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人間じゃねえ


 ……

 新宿革命区。『罰天グループ』の所持している事務所の前に、

 白パーカーの男が立ち尽くしていた。

 まず二階の窓ガラスが派手に割れている。

 そして、入口から外に向けて、何を引き摺ったらそうなるのか夥しい血の跡が線をひいていた。

 『新宿薔薇戦争』を思い出させる。


 白パーカーが建物の入り口に入ると、『罰天』グループ構成員のうめき声がそこら中から聞こえてきた。

 思わず足元を気にする。そこら中に血の跡があった。

 ふと目をやれば、構成員が壁に突っ伏しており、その顔が壁にめり込んでいる。

 足元には、関節が曲がってはいけない方向に曲げられた男が、声も出さず倒れていた。

 負傷した構成員たちは、合理的に倒されたのではなく、

 あえて必要以上に『痛めつけられて』いたことがわかる。

 ただの『カチコミ』ではない。相当な怨恨をもって誰かが侵入してきたのがわかる。


 ……『お隣さん』か?

 

 白パーカーは険しい顔で、二階の事務所の扉を開ける。


 事務所内の様子はさらに酷かった。

 五人ほどの構成員がいたが、『一つの山』にまとめられていた。全員動かない。


 「びゅう、びゅう」と、人間の呼吸音にしては奇妙なそれが聞こえて、白パーカーは辺りを探すと、

 オールバック男が椅子に縛られている。

 喉には、彼の所持しているナイフが刺さっており、そこから息が漏れている。


 口を開いているがそこは血溜まりになっており、おそらく彼の舌が喉に詰まっているのだ。


 白パーカーは、オールバックのナイフを抜くと、彼は白パーカーを見て叫び、暴れ回った。

 とりあえず会話ができるように、拘束を解く。

 オールバックは、喉の詰まりがようやく解けて大量に咳き込んだ。


 オールバックは、白パーカーを見て完全に怯え切っていた。



「俺だよ。 おい……。何があった」


 オールバックは、白パーカーが知り合いだとようやく認識したと思えば、今度は大泣きを始た。


「なんだよ……!」


「あいつぅぅぅぅ! あいつ! あいつ!! ゴホ……ゴホ……」


「あいつ? 誰だ。『新青龍』か?」


「ゴホ……お前じゃないのお!?」


 全く会話にならない。よほどの恐怖がうかがえた。『薔薇戦争』の時も、こんなに怯えている奴はいなかったと思う。

 

「落ち着け。あんま暴れんな。死ぬぞ」


「ゴホ……ゴホ……あいつぅ……あいつあいつ……ひいいい!! ゴホ……ゴホ……」


「なんだよ! 何を見たんだ!!」


「ちぎれた耳が! くっついたんだよ!!

 俺の目の前で……『グニュ』っつって完全に元に塞がったんだあ!!」


 オールバックは、顔を抑えてのたうち回っている。


「……ああ?」


「アイツ人間じゃねえ! ゴホ……オエ……

 いくら刺しても、撃っても、表情一つ変えねえんだ!! お、お化けだあれは!! ゴホ!!」


 その様子を見て、白パーカーはようやく、事態が飲み込めたようだった。

 オールバックの頭を掴んで、顔を近づける。



「オイ…… そいつ……」


 白パーカーは、フードを脱いだ。彼の顔が顕になる。

 

「こんな顔してたか……?」


 オールバックは、白パーカーの顔を見て絶叫し、そして失神した。


 白パーカーは、オールバックの頭を離し、

 パーカーのポケットからタバコを取り出す。事務所の机の上に転がっているライターを一つ取って火をつけた。


「…… ……あいつまだ死んでなかったのかよ……ゾンビ野郎が……」


 


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