第37話 ハロルドさま流って、独特
そこにあったのは――
「お……お庭の噴水……が、みえ……る?」
「そ~、見慣れた庭にとうちゃ~く」
「……え?」
ただお庭の裏に出るだけの、道……?
「え、これ、秘密の通路……?」
「うん。みんな表の道を通るから、ぼく専用の通路なんだ~」
「あの……?」
「多分みんな忘れてるから、秘密の通路~」
「……え、それって」
みんな、使わないだけぇぇぇ!!
***
「じゃあ次は、とっておき中のとっておきだよ~」
「えぇ……」
ぼくもう、裏口とかはいいかなぁって、思ったりしてー。
「今度のはすごいよ。王族しか入ることができない、隠し書庫」
「……えっ、なんかすごい」
「じゃ、しゅっぱ~つ!」
「え、え――」
どこどこ歩いて、あちこち曲がって、まだどんどん歩いてたどり着いたのが――
「わわ、すごそうなとこ!」
誰も通らない静かな通路の奥にある、重厚な扉。
「さあ、開けるよ」
「は、はい……」
ごくり……ここにはいったいなにが。
「ほら、見て~。すごいでしょ」
「わわわ。すごい数の本!」
なになにこれぇ! もしかして、秘密の本とか、禁断の魔術書とか!?
「みみみ、見てもいいですかっ!?」
「もっちろん。好きにどうぞ~」
「わ、ありがとうございますっ」
ととと、と本棚によっていって、そこにある本のタイトルを――
「……あれ?」
『カーミア王国史:公式編年記』
『カーミア王国行政概論』
『軍略と統治:カーミア王国の戦術と政策』
な、なんか思ってたんと違う……。
いやいや、他のとこを見てみたらきっと――
『カーミア王国の貿易と経済政策』
『王権と法の基礎:カーミア王国司法制度』
『建国の理念と運用:統治者のための必読書』
『カーミア王国宮廷記録:儀式と慣習の実務手引』
『近代カーミア王国:改革と未来への展望』
「…………」
なるほどー。ぜんぶ、そういう感じか、うん。
「なんか政治とかのお仕事に使いそうな……」
「うん。これ、王族専用の勉強用書庫だからね~」
「な、なるほどー」
そういう、ね。
ぼくの勝手なワクワクの行き場っ!
「よ~し、じゃあ次行こうか!」
「えっ、まだあるんですか?」
まだ行くんだぁ……。今後こそ、ほんとのほんとにもういいかなって。
「もちろん。今度は、ぼくだけが知ってる王宮の最深部へ行くよ~」
「さい、しん……ぶ……!?!?」
な、なにそれぇぇぇぇ!?
えっ……それはちょっと――
ちょっーとだけ気になるぅぅかもぉぉ!
「さあ、こっちこっち」
「な……なんかすごいグルグルですね!?」
「うん。らせん階段だからね~」
そ、それはそう!
「これを最後まで降りていったら……そこが、王宮の最深部」
「……ごくっ」
あ、なんか緊張したらのどが。
じ、じゃあこのドリルみたいな階段を降りたら本当に、お……王宮の一番奥に……?
「ちゃんと、てすりつかまってね。僕の後ろからくるんだよ~。落ちても受け止めてあげるから」
「は、はいっ」
ありがたくもちょっとこわい。王子様に体当りして一緒に落ちたら、処刑じゃすまないのでは? みじん切りの刑では?
「ひえっ」
こわいぃぃぃ。おち、落ちないように行こう、うん。
「グルグル――」
王宮の奥の奥へ、ぐるぐると進む。
「グルグルグルグル――」
「こらこら、そんなグルグル言わないの~。なんか目が回りそうでしょ」
「あ、ごめんなさい。なんか、すごくずっとグルグルだなって思って」
何段も何段も階段を降り、何回も何回もグルグルして。
「たくさんグルグルがグルグル――」
「ほら、もうちょっとだから」
何周も何周も階段を降りて、ドリルになった気持ちで階段を降りに降りて。
そして、ついに――
「とうちゃ~く! おつかれさま~」
「はわ……こ、ここが王宮の一番奥っ!?」
いったい、どんなすごい場所なんですかっ!?
「ほら、ここだよ。すごいでしょ」
ん……?
「……ここ、なんですか」
目が、ぱちくりだ。
「ふふふ、すごいでしょ~」
「え、あの……」
「こんなとこ、他にないもんね。びっくりするよね~」
「え、っていうか、ここって――」




