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47 【攻防⑨】

ー白世界 レディマ氷河ー



鉱物性生命体飛行ユニット『ミーシャ』が着陸した場所は、レディマ氷河のかなり上流地点だった。


「氷河の源まで、まだ遠いの?」


アランはミーシャのブリッジで地形探査をしながらセヴィナに尋ねた。


「そ~ねぇ…たぶん…」

「たぶんって…頼りないなぁ」


アランが顔をあげてセヴィナを見た。


「ごめんね…この先には一度しか行ったことないのよ」

「あらま…」

「しかも吹雪に巻かれて必死で走って…だから目印もなにもまったく…」

「ん~~~しょうがないね。じゃ、じっくり探しましょ」


明るく答えたアランは再び端末とにらめっこを始めた。

ミーシャは氷河に沿って飛行する。


「ちょっと…」


シンリィの声が震えた。

その異常さにセヴィナとアランが、彼女が見ていたモニターを覗く。


「これって…」

「どうなってるのよ?」


3人が見つめるモニターに投影されているものは、極寒の地にはありえない光景だった……


「ジャングル……かな?」

「と思うわ…」

「何故?」


アラン、セヴィナ、シンリィは目をこする。


「真っ白なジャングルやなぁ……」


マウロが溜息をついた。

モニターに映されたジャングル…木々の葉はマウロが言ったように真っ白ではあった。

しかし色が白いだけで立派に繁茂し、地表を覆い隠すジャングルに違いなかった。


「たいがい…何でもありだわね」


シンリィは投げやりに言葉を投げた。

アランが端末に戻り着陸条件の揃った場所を発見した。


「ともかく、行くっきゃないわね」


達観したシンリィの目が真剣に輝く。


「だね…」


セヴィナも杖を持ち直す。


「私たちが降りたら、ミーシャは上空待機させるね」


端末操作をするアランに2人が笑みを向けた。




白いジャングルから流れ出す氷河。

その中央部に標高の高い山がひとつ…というよりは、その山を囲むようにジャングルがある。

広大な面積を占めるジャングル。


「樹海といってもいいかもね…」


アランはモニターを見ながら感想をもらした。

ミーシャは山の麓にある窪地に着陸した。

紫白色の太陽は寒気に凍えたひんやりとした陽光を発している。

全てが雪と氷と霜で彩られている。


「つまり真っ白ね」


白い息を吐きながらシンリィが毒づきながら、周囲の様子を探り出した。


「着陸直前の探査結果では生命反応はなかったけど…」


アランも二刀を手にじっと気配を探る。


「土も…白いわ」


故郷とはいえ初めて足を踏み入れたこの地に驚きを隠せない。

セヴィナは用心深く杖を掲げて防御魔法を展開した。

偵察に出て行っていたシンリィが戻ってきた。


「どう?」

「山道を見つけたわ。他には樹海へ向かっている細い道と、氷河に沿った道の3本ね」

「氷河の源はあった?」

「山の裾野のすっごく大きな湖から流れは始まってるみたい」


古い友人に彼女は地図に印を付けて見せた。


「山登り…しようか」


アランが山頂を仰ぎ見る。


「それしかなさそうね…」


セヴィナとシンリィが諦めた顔で同意する。

山頂はうっすらかかる雲の向こう側から彼女達を見下ろしていた。




ー赤世界 失われた都市ー



エレベーターのロックが解除され、4人はそのまま最上階へ御招待された。


「直通…か」


レキーサが苦笑する。

最上階に到着する。

有無を言わさず扉が左右に割れる。


「ペントハウス…かな?」


そこは研究施設と居住施設が併設された空間だった。


「なかなか趣味は宜しいみたいですわね…」


アプラナが部屋の調度品や壁に架かっている絵画を丹念に見ている。

マコはピカリアと研究施設側へ入り、ファイルやその場に散乱している書類を読み始めた。

居住施設は全面に透明の強化樹脂製の窓がはめられていた。


「…『失われた都市』が一望ですわ」


アプラナはしばしその光景に見入っていた。

外は赤い月が支配していた。


「わかったわよぉ~」

「何が?」

「ここに来て襲ってきた連中のこと」


マコは書類と、たった今、完全無菌室から取り出した試験管を見せた。


「この中にウィルスがいるのよ」

「わっ!」


試験管に顔をくっつけていたレキーサがのけぞった。


「大丈夫。今は休眠してるからぁ」

「で?」

「死者がこのウィルスに感染してああなってるみたいよん」

「ふ~ん」

「この『失われた都市』はオーヴと言うらしいわ」

「どうやら『扉崩壊』以後、『世界争乱』までは結構繁栄してたところだったみたい」


マコに続きピカリアが端末から引っ張り出したデータをアウトプットして目を通している。


「実験途中にこのウィルスが盗まれて、都市機能はその後停止」

「なぜ?」

「盗まれたウィルスが町に散布されちゃって、住民が感染して共食い始めたんだってぇ…」


マコはおぞましいものを見るように、夜の町を窓越しに見る。


「黒の死者がここの指導者みたいよ」


ピカリアの発言に3人はぎょっとする。


「さっきの巨人や3匹の化け物…そのウィルスを人工的に投与されて、人為的制御できないか実験してたみたいね」

「失敗作…ですわね」


アプラナは苦いものを吐き出すように横を向いた。


「!」


その彼女の視界一杯に!

死んだはずの巨人が…身体に3匹の化け物を同化させつつ窓の外に張り付いていた。

彼女達は反射的に窓から離れて身構えた。



ぐわぁん



窓を殴る巨人。

強化樹脂の窓は相当の衝撃にも耐えうる素材のはずだが…



ぐしゃああん



あっという間に窓を殴り破り、中へ入り込んだ。

頭は左右に割れていたが、それが同化した化け物の頭になっている。


「気持ちのいいものではありませんわね」


こみ上げる不快感を耐えてアプラナが剣を中段に構えた。

チラリと天井の高さを測り、ソウルソードを脇に引いたピカリア。

尖塔の最上階にあるだけに、窓が割れるとかなり強い風が吹き込んでくる。

風下にいる彼女らに、化け物巨人がにじり寄る。

右胸の機械は停止しているようだが、そこにもう1匹の化け物の頭が瘤のように生えている。

腕が振り上げられると、伸張したそれが彼女達へ襲いかかる。

素早くそれを避けたものの、伸び縮みする腕の攻撃は間断なく繰り返され近寄ることも出来ない。

研究施設へ転がり込んだマコは端末を操作する。

モニターに巨人の透過データが出た。


(ここか…でも、今もそこ?)


とりあえずの弱点らしきものを発見したが、化け物と同化変体した現在、それが正しいかは大きな疑問だった。

障害物を突きぬけ3人を追う巨人の腕がピカリアを捕獲する。

そのとき一瞬、動きが止まった。

もう一方の腕がレキーサに向かったのを目の隅に確認したアプラナは、剣に炎を発してピカリアをつかむ腕を切り落とした!

どさりと力を失った腕が落ち、ピカリアが解放される。


「サンクス!」


彼女のソウルソードが一直線に巨人の片足を貫き切断する!

マコは必死に小瓶に薬品を調合していた。

ほぼ同時に遂に捕まったレキーサのランスがその手から投げ出され、巨人の残った片足を跳ね飛ばす。

バランスを失った巨人が窓際に転倒する。

レキーサはランスを拾い上げると、必殺の刺突が胸の頭を潰した!

伸びきった腕を剣士が叩き斬る!


「できたぁ!」


マコが研究施設から飛び出し、小瓶を巨人へ投げつけた!

巨体に砕かれた小瓶の中からキラキラと飛散した液体。

それは巨人の身体を容赦なく溶かしだした。


「今!」


マコの声とほぼ同時に3人が必殺技を繰り出した。



い~~やぁだぁあああああああ……



人の言葉に近い吠え声が最後だった。

最後までびくびくと動いていた化け物の頭をアプラナが踏み潰す……


「ありゃま」


マコが溶けきった巨人の中から現れたものを拾い上げた。


「うわぁ…嬉しくないわね…」


レキーサがマコの手に乗ったそれに顔を近づけた。


「でも、ゲットだね」


ピカリアが微苦笑する。


「こんなところにあるなんて……信じられませんわ…」


アプラナが落ちていたテーブルクロスでそれに付着した汚れを拭き取った。


「でもぉ~~赤の宝玉ゲットォ~~♪」


マコはいそいそと腰の鞄に宝玉をクロスで包んでしまいこんだ。




【続】


から~の~

バイオハザード♪

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