38 【休息②】
青白色の太陽は日差しが柔らかい。
昨夜の宴会組はまだ寝ている。
トーティアムはブリッジでキッカと探査系端末の調整を、カリュとアラン、ピカリアは格納庫でトレーニングをしている。
太陽が中天にかかる頃…
「おはよ~~~」
アプラナを先頭に宴会組…変じて宿酔組が顔をだした。
「大丈夫か?」
蒸留水に頭痛薬を渡す。
「う~~~~」
「なんだかなぁ…この子達まともじゃないよぉ」
マコの顔色はまだ蒼白で、シンリィはそれでもかなり醒めている様子…
ホタル、レキーサは椅子にめりこんでいる。
「ん?セヴィナは?」
トーティアムがその場に彼女がいないことを発見した。
皆が顔を見合わせ首を振る。
「ごめんね~~♪」
陽気にセヴィナが現れた。
「あ……しっかりお化粧してるし」
シンリィが目聡く指差す。
にっこりと満面の笑顔の目が笑っていない…
(こわっ)
レキーサの心の叫びにキッカが小さく噴出した。
分かっているはずだがそれを無視して、セヴィナはきっちりと椅子に腰掛けた。
「トーティ、ミーティング…でしょ?」
「お、そうだった…だけど、みんな大丈夫か?」
それにはみんなしっかりとうなずいた。
「おーけー。それじゃ、一度状況を整理して今後の行動を決めて行こう…いいかい?」
は~いと全員が手を挙げた。
「現状、探索を完了した場所は赤世界の遺跡、青世界の廃宮殿の2箇所になる」
軽く唇を湿して続ける。
「宝珠と宝玉に関しては…」
キッカの『世界を御する杖』の白宝玉、橙宝玉と宝具『天空の髪飾り』の白宝珠。
セヴィナの『世界を統べる杖』の白宝玉と宝具『大地のブローチ』の白宝珠。
アランの宝具『赤華剣』の赤宝珠。
アプラナの宝具『炎烈剣』の赤宝珠。
レキーサの宝具『ライジングランス』の橙宝珠。
マコの宝具『万能のベルト』の橙宝珠。
そして…
トーティアムの腕輪にはめられた黄金の宝珠。
「以上が今俺たちの手にある」
「青と紫が全くないわね」
セヴィナが改めて確認した。
「紫の宝玉2つと宝珠2つは…おそらく」
「プリシラ魔窟?」
アランの声に闘志が垣間見えた。
「ああ…紫は高貴な色彩とされていて、それだけ霊力が高い…より困難な場所に隠されていると考えて良いと思う」
「緑の宝玉もふたっつあるんだよね?」
ホタルが二本の杖を確認する。
「そうだ」
「で、ありそうな場所はどこなのさ?」
身を乗り出すようにしてピカリアがトーティアムの顔を見た。
「今いるこの橙世界のガルシアン高原、白世界のレディマ氷河、紫世界のプリシラ魔窟の3箇所で間違いないと思っているんだが…」
「根拠は?」
アプラナが脇に置いた『炎烈剣』の宝珠に人差し指を滑らせる。
「この5箇所は…『扉崩壊』のときのシェルター跡なんだ」
「なるほど…」
「俺とカリュが白宝玉と赤宝珠を見つけたのも、紫世界のヒスイ峡谷だし…」
彼がちらりとセヴィナへ視線を移す。
「私たちがトーティを出し抜いて橙宝珠を手に入れたのは、白世界のエスポ旧聖堂の地下……」
「と、いうことだ」
「トーティはどうしようと考えてるの?」
キッカがドリンクを片手に彼に聞いた。
「3パーティに別けたい」
「3つに?」
マコがずり下がった眼鏡を直す。
「そうだ」
彼はゆっくりと全員を見渡した。
このままこの場所で入口を捜索するパーティ。
白世界のレディマ氷河へ先行するパーティ。
そしてピカリアと赤世界へ一度戻るパーティ。
「ピカリアは合流して間がない。全てをきちんとその目で見て確認し、認識したほうが良いと思う」
「ということは、レキーサとアプラナも一緒ね?」
2人をみつつ確認するセヴィナに彼はうなずく。
「ここに残るのは俺とカリュ、ホタル、キッカの四人」
「私とシンリィ、アラン、マコが白世界行きね?」
「うん」
ずっと黙っていたマウロが彼の肩に乗る。
「うちはアランと行くわ」
「そうしてくれ」
「はいな」
「ミーシャで行ってくれ」
「せやったら、ピカリア、アプラナ、レキーサも一緒やな?」
「赤世界を経由して白世界。どうかな?」
妥当な提案と納得し、皆が同意をした。
数日の準備の後、飛行ユニットミーシャは橙世界を飛び立った。
「トーティ、どうやって探すの?」
トーティアムは思案顔のホタルに例のプレートを見せた。
「これがどうしたの?」
「ははは…ずっと、大きな勘違いしてたのさ」
「勘違い?」
「ああ。これは鍵ではなく地図だったんだよ」
「地図?これが?」
「そうさ」
彼はプレートを手に説明し始めた。
「なるほど……」
「とはいっても、かなり大雑把だから、それはそれで見つけるのは大変だと思う」
「雲をつかむような状況よりは大進歩…」
キッカが微笑む。
「君が気づいてくれたお陰さ」
トーティアムは再びここへキャンプを張った。
【続】
念には念を…