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第12話【サファの絵本】『お月さまのポケット』

ある、あたたかな夜のことです。

ちいさなうさぎのミーミは、眠れずにベッドから起き出しました。


ふと窓からお空を見上げると、高いところにぽっかり浮かんだまんまるのお月さまが、暗い夜空をてらしています。


「わあ」


じいっと見上げていたミーミは、びっくりして声を上げます。


「お月さまが笑ってる!」

なんと、まんまるお月さまが、ニッコリ笑っているではありませんか。


「お月さま、どうして笑っているの?」


ミーミがたずねると、お月さまはやさしい顔を見せて答えました。


「それはね、ポケットにステキなものをしまっているからだよ」

「ポケット?」

「ほら、みてごらん?」


ミーミはまたびっくり! まあるいお月さまのおなかをよく見ると、そこにはふしぎなポケットがありました。


そして、目をこらしてよーく見てみると、ポケットのすき間からキラキラひかるなにかが、ちょこんと見えかけています。


「お月さま、ポケットにはなにがはいってるの?」


ミーミがきくと、お月さまはやさしくポケットを開きました。


「このポケットにはね」

お月さまは、大事なないしょ話をするみたいに、ひそひそ声で言いました。


「みんなの、とっても大切なものがはいっているんだよ」


お月さまがそっと手をいれると、中から小さな星がひとつふたつ、浮かびます。


「これはこいぬのコロが、だいすきなおもちゃでお友達と遊んだたのしい気持ち」


つぎに、ふわふわの光のかけらがぽんっと飛びだしました。


「これはリスのチッチが、はじめて食べたどんぐりケーキのおいしい味のきおく」


「わああ」


目をかがやかせるミーミに、お月さまはそーっとポケットの中を見せてくれます。


「ほら、他にもまだまだたくさん」


そこには、みんなのうれしかった気持ちや、たのしかったきおくが、いくつもいくつとキラキラとかがやいていました。


「わあ……! みんなのだいじなもの、こんなにいっぱい、お月さまがまもってくれているの?」


おつきさまは、やさしくうなずきました。


「うれしいこと、たのしいこと、大すきなきもち…… なくならないように、ちゃんとここであずかってるんだ」

「すごい……じゃあみんなあんしんだね」


ミーミはうれしくなってぴょんぴょんしながら言いました。


「あれ? でも――」

ミーミはひとつふしぎに思って、首をかしげました。


「その、みんなのたいせつなものたちは、これからどうなるの?」


お月さまは、すっかりまっくらになった夜空に、つぎつぎにたいせつなものを浮かべながら、ミーミに笑いかけました。


「夜のあいだは、こうして星にして空にうかべているんだよ。だからみんな、夢のなかでまた会えるんだ」

「わああ……すごい」


ミーミはそっと、胸に手をあてました。


「じゃあ……ぼくの“たいせつ”も、お月さまのポケットにあるのかな?」


お月さまは、ニコッとわらって、ミーミのほっぺにちいさな光をふらせました。


「もちろんだよ。ミーミがしあわせだったきおくは、ぜんぶここにあるよ」

「あっ、これは――」


ミーミはその光にそっとふれながら、パチパチとまばたきをしました。


「ママとパパと、ピクニックでにんじんケーキを食べたときのおいしい、とたのしい、の気持ちだ!」


お月さまは、そうだよ、というようにちいさくほほえんでいます。


「そしてね、あさひがのぼるころには、たいせつなものはみんな、またポケットにしまわれて、おやすみするんだ」

「わあ、そうなんだ……!」


ミーミは不思議な気持ちで、夜空に浮かぶみんなのキラキラなたいせつを見上げました。


「じゃあ……」

そして、お月さまをまっすぐ見つめてたずねます。


「今の、お月さまとお話したこのうれしい気持ちも、キラキラの星になってお月さまのポケットにしまわれるの?」


「ふふふ、そうだよ」


お月さまが目を細めてふんわりとうなずきます。そのポケットの中からは、またひとつ、小さなキラキラの星がうまれました。


その星は、くるくるとミーミのまわりをまわりながら、キラキラと光をふりそそぎます。


おつきさまのポケットには、みんなのたいせつなものがいっぱい。 そして、ミーミのうれしい気もちも、キラキラとかがやいて、そらにのぼっていきました。


お月さまは、夜空のもっと高いところにのぼりながら、ミーミを照らして言いました。


「だからね、ミーミ。きみのたいせつなことを思い出したいときは、空を見あげてお願いしてごらん」


だんだんと高くとおくなりながら、お月さまの言葉はしっかりミーミにとどきます。


「お昼でも、ぼくが空に見えなくても、ずっとそこにいるよ。きみがおもいだしたいときは、いつでもこのポケットからだしてあげるからね」


「うん、わかったよ、お月さま! ありがとう」


「おやすみ、ミーミ」

「おやすみなさい」


ミーミはしずかに空を見あげ、お月さまがすっかり遠くなるまで見おくっていました。


おしまい。


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