×(クロス)1.純白のネコ耳少女
――7月16日(金) AM07:15、
――PPPPPPPPPPPッ――
普通の賃貸マンションの一室に目覚ましアラ-ムの電子音が鳴り響いた。
「……んあぁ? ああ、朝か……」
その部屋の主・疾風 大地(はやかぜ だいち)は寝起きで朦朧とした意識のまま、けたたましいアラーム音を鳴らす元素デバイスの画面をタッチして電子音を止める。
(……まだ眠ぃ。 昨日は早めに寝たはずなのに何でだ? ……まぁいいか、早速起k……)
そこまで考えて大地の思考が止まる。
起きようと目を開くと大地の隣には昨日寝る前に自分が被ったタオルケットがあった。
ただそれ自体は何の問題もない。
普通に考えてそれだけなら寝ている間に自分からベットの端に追いやっただけだと思うだろう。
しかし問題なのはそこではない。
そのタオルケットは、人一人分くらいの何かを包みこんでいたのだ。
(……どう言う事だ?)
数秒間思考が停止した後、考える。
昨日大地が眠りについた時、ベットの上にこんな大きな物はなかったハズだ。
となればコレは確実に大地の就寝後にベットの上に置かれた事になる。
――モゾリ……――
大地がそんな事を考えていると突然タオルケット……否、タオルケットに包まれた何かが小さな身動きをした。
(????? な、何だ!? 今、動いたぞ? って事はアレか? コレは生き物か何かなのか?)
大地は突然の事に驚き、慌ててベットの上から飛び降りながらそんな事を考える。
それから更に数秒後、大地はデバイスの液晶画面に表示された『AM07:27』の文字を確認して、
(……よし、このままの状態でいても時間の無駄だ。 っつかこんな調子じゃ下手したら学校遅刻するかもしれねぇ。 ……こうなったらあのタオルケット引っぺがす。 変なモン出てくるなよ?)
と考え、ゆっくりタオルケットに近づいていく。
その途中にタオルケットに包まれてる物が再びモゾリと動き、それに対応するように大地もビクッと軽く跳び上がったたりもしたが、何とかタオルケットに片手を掛ける所まではいった。
ただしタオルケットの端を掴んでいる右手は緊張かそれとも恐怖かで小刻みに震えている。
「~~っ、うりゃぁぁぁ!!」
大地は意を決し、勢い良くタオルケットを引っ張った。
するとそこには、
「う、うぅ~ん……」
髪が純白のフードに隠れたフードと同色のローブ着ている色白少女が寝ていた。
「………………はい?」
大地の思考が再び停止する。
「……えっ? エ、エエエェェェェェ!!?」
数秒後、部屋には大地の絶叫が轟いた。
(ななな、何だコレ!!? 女の子!? 女の子が俺のべットの上で寝ている!? しかも結構可愛らしい顔してるし!! 何故? 何で? ってかコレって一体何事ですか!?)
大地がパニック気味にそんな事を考えていると、
「……う、う~ん……ふぁ?」
先ほどの大地の絶叫で眼が覚めたのか、白ローブの少女が眠そうな呻き声をあげながら上体を起こす。
身長などから見て歳は12~14ぐらいだろうか?
その時、少女の頭を覆っていたフードがズレ落ちる。
ベットの上のフードが外れた少女を見て大地の思考は三度停止した。
先ほどまでフードに隠れていた髪は肩まで届くぐらいの少々短めの銀髪だ。
ついでに眠っていた為髪と同じく見えなかった目だが、形はパッチリしたネコ目で瞳は透き通るようにきれいな蒼色である。
色白で在る事も合わせて考えればこの少女は多分外国人であろうという予想が立てるのは容易だろう。
だが、しかし、問題となっているのはそこではない。
「……ネ、ネコ耳ぃ?」
大地の訝しげな声が部屋の中で小さく木魂する。
大地の目の前の銀髪・蒼眼・白ローブの少女の頭頂部にはどうみてもネコの耳にしか見えない物があったのだ。
しかもよくよく見てみるとそのネコ耳の様子は少女の銀髪と完全に同化している様に見える。
(何なんだこのネコ耳外国人少女は!? っつかネコ耳ってなんだ? こんなの付けてる奴なんて普通はいねーだろ? てか妙にリアルだな!?)
大地が心の中でツッコミを入れる。
……すると、
「ふぁ~あ……って、んん? き、君は誰なの?」
白ローブ少女改めネコ耳少女が大きく伸びをした後、驚いたように大地の方を見る。
どうやら今、初めて大地の存在に気が付いたようだ。
……と言うか外国人にしてはかなり流暢な日本語である。
「……『誰?』って……そりゃこっちの台詞だ! お前こそ誰だよ!?」
「え、私? 私はミライ=ミューゼ。 この耳で分かる通り魔術式人造人間なの!」
「ほ、ほむんくるすぅ?」
「そ、魔術式人造人間なの♪」
聞きなれない単語に驚く大地にさも当然の様にネコ耳少女改めミライが自分のネコ耳を撫でながら楽しそうに答える。
「こっちは質問に答えたからそっちも答えてほしいの! 改めて言うけど君は誰?」
「チョット待て、なんだその『ほむんくるす』ってのは? もしかしてアレか? アンタの所属する国の名前か何かなのか?」
「むぅ、そんなの今はどーでもと思うの。 それより君のお名前は一体なんなの?」
謎の言語に大地は少々パニックになっているところにミライの不機嫌そうな声が聞こえる。
「んぁ? オレは疾風 大地。 ごく普通の高校に通っているごく普通の高校一年生だ」
「ふ~ん、ダイチ……ね、分かった、覚えるの」
少女の言葉を聞き、確かに相手にだけ名乗らせて自分は名乗らないは何だが悪いと思った大地は少し皮肉気味に自己紹介する。
その自己紹介を聞いたミライがやっと目の前の人物の名前を確認できた事に満足したと言う様子でうんうんと頷く。
「っつーかそんな事より……え~と、『ミライ』だっけか? とにかくお前は何でここに居るんだ? っていうか玄関のドアはカギ掛かってたハズなのにどうやって家に侵入した? いやいや、それ以前に『ほむんくるす』ってなんなんだ!?」
お互いの自己紹介が終わるや否や大地は矢突き早に質問を繰り返す。
ミライは質問された瞬間はキョトンと大地の顔を見上げていたが少しの間見つめた後、
「え? え? チョット待って? そう言えばここどこなの? ってかベットがあるって事は少なくとも屋根の上じゃないよね? って言うか魔術式人造人間の事が分からないって事は……」
と言ってわなわなと震え出した。
「ちょっと確認させて、ここは東京シティ23の中野区で合ってるの?」
「ハァ? なかのくってなn……ああ、そう言えば2・30年ぐらい前まではここ確か中野区って呼ばれてたんだっけ? 一応は中野区で合ってるぞ」
「中野区って聞いた時のその反応! って事は間違いなくここは科学界なの! わ~い、やったね、逃げ切った~♪」
大地が自分の質問にも答えられてないというのに律儀に質問に答えると、ミライが何故だがハシャギだした。
「ハァ!? 科学界? 逃げ切った? そっれって一体どういう意味だ? っつーか結局俺の質問には答えてねーじゃねぇか!!」
「あ、ごめんごめん♪ 今説明するn……って痛っ!」
大地の言葉を聞き、ミライが楽しそうにベットの上で立ちあがろうとした。
だが、立ちあがろうとした直後足を押さえてうずくまる。
良く見るとミライの足には赤く爛れた火傷傷があった。
「ちょ、お前……その足大丈夫なのか?」
「……っ痛う~~~……。 ……あ、だいじょぶだいじょぶ、大した傷じゃないし」
「大した傷じゃないって……それの何処がだよ! ちょっと待て、今応急セット持ってくるから……」
「大丈夫だって、こうすればスグに治るし……」
ミライはそう言うって手を足に宛がうと何か呟きだした。
「白魔法No,001」
そう呟いた瞬間、ミライの手が白い輝きを放ちはじめる。
「な、なんだよ、ソレ? 手が、光ってる?」
突然の現象に大地がうろたえる。
「これは白魔法No,001・細胞再生魔法、回復魔法の一種なの。」
「ま、魔法ぅ?」
「そう、魔法なの」
大地はあまりに非科学的な言葉に硬直する。
その大地に大してミライが静かに念押しした。
そうこうしている内に光が弱まって消える。
光に包まれていた部分を確認すると、火傷傷は完全に消えていた。
「魔法? なんだよそりゃ? ゲームの世界でもないんだしそんなのある訳ねーだろ? ってか傷はどうなったんだ?」
「もう、質問多すぎなの! 順番に答えるから待ってほしいの! ……まずは魔法の事だけど……」
大地の質問を聞き、ミライが説明を始めた。
ミライの説明によると魔法と言うのは人の体力・精神力などを体内で精製して作られた『魔力』を使用して発動する特殊技術の事なのだそうだ。
そしてその魔法には赤・青・緑・黄・白・黒の基本の六属性+どの属性も持たない無属性があり、発動する為の媒体としては魔道具・儀式・能力の三つがあるらしい。
まずその属性についてだが、それぞれの属性には魔法の性質をあらわす総称があり、赤属性は紅炎魔法、青属性は蒼水魔法、緑属性は翠翔魔法、黄属性は黄土魔法、白属性は白属性、黒属性は黒魔法と呼ばれているらしい。
六つの属性にはそれぞれ特性があり、
・赤は炎の発生・操作魔法と闘争心の刺激などの効果がある攻撃性の高い魔法が多い。
・青は水の操作・状態変化魔法と体の硬化やバリアの精製など防衛能力の高い魔法が多い。
・緑は気流の操作魔法と物体に掛かる重力の変化などによって行動速度を変える魔法が多い。
・黄は土・砂など鉱物の操作魔法と術者以外の者の筋肉・精神などに働きかけて強化・補助する魔法が多い。
・白は様々なモノを再生・再構築する事に特化した魔法が多い。
・黒は様々なモノを破壊・分解する事に特化した魔法が多い。
といった性質を持っているらし。
ちなみに先ほどミライが使った魔法は白の再生の力を使った回復魔法の一種だそうだ。
そしてその属性は人によって相性がありその人ごとに得意な属性があるらしく、強力な魔法などになると自分の属性と合っていないと使えなかったりするそうだ。
そしてに魔法発動の媒体についてだが、此方は主に大きく分けて3タイプに分類されるらしい。
まず一つ目は魔道具に魔力を注入して魔法を発動する魔道具タイプ、二つ目は魔法陣や詠唱などで周囲をその魔法を発動しやすいように環境を整えて発動する儀式タイプ三つ目は特に準備もせずにいきなり発動させる能力タイプの三種類があるそうだ。
その三種類の中でも能力タイプはノーモーションで発動できる利便性はあるものの相性が合っていないと発動させるのも難しいようで、実際は魔力さえあれば誰でも自由に使える魔道具タイプや相性が合っていなくても発動可能な儀式タイプの魔法の方が主流になっているそうだ。
「と、言う訳なの。 ……ここまでの話に対して何か質問はあるの?」
「えっと……まず一つ言わせてくれ……信じられない、っつーか何だその電波説明は!? 魔法とかありえねーだろ!」
大地は説明を終えて満足気味なミライの言葉を一蹴する。
「なっ、信じられないって何なの!」
「うるせー! そんな電波を信用したらそれだけで廃人確定だ!」
「でもだったらさっき私の火傷が治った時の事はどう説明する気なの!?」
「うっ、それは……」
そこまで言って大地の言葉が詰まった。
確かに先ほどの現象には手を宛がう以外の何か特別な事をした様子もなければ何か治療用の機械が使われた形跡もない。
それこそ魔法みたいな出来事だった。
「ほらほらどーなの!」
「……くっ……。 ……分かった、百歩譲って魔法ってのが本物だとしよう。 だとしてもお前はなんでウチの中に居たんだ?」
大地が先ほどまでと違ってマジメな顔になって聞く。
それに対してミライは一瞬キョトンとしたような顔になって、
「ああ、その事? それは私が追われてて、逃げる時にたまたまここ着いちゃったからなの」
「は?」
予想外の答えに大地の思考が今日が始まって五度目の停止をした。
と、言う訳で第一話如何でしたか?
なんか話の構成はちょっと可笑しいし、中途半端な所で話が終わってますね(汗)
批評やダメな所の指摘などでもいいので感想・評価宜しくお願いします!!