうんうんした。
「ハロルド! お前が好き勝手連れ回してるだけだろう! 少しは反省しろ」
「え~~」
えっと、ぼくはまだ怒られてないかんじだけど、先に謝っておいたほうがいいよね? ね?
「あの、あのファランさま……」
「どうした? 心配せずともそなたに怒ってなどおらぬぞ」
「あ、でもあの、大事なお仕事のおじゃましてごめんなさい……」
「そなた……」
サファさまはこちらにきて、肩をぽんぽん、としてくれる。
「サファはその年でそのような配慮までできて、えらいな」
「えへ……」
あ、ダメ。ぼくったら褒められるとすぐ、えへっとなっちゃう。
「それにひきかえ、ハロルド、そなたは……」
ハロルドさまに目を向けたファランさまが、はぁぁぁぁ、と、また特大ため息を放出。
「少しは落ち着いたらどうだ」
「兄様が落ち着きすぎなんですって、その年で」
「まったく……サファは連れ回されただけなのにこれほど配慮ができ、お前は好き勝手連れ回してその態度」
ハロルドさまに向けた目が、ぎろ、となる。
「これほど小さい子と、大きなお前で、この差だ。よく考えろ」
「まぁまぁ、い~じゃないですか、そんなこと~」
ハロルドさまはしらない顔で、するるー、とさっきまでファランさまがいた机に近づく。
「また、侍従もつけずに、こんなところに隠れて公務ですか~?」
書類をパラパラみながら、へらへら~っと笑う。
「兄様だって、じゅうぶん自由に――」
「黙れ」
「ぴえっ」
へらへらのままのハロルドさまの代わりに、なぜかぼくがびくっ、となる。
「ああ、驚かせてすまない」
「……?」
ファランさまはかすかににこ、としてぼくの手を取る。
「ハロルドの付き合い、ご苦労だったな」
「いえぇ、あのー……?」
「部屋まで送っていこう」
「えっ、でもでも、だいじなヒミツのしつむがっ!」
「あーいや」
ファランさま、うーん、みたいな顔、なにぃ?
「ほらハロルド、お前が適当なことをいうから、すっかり信じ込んでしまっているじゃないか」
「えー、別に間違ってないでしょ~」
「なにが秘密の執務室だ。ここはただの、予備執務室ってだけだろうが」
「えっ」
秘密、じゃない……?
「……そういうわけだ、サファ。ハロルドがすまないな」
「い、いぇぇ……」
そっかぁ、ヒミツじゃないんだぁ……。
「ほら、そのようにガッカリするな。この公務が落ち着いたら、またどこか案内してやろう」
「わ、ありがとうございます!」
安全安定の、ファランさまの楽しい王宮探索!
「ふふー、たのしみですー」
「ああ。もうすぐ落ち着くからな」
にこーのファランさまがぼくの手を握り直す。
「では行こう」
「はぁぁい!」
「あ、じゃあ、ぼくも帰ろ~っと」
「待て」
「え?」
「ハロルド、お前はその机の確認済み書類を、政務官に届けろ」
「えー、やだよー。あの人こうるさいんだもん」
「真面目な政務官にそのような言い方をするな」
「はあーい」
「わかったなら、その種類を今すぐ届けろ。いいな?」
「え~~、もうわかったよー」
「待たせたな、サファ。行こうか」
「はい!」
手を引かれて部屋の外に――
「あ、ハロルドさま! あそんでくれてありがとうございましたぁ」
まぁ、いちおうね、いちおう。遊んであげたような気もするけどね、ぼくがね。
なんていうか、立場上ね。礼儀と好感度重視でいこう、うん。
「どういたしまして~。またねえ」
ハロルドさまがひらっと手を振るので、ぼくも空いてる手をひらひら。
まぁまぁ、ぼくが遊んでもらったことになってけど、まぁね、うん。
楽しくなかったこともないからまぁ、よしだね、うん。
「では、行こうか」
「ふぁ、はぁい!」
ふいに頭をよしよしされて、ふぁっとなる。えへへ、久しぶりのファランさまと一緒~。
たくさんたくさん歩いたのに、帰り道のぼくの足はちょっとうきうきだ。




