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29 【前進④】

-遺跡隠し通路 第二層-


トーティアムはアランを常に視界の隅に気遣いつつ、ゆっくりと前進した。

探査灯の光が照らし出す通路は、やはり金属製の床と壁が続いていた。


「マコっちゃんたち、大丈夫かな…?」

「そう信じるしかないな」


彼はそう言って、少し左足を引きずるように歩くアランの手をとった。


(わ!)


アランの動揺を気付いているのかいないのか、彼は手を握ったままゆっくりと歩を重ねた。




-遺跡隠し通路-


「この通路、ちょっと曲がって…」

「下り坂?」

「やね…」


マコ、キッカ、マウロは依然一本道の通路を進んでいる。


「ありゃ…」

「こっちに扉がある」

「そやね」


躊躇するキッカとマウロ。

何のためらいも無くマコが扉の脇にたって、すぐ隣に鈍く青く光る石に触れた。

彼女達の前の扉が音も無く開いた。

マウロが機敏に中に入り、しばらくして彼女達へ危険の無いことを知らせた。


「こっから下り階段や」


先陣切ってマウロが階段を下り、マコとキッカが後に従った。


「ねぇ…ちょとぉ……」

「大変なことになってるわ」


やけに冷静なキッカ。


「前に進むっきゃないやん?」


マウロが開き直ってそう言った。


最初は暗くてわからなかったが、周囲が妙に明るくなるとその状況に彼女たちは愕然とした。

階段の下も横も上もなにもない空間。

彼女らの歩く階段だけが、何もない空間に浮いている。

やがて段が終り、踊り場が現れた。

空間上に多くの方形の床が浮いている。

不規則にあるそれは、正方形、長方形と様々だった。


「どうなってるの、これは…」


キッカは途方に暮れている。

踊り場に卓がある。


「ボタンが5個あるよぉ~」

「パズル…やな」


彼女達は試行錯誤しながら、パズルと格闘することになった。

ボタンを押すと方形の床が動き、道ができる。

なんとか前進すると、またも卓のある踊り場に行き着く。

これを繰り返して、やっとのことで彼女達は昇降機のある床だけの部屋にたどり着いた。


「やっかいやな」

「そうね」

「でもぉ…乗るっきゃないし」

「しゃ~ないやん」

「うん」

「乗っちゃえ~~」


昇降機がゆっくりと下降してゆく。

下を見ると広い床が見える。


「なんや、気温、あがってへん?」

「ちょっと暑くなって来たねぇ」

「何が出てくる…」


きゅっと握ったキッカの手に汗が浮いていた。




-遺跡隠し通路 第二層-


「参ったな」


トーティアムとアランは広い円形ドーム状の広間に立っていた。

周囲に巨大な盛り土がしてあり、そこからひとひとりが抱えられる程の金属の筒が突き出ている。

入口に近い順に筒先から炎が吹き上がった。

そして一番奥に舞台の様に一段高い場所があり、彫像が炎の環の中で威嚇するように鋭い視線で彼らを射抜いていた。


「あれって…」

アランが両手に赤華剣を構える。


「イフリアン…炎の獣神だな」


下半身が獣の剛毛で覆われ逞しく発達しており、上半身は明らかに人のもの。

頭は前方へ歪曲して突き出している角を2本持つ、鼻面の長い獣だった。


「てことは?」

「俺の召還獣にできる…」


霊的銃の銃身を太いものに換え、油断無く広間の中央まで進み出た。



ぐむぉぉぉぉぉ!!!!



くぐもった鈍い吼え声。

彫像が彫像でなくなり、炎の環からトーティアムとアランへ向かって地響き立てて歩き出す。


「このままじゃ無理だ!援護頼む!」

「はいっ!!」


アランが剣を頭上で交差させる。


「宝水剣っ!!」


彼女の剣刃が青白く澄んだ色に染まる。

跳躍し、イフリアンへ交差させていた両手の剣を左右へ開いた。

剣刃から膨大な水流があふれだし、それは鋭利な刃になって灼熱のイフリアンの皮膚を削ぎ切った。

前進する巨獣神の足が止まり、刃傷からどろりとした溶岩の体液が地へ滴った。


「見事っ!!」


トーティアムが賞賛の声を上げ、着地したアランが彼ににこっと笑う。

彼の手の霊笛銃から霊気の塊が射出される。

アランは剣を逆手に右手を顔の前に、左手を背に隠す。


「極氷剣……」


ぽつりと呟くと彼女は肩膝を着いて左の剣を前方へ、右の剣をくるりと持ち替えイフリアンめがけて突き出した。

剣先からきらきらと尾を引いて、白いものが一直線にイフリアンへ襲い掛かった。

氷の槍が炎を突きぬけ、またもイフリアンを痛みに誘った。

彼女の背後に立ったトーティアムが、彼女の肩に手を置いた。


「ありがとう」


彼女は頭上から優しい声に包まれた。


「炎を司る聖なる者、イフリアンよ。我が命に従い、我と伴にあれ!」


霊笛銃から弾丸が発射され、霊気の尾がイフリアンを縛り上げる。


「我と伴にあれっ!」


彼の命に応える様に、イフリアンが叫び声をあげる。

そのまま霊気の尾に縛られた半獣神が霊笛銃に吸い込まれた。


かちり


弾装から一発の弾丸を手のひらに載せる。

弾丸は真っ赤だった。


「それに封じたのね?」


立ち上がり彼の手の上を覗き込むアランに、


「ああ」


と、それを持ち替えて腰のベルトに収めた。


「完全修得、見届けたよ」


彼が微笑みアランが小さく、しっかりとうなずく。


「さて、マコやキッカ達を探そうか?」

「はい!!了解っ!」




【続】

まぁ、ネーミングセンスは欠片もないな…今更っ!


召喚獣イフリアン

挿絵(By みてみん)


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