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第17話 お礼のドキドキ長ぁ~い旅

「ケークアさんと、ケーキの職人さんたち!」

「は、はい!」

厨房のちょっと広いとこにズラッと並んだ、おそろいの制服を着た職人さんたちが、「なんだこれ」と「え、なんかまずいことした?」みたいなのが混ざった顔でこっちを見てる。


(大人の人たちに、めちゃ見られてるぅぅ……)

だ、だいじょうぶだいじょうぶ。すごくいいよぉぉ~ってう言われたり、ありがとぉぉぉって言われて嫌な人なんて、どこにもいない……はず。多分。


「おはなばたけのケーキと12色のっ――」

ちゃんとここにくるまえにノートを見返して覚えてきた。カンペ見ながらじゃ、うそっぽいもんね。


「……っ、かわいいデコレーションのケーキ」

くっ、なのにちゃんとした名前、わすれたっ!不覚ぅ。


「とってもとってもきれいでびっくりでした! お花畑がこまかくて、お花一つ一つすごくかわいくて、ずっと見てたいから、食べるのもったいなくて、困りました」

「はわ……ありがとうございます……」


はわ、って言った? え、なんかガチガチじゃない? だいじょうぶ? 迷惑とかない?

急にこんなこと言われると驚くかもだし……。でも! ここまできたらちゃんと言うよー。


「でも、食べないのももったいないよって言われて、それで食べました!」

「ど、どうでしたか……?」

「お口に合いましたでしょうか……?」

身を乗り出して聞いてくれるのちょっと嬉しい。これはぁ、きっといい感じのリアクション。


「お口、合ったというか……」

しまった。想定問答とかやってなかったぁ。

「……!」

なんて答えよ、って迷ってたら、なんかガチガチの皆さんがガチンがチンに進化?してた。


「あのぉ、お口に入れたら、びっくりして、お口がおはなばたけみたいになりました」

「……?」

ど、どうしよう。ぼく、アドリブダメだよ。全員、顔が?になっちゃった!


「あの、あのね。お口に入れたら、あんまりおいしくて、びっくりして、お口の中がおはなばたけみたいに幸せになったの。だから……ありがとうございますって」


「…………」


……あれ? 今、時間止まってる? え、大丈夫そう?


「あの――」


「うおおおおお!!」

「……!?」

おたけび? 急なおたけび??


「わぁぁああ、ありがとうございますぅぅぅっ」

「うれじいぃでずぅっ」

「……?」

「え……ちょ、ちょ。なんで、なんで泣くのぉ。嫌なこと言ってないよぉ?」


まさかぼく、なんかへんなこと言った? 仕事場にお邪魔して職人さんをいじめたとなったら、一大事! ぼくのイメージと今後に影響する!


「あわわわ、泣かないでぇ。大丈夫だよぉ、ぼく、ありがとうしにきただけだからねぇ」

急いで職人さんのそばにいって、背中をトントン。


「うぅぅぅ……あり。ありがとうございますぅぅ」

なのに、ますます泣くのなんでぇぇ?


「あわわわ……泣かないでぇ? ね?」

どうしようどうしよう。焦りながらひとりずつ、なでなでするしかないぼく。無力、かつ無策。


「……っ、今まで長い間やってきて、こんなにまっすぐに褒められてのは、うっ……はじめてです」

「なんでぇ。こんなにすごいのにぃ。たくさんいってもぜんぜん足りないくらいよぉ?」

「ううっ、ありがとうございます」

あれかな、ケーキみたいなデリケートなお菓子を作る職人さんは、こう繊細で感激屋さんなのかな? ともかく、ぼくが嫌なこと言ったんじゃなくてよかったぁ。


「さあ、サファさま。そろそろお暇しましょうね」

なんか微妙に収集つかなくなってきたのを察した、侍女さんがそっと促してきた。

「あ、そうね。お仕事お邪魔なっちゃうね」

「いえ、そんな! 邪魔だなんて!」

あらぁ、ありがとぉ。でもね、もうね、帰らないとね。


「お仕事なのにお話ししてくれてありがとぉ。がんばってねえ」

「はい! 頑張ります!」

え、そんなシャキーンてならないでいいのよ! ぼく、ただの5才だからね! なんもない、子どもだからね!


「じゃあねえ、ばいばーい!」

「はい! ありがとうございましたああ!」


チョコレートいろいろのカカオールさんたち。

「身に余る光栄でございます。殿下」

やだぁ、そんなかしこまらなくていいのにぃ。


「お言葉を胸に、今後より精進いたします、殿下」

ちょっともぉ、なんか照れちゃってムズムズするからぁ……えへへ。


キャンティとボンボンといろんな飴の、キャンディスさんたち。

「まあ……わざわざ私どもにお礼を……? まぁまぁ、なんてこと――」


ずっと、まぁまぁ言ってる。

「まぁまぁ、頑張っててよかったですわ……うふふふ、ありがとうございます!」

うんうん、なんか嬉しそうだからよし。


サブレとクッキーの、サブリナさんたち。

「きゃぁ、お気に召していただけたようでなによりですー!」


にこにこ楽しそーでよかったぁ。


「実は新しい自信作があるんですの。今度お作りしますからぜひ召し上がってくださいー!」

「わぁぁぁ、たのしみぃぃ!」



***


「ふぅぅぅ、これでぜんぶ。ね?」

「はい。王宮専属の職人様方にはすべて直接お礼をお伝えし、カードをお渡しされましたね」

「街の職人さん方にも、すでにお手紙送付の手配済みですわ」

「かんっぺきです、サファさま」

パチパチパチ、という拍手が3人と、あと部屋の向こうの方からも。


「うふふふふ」

一仕事を終えた気分。とりあえず、今日会った職人さんたちみんないい感じでよかったねえ。気難しい人とか、子どもが味なんかわかるのか?みたいな人とか、仕事の邪魔するなみたいな人とか全然いなかった。

とりあえず、見た感じの雰囲気では。


「…………」

え、大丈夫だよね。みんな大人だから合わせてくれただけかもしれないけど、嫌な感じではなかったよね。表面上は。


「…………」

ほんとはめちゃなんだよめんどくさいな、子どもの相手させて。とか思われてたらどおしうよぉぉ。


「あのぅ……」

ちょっといい気になってそっくり返ってた背筋が、しょんと縮む。

「ぼく、じゃまじゃなかったかなぁ? だいじょうぶと思う?」

「まぁ……!」


そしたら、3人息を合わせて「まぁ」の顔になる。

なにぃ?

まさか……「今さらそんなこと? わかってなかったんですか?」とか言う?


「そんなこと、あるわけありませんわっ!」

あるわけありません……むむ、どっちぃ? むずかしぃ……


「そうですわ。皆さん、大変喜んでらしたの、サファさまもご覧になったでしょう?」

「うん……でもぉ、みんな大人だからぁ、優しくしてくれただけかも」

そう言ってたら、だんだんそうに違いない、みたいな気になってくる。


「ぐすん……」

ぼくに褒められたりお礼されたところで、別に意味とかないし、うれしくないよね……


「しく……」


「まぁまぁまぁ……」

またいっせいに「まぁまぁ」しだすぅ。

ぼく、今日「まぁまぁ」されすぎじゃない?


「サファさまはときどき、あまりにも心配しすぎですわ」

「え」

「本当に、まっったく必要のないところで」

「そ……」

「ぜっっんぜん問題のないことで」

「そうなの?」


なになに、すんごい強調するじゃん。

「えー、じゃあ、だいじょうぶ? だれもめいわくじゃない?」

「もっちろんですわ」


「みなさんとても嬉しそうで、中には、涙を流して喜んでる方もいらしたし」

「あ、そういえばあのときも、サファさまはなにか嫌なこと言ってしまったのではないかと、心配されてましたわね」

あ、ケーキさんチームのとこ。だってみんな、急にわーってなるからぁ。


「大丈夫ですわ。何も心配なさらずに。私たちを信じて」

「それとも、私たちがなにか誤魔化していると思われますか?」

「う……ううん」

それはないと思う。なんか割と顔に出ちゃうし、そういう点で悪巧みとかへんなことしなさそうで信用できる。


原作でも、良くしてくれてたし。

途中で、ブチギレて愛想つかすまでは。


「…………」


うん。あんまりいらない世話をかけてもダメよね。


「じゃあ、私たちを信じて安心してくださいませ」

「うん、わかったぁ」


いったんそこで疑うポイントはなさそう。

信用されてないって思ったら、ブチギレ期限が早まるかもしれないしね、うん。


「ふふふ、よかったですわ」

「じゃあ、お茶をいれますから、少しお休みなさいませ」

「もうすぐお夕食ですからね」

「はぁい」

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