04 【邂逅①】
大道芸一座と伴にアラン、キッカ、マコの3人は、大世界随一の都市ギエンを後にした。
「ほぅ…アランさんは赤の世界、キッカちゃんは白の世界、マコっちゃんは橙世界出身かい」
一座の差配をする若い男が三人と並んで歩いていた。
「そうそう」
マコが手をひらひらさせて、笑顔で受け応えた。
「どこで知り合ったんだい?」
差配のカズは興味津々といった具合で、質問コーナーモードに入っていた。
「あはっ☆どこでしょう~~」
即行で種明かしをしそうなマコも、そこは心得ているようで煙に巻くように答えた。
「一緒に旅して、もう長いんだろ?」
「マコっちゃんはシーフだし、アランさんは戦士だし、キッカちゃんは白魔導士かな?」
「怖いものなんてないんじゃないの?」
矢継ぎ早に諦めず質問攻めを展開する彼に、さすがにキッカがむっとした翳を表情に走らせる。
(やばっ!キッカが怒りはじめてる)
アランがマコの目を見ると、彼女も困ったような目をしていた。
と…
「おい、カズ、ちょっとこっちよろしく」
「え?」
「いいから、こっちゃ来い」
彼に指図した座長が、カズを強引に列の後方へ下がらせて、三人に笑って頷いた。
一座はギエンから大砂漠を東へ横断し、オーネという街へ向かっていた。
旅慣れた一座は、迷うことなくオアシスを経由して旅を続けた。
「ここが丁度道半ばだよ」
大きなオアシスというか、小さな集落といった、旅の中休めの駅屋に到着した。
座長のコウが一行を労い、今夜はこの駅屋で一泊する旨を言い渡した。
赤い月…アランの故郷は、夜に見えることから、ここではそう表現されている…が、星空のなかに浮いている。
駅屋といっても、屋根のある家屋がいくつかあり、低い土塀で囲まれた場所に一座十数名がいると結構狭い。
女性軍は2棟を割り当てられていたが、アラン達3人は駅家の中心にある泉の畔にいた。
闇がかすかに蠢く…
かさ…
こそ……
「マコ…キッカ…」
「うん」
「下級妖魔…」
アランは長剣を右手に持った。
マコも両手に独特の形をした短剣をはめた。
キッカは杖を手に、小さく言の葉を紡ぐ。
急速に膨らんだ禍々しい気配が、一気に動く。
「!」
キッカが杖を振るうと、2人の身体にオーラが宿った。
アランが左手にも短剣を逆手に持ち、片膝ついて向かってくる気配を長剣でなぎ払った。
マコは大きく跳躍する。
「あうっ!」
マコが弾き飛ばされ、その身体をキッカが魔法で受け止めた。
「でかいの来るよぉ~!」
アランが、体をひねって下級妖魔の群れをやり過ごす。
ずど~ん
地響きとともに、土塀に何物かが激突した。
「結界が張ってあるから、もう少しもつよ」
キッカの杖が輝きを増している。
騒ぎで起き出してきた一座の面々。
「食い止めるから、早くここから離れて!」
アランが目の隅に認めた座長に叫んだ。
マコが素早く敵後方へ回り込もうと走った。
「アラン、いい?」
「オッケ~よ」
戦闘態勢の整ったアランが応えると、キッカは結界を解いた。
同時に全速力で、土塀を破壊した巨大な妖魔へアランが駆け寄った。
「ちぇぃ!!」
彼女へ殴りかかる腕を長剣で払い、怯んだ隙に足元へ滑り込み、逆手に持った短剣を脛に叩き込んだ。
ぐおぉぉぉぉ!!
咆哮をあげ、うずくまる巨大妖魔の背を蹴って、頭上に跳躍したマコ。
キッカの呪文が敵に金縛りをかける。
マコは跳躍の落下の勢いを、両手の短刀にすべて乗せて、一直線に頭頂部へ落とす。
左手の短剣を腰の鞘に収め、長剣を両手で握ると跳躍しつつ一気に斬りあげた!
血飛沫上げる巨大妖魔。
「やった!」
「らっくしょ~~う♪」
ガッツポーズの2人。
「まだ…油断しないで」
キッカが注意をする。
「「え?」」
見ると両断され、血飛沫のあがる断面からめきょめきょと何かが生え出してきた。
「ちょっとぉ、気持ち悪いよぉ~~」
マコの腰がひけた。
「再生するんだ…しぶとい…」
アランは長剣の血糊を振り落とし、再び短剣を抜き放った。
断面から生え出したものは、爬虫類のような形状で、大きな頑丈そうな顎と鋭い歯を見せていた。
呪文を紡ぐキッカが、いきなり後方へ弾かれた。
「!」
瞬速で放たれた、妖魔の攻撃だった。
「マコ!」
「あい!」
鞄から出した小瓶を妖魔に投げつけると、爆発し、炎が妖魔を包んだ。
アランが再度疾走する。
両手の刃に炎が宿った。
気合ととともに十文字に剣を走らせる。
マコがベルトから赤い液体の入った小瓶をキッカへ投げる。
「さんきゅ」
受け取り液体を飲み下す。
炎に飲み込まれた妖魔…は、その炎を呑み込み、ただでさえ巨大な体躯をさらに肥大化させた。
「うわぁ!火属性~~~~」
頭を抱えるマコ。
「失敗!」
舌打ちするアランの後方から、キッカの魔法が塊となって妖魔に突き刺さった。
【続】
戦闘シーン…苦手だ(苦笑)