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08 【邂逅⑤】

プリシラの魔窟…

オーネの街から2日ほどのところに入り口がある。

大世界の創世の頃は聖地であったという。

だが、この紫の世界に種が蒔かれ、ひとが現れ、先住生物が妖魔というものに変化してゆく過程で、聖地は妖魔の巣窟となった…らしい。



「見てきたようにいろいろ言う奴がいるが、どこまで本当なのかは謎だよ」


トーティアムはホタルを加えた4人に語る。


「カリュも途中までしか行けなかった…手酷く…というか、弄ばれたと言っていた」


彼がちらと背後を見ると、全身をフード付きの外套ですっぽりと隠したカリュがそこにいた。


「随分前の話よ…」


カリュは口惜しそうに歪めながら、そう言った。


「でも…今でもその恐怖は忘れない」


トーティアムは席を立ち、カリュの背をそっと抱いた。


「大丈夫……」


小刻みにカリュは震えていた…植えつけられた恐怖が、その時を思い出すたびに彼女にのしかかる。

艶やかな唇から色が失われていた…

外套から右手が現れ、トーティアムの服の裾をつかむ。

彼がカリュを抱きしめると、彼女の唇に艶が戻り、小さく吐息を吐いた。


「……」


カリュの耳元で彼が何かを囁き、彼女はコクンと頷いた。


「すまなかったね」


トーティアムは、呆気に取られその様子を見詰めていた4人に頭をさげた。


「いえ、いいんです」


アランがかすれた声で応えた。


「かなり前の話なんだが、カリュでさえこんな具合なんだ。いろいろな話はあまり当てにはならないと思った方が…」

「賢明ね♪」


ホタルが同意するようにグラスを掲げる。

彼は笑みでホタルに応え、続きを話し出す。


「ただ、この魔窟の最深部に紫の宝玉と宝珠があるという話は無視できない」

「そうですね…ギエンで情報を集めましたけど、ただでさえ神秘的なこの紫世界でも…」

「とびきり、特別の怪しい薫り~~」


キッカの真剣に話し出したのを、マコがひきとった。


「宝珠はともかく、宝玉は全部集めないと…」


思案気なアランに、彼が諭す。


「いや、宝珠もそろえる必要はあると思う」


彼は部屋の隅に立てかけられた、『世界を御する杖』を視野の隅に捕らえながら続けた。


「どうやら…これは、カリュが言ったことなんだが…俺達が出会ったのは偶然ではないらしい」

「?」

「誰かの意志なのか…なにかの導きなのか…宝珠を飾る武器を持つ君たち、そして、キッカ君のもつ『世界を御する杖』」


アラン、キッカ、マコ、ホタルが顔を見合わせる。

アランは赤の世界で生まれ、彼女の持つ長剣の柄には赤の宝珠が光っている。

マコの短剣の柄に、丁度宝珠が埋まりそうな穴が開いている、

そしてホタルの弓も同じような窪みがある。

キッカの髪飾りは、彼女の家重代に伝わるものだが、その中央にも窪みがある。

カリュは外套から自分の太刀を見せた。やはり宝珠をはめ込めるような穴がその柄にあった。


「で、これだ」


トーティアムは上着を脱ぎ、自分の右の二の腕にはめた金属製のアームリングを見せた。


「これは俺の曽祖父のもっと前から、俺の家に伝わっている代物だよ」


リングの中央に金色の宝珠が光っている。




3日の間、トーティアム、カリュ、アラン、キッカ、マコ、ホタルの6人は今後の方針を話し合い、1年後の再会を約した。

アランはマコと伴に赤の世界へ戻って、修行に励むことになった。

赤の世界には彼女の剣の師がいた。

キッカはトーティアムとカリュに同道し、ホタルと伴に青の世界に向かうことになった。


「アラン、マコ…ごめんね」


キッカはずっと一緒だった2人にひと時の別れを告げた。


「強くなってくる!」

「あたしも、もっといろんなもの作れるようになってくるよん♪」


アランは決意を胸に、マコは相変わらず飄々として、彼らと袂を分かった。




オーネの街の門前で、左右に分かれた彼ら6人をじっと遠目に見送る目…


「お姐、どうしよう?」

「そうねぇ…今まで通り、あの男の組を追いかけましょ」

「でも、あの魔導剣士…カリュっていったっけ…強いよぉ?」

「うふふ…あいつらを出し抜くことは可能だわ。だって、これはあたし達が持ってるもんね♪」


帯の間から袋を取り出す。

手のひらに中身を出した。


「いつみても綺麗ねぇ」


手の上で橙の宝珠が橙の太陽の光を反射した。




そこは、悠久の時をゆったりと刻む小さな鼓動のように、リズミカルに水滴が水面に波紋を作る…

しかし、時間というものがここには存在しないが如く、永遠の澄んだ静寂しかなかった。

水面の中央に聳える巨木は、大きく無数の腕を広げるように枝を伸ばし、青々と瑞々しい葉を繁らせている。

巨木の頂上付近は結晶が多い尽くし、優しく煌めいていた。



さわさわと葉が揺れる…



小さく、微かな揺れだった…



しかし、この悠久の場所において、その揺れは大きな変化だった…



巨木の結晶が花びらのように開き、その中に少女がいた。

黒く艶のある髪が肩まで伸びている。

黒目がちで、大きな瞳。

小さな唇がかすかに笑みを浮かべ、頬がほんのりと染まっていた。



『世界が……動きます……』



ティアラの飾りの宝玉が結晶の煌めきを反射して、キラキラと光る。


『皇女様がお目覚めです』


巨木の周囲に…いくつもの水晶石が水面から姿を現した。


『皇女様のお目覚めです』


結晶の花びらの中にある少女の両手が、細い指が胸の前で交互に組また。

再び手を大きく広げる…



『世界が…動きます…良き者と、悪しき者が、ここへ来ます…』



水晶石それぞれから人影が現れ、巨木の根元に跪いた。



『皇女様…御命令を…』



少女はそれらの人影を見下ろした。



『皇女ヒナ様、御命令を!』



少女の唇が何か言葉らしきものを紡いだ。


『承知っ!』

『姫様の御命令のままに!』


人影が一斉にその場から掻き消えた。





【続】

さぁ…更に登場人物増殖の気配(笑)


てか、増殖中~~(-。-)y-゜゜゜

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