37 【休息①】
本編、走ってきましたので整理会(笑)
「どう?」
シンリィとホタルが謎のプレートを発見してから既に3日が経っている。
あ~でもない、こ~でもないと必死の探索にもかかわらず、一向にラチが開かない。
さすがのトーティアムも夕暮れからミーシャの上で白い月を見上げていた。
爬虫鬼との戦闘で受けたそれぞれの傷もあらかた回復。
重傷のピカリアも、昨日からリハビリがてらの探索を手伝っていた。
寝転んだ彼の真上から覗き込んだセヴィナの顔が笑っていた。
「どうもこうも…とりあえずお手上げってところだな」
よっこらせと上体を起こした彼は苦笑をする。
「ここじゃないって可能性は?」
「う~~~ん……ここ以外で橙世界に探すところがないんだよ」
「え?そうなの?」
「君は何か知っているのかい?」
「あは、は…橙世界は私も初めてだし」
「おいおい…トレジャーハンターがそんなこと言っていいのか?」
彼女もトーティアムの横へ腰をおろした。
「いま貴方も言ったけど、この世界って遺跡らしいものってないじゃない?」
「そうなんだよな…」
「だから、ないって可能性は?」
「宝珠宝玉がか?」
うんうんとうなずく彼女からほのかに果実の薫りが漂った。
「セヴィナさん」
「はい?」
「飲んでるな?」
「は~~い」
「道理でおしゃべりなわけだ」
「いけませんか?召還士殿」
杖にぶら下げていた瓶のふたをとり、こくこくと喉をならす。
「酔うぞ」
「酔ってるも~ん」
どうやらそこそこ出来上がっているらしい…
「みんなは?」
「え~っと、シンリィとアプラナとレキーサとホタルとマコは…」
「酒盛り?」
「あったり♪」
「アランは寝たみたいだし、カリュはシンリィ達に付き合ってるみたいよ」
「飲めないはずだが…」
「飲んでないでけど、一緒にいるわ」
「お嬢さんは下で何かやってる」
「ピカリアは?」
「狩り」
「なるほど…」
「一緒にくるかな?」
「わからん。あいつに聞いてくれ」
会話の間もちびちびと、美味そうに飲んでいる。
「ねぇ」
「なんだ?」
「なんだかんだで、結構長い付き合いになったわね?」
「だな」
「こんな風に一緒にいるって、考えたこともなかったわ」
「……」
セヴィナの酔って火照った身体が彼に寄りかかってきている。
濃い紫の長い髪の薫りが、彼の鼻腔をくすぐる。
「酔ったぁ~」
「そうみたいだな……寝るか?」
「え?」
「ん?」
彼女の酔って潤んだ瞳と、彼の視線がまともにぶつかった。
あからさまに誤解を招く言葉だったことに気づき自嘲する。
「てか、寝ろ」
「あら強引ね♪」
「だから、部屋行って自分のベッドに入れと言ってる」
「私のベッドでいいの?」
「セヴィナぁ~~」
「は~い」
「って、ほれ、立てよ」
彼はセヴィナの腕を取って立ち上がる。
「トーティのせっかちぃ~♪」
両腕を彼の首に巻きつけ、じっと見詰める彼女の瞳。
薄桃色に染まった頬、唇から洩れる吐息は熱い……
と、そのままの体勢で彼女がのしかかって来た。
「わっ!」
もつれるように、彼女に押し倒された。
カラカラ…
と杖が転がる。
「おい、そこのスケベおやぢ…」
見下ろす顔はピカリアだった。
「な~にやってんだ?」
「助けろ…」
「はぁ?」
「とりあえず、セヴィナをどけてくれ」
「ん??」
「酔い潰れてんだよ」
ぴくりとピカリアの表情が引きつった。
「酔い潰れた女性に…何しようとしてんだよっ!」
「だ~か~ら~~」
「いやぁ~抱いててぇ~~」
突然、潰れているはずのセヴィナが色っぽい声を発した。
「ふん…そういうことか……邪魔者は退散するよ」
「お、おい!そうじゃないって!!」
「なにがそうじゃないんだよ!!」
と、むくりとセヴィナが起き上がった。
座り込み、トーティアムとピカリアを制する。
「こらこら、親子喧嘩は犬も食わないぞ」
そういうと杖を拾い上げ、その場からミーシャの船内へ降りていった。
呆然と彼女を見送る父娘……
「ほんとに…酔ってたんだ」
ピカリアは決まり悪そうにうつむいた。
「信用…なんてない…か」
トーティアムが立ち上がった。
「さて、俺も寝るよ」
立ち去ろうとする彼の腕をピカリアが押さえた。
「どうした?」
「この飛行ユニット…母上の名前つけたんだ」
「彼女からの贈り物だからな」
「手がかり…あった?」
「今日までのところ…お手上げ状態だな」
「どうするの?」
「明日、みんなと相談する」
「そか…」
「お前はどうする?一緒に来るか?」
「……」
彼女は瞳に月を映した。
左右の瞳の色が違う。
「考えてる…」
「うん」
「来いって言わないんだ?」
「来ては欲しい。だが、決めるのはお前だ」
「みんなから聞いたけど…宝珠宝玉って母上があちこちに隠したんだってね?」
「ああ」
「なら、一緒に行く」
「わかった」
ピカリアはにこっと目元を和らげ、彼に背を向けた。
「ボクはもう少しここにいるよ」
「ん。俺は寝る」
「おやすみ」
「おやすみ。夜風にあまり当たりすぎるなよ」
彼は船内へ下り際にそう言い、彼女は小さく手を上げた。
【続】
オッドアイキャラがまさかの娘www