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手紙  作者: 明斗
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第五章 ~視線~

~The Letter~

第五章


-視線-


「最近2年の奴ら

やたら見てこね?」


体育の授業中,

貞利がささやいてくる。


「え?」


恭弥は,

何のことか理解できず

首をかしげた。



「……2階見てみ」


貞利は,

真っ直ぐ前を向きながら答えた。


言われるまま振り返り,

恭弥は2階を見上げる。


……2年の男子が,

2階から野枝瑠たちを

見下ろしていた。


「ほんとだ」


恭弥は,

すぐに目を背け

前を向いた。



「あれ多分

……野枝瑠狙いだよ」


「なんでっ?」


貞利の発言に驚き,

恭弥は声をあらげた。



「気付いてなかった?

最近あいつら

廊下とかで野枝瑠とすれ違う度に

騒いでるんだぜ。

“野枝瑠ちゃん”とか言ってるの

聞こえたこともあるし……」


貞利はニヤニヤと微笑んだ。


恭弥は信じられない気持ちで

軽く笑い飛ばす。


「まぁ見ててみ,

多分だけどな」


貞利は,

笑みを浮かべる。


……まさかっ。


再度,

2階に目を向ける。


その後も,

恭弥は彼らの視線を感じながら

……授業を受けたのだった。


「……ほら来た。

こんなとこ2年が

歩くこと自体おかしいだろ」


移動教室からの帰り,

廊下で貞利が呟く。


前を見ると,

数人の男子が向こうから

歩いてきている。


野枝瑠は

……後ろ。



だんだんと近づくにつれ,

野枝瑠は顔を伏せる。


少しばかり,

歩く速度も早くなる。



「“野枝瑠”って子

……あの子だろ?」


すれ違った後,

背後から聞こえた声。


ほらな

と言わんばかりに,

貞利が横目で

サインを送ってくる。



「うかうかして

られないな!」


貞利は,

困る恭弥を面白がる。


……日がたつにつれ,

彼らは恭弥の視界に

多く入るようになっていた。


クラスの周りを

うろちょろと

うろつくことも多くなり,

野枝瑠と目が合うと

手を振ることもある。



「佐藤ー!

2年の人が呼んでるぞ」


ある日の昼休み,

友達と雑誌を読む野枝瑠に

壮が近づいていた。


壮の指さす方向を振り向くと,

例の2年生たちが

ドアぎわで立っている。



2年生たちの元へ向う野枝瑠。


アワアワと焦る恭弥の背中を

貞利はポンポンと軽く叩いた。


そして,

耳元で囁く。


「なんかされそうになったら

助けてやれよ」


「まぁ,

少し付き合ってから

断ればいいじゃん」


困りはてる野枝瑠に,

寛子が話かけている。



どうやら

少しの間だけ付き合ってみて,

それから決めるらしい。


「断ればって……

断るとき恐いし」


「いけるって!

“好きな人いる”

って言ってるんだから

理解してくれるって。」


寛子はニッコリ微笑む。




好きな人……


恭弥は複雑な気持ちで

野枝瑠たちの会話から

耳を背けた。



「どうしたの?」


掃除の時間,

恭弥は落ち込む野枝瑠に近づく。


野枝瑠は小さな声で話しだす。



寺辻拓也という2年生が

沢山の友人を連れて

野枝瑠を誘ってくるのだが


寺辻の後ろで,

ギンギンにオーラを放つ軍団が

恐くて誘いを断ることができず,

カラオケの誘いに

うなずいてしまったのだ。



今にも泣き出しそうな

顔な野枝瑠を見て

恭弥は2年生の元へ向かった。


「……あの

野枝瑠なんですが

今日具合悪くして

行けないみたいなんですけど」


野枝瑠から事情を聞き,

すぐに寺辻の元へ駆けつけた。


「だからって,

なんでお前が言いにくるんだよ!?」


「クラスメートですから」


感情的に言葉を吐く軍団に,

恭弥は毅然とした態度で答える。


「お前,

なんも関係ないだろ!?」


突然軍団の1人が

彼の胸ぐらをつかみだした。


「クラスメートですから」


……一瞬で凍りついた空気。

恭弥は,

挑発的にアゴを

突き出して言い返す。


「なんだと!? てめぇっ!!」


胸ぐらをつかんでいた男が

大きな声を上げた。


その時……


「いいから!!」


寺辻が止めに入った。


……首元をつかむ手の力が

次第に抜けていく。



「……じゃあ,

あの子に言っといて。

“早く元気になってな”って」


寺辻は,

少し寂しげな表情を浮かべ

小さく呟いた。




正直恐かった……

野枝瑠の為に

ここまでできる自分。


恭弥は自分が

本当に野枝瑠を愛してる

そう痛感していた。



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