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21 【前史⑦】

夕闇がその場の5人と1匹を包む。

トーティアムは車椅子のカーナに歩み寄る。


『トーティー…なの?』


カーナの手をとり、両手で包み込む。


「ああ。そうだ」

『生きて…いたのね……』

「おめおめと…な」

『記憶も……』

「封印が解けたらしいよ。今、カーナ、君の手をとって全てが蘇ったよ」

『そう……私はちょっと疲れたわ』

「わかった。あとは俺が……」

『お願いね』

「ゆっくり眠れ。赤の剣士カーナ」

『おやす…み…なさ……い………』


表情は一切変らない…はずだが、どこか安心したような穏やかさが感じられた。




病院から宿への戻った4人。

彼の部屋に集まった。


「アラン。成し遂げたみたいだな」


トーティアムの言葉。

カリュの小さな微笑。

アランはこくりとうなずく。


「ブレイドマスターが、奴らに…」


唇を噛むアランを彼はふわりと抱いた。


「アランが成し遂げた。それでマスターは満足しているさ」


耳元で彼はそう囁いた。

子供のように何度もうなずきながら、泣くまいと歯をくいしばるアランの髪を彼は撫でた。


「これ飲んで」


カリュが温かい飲み物をテーブルに置く。

彼はアランを座らせて、飲み物を手渡した。

両手で受け取り彼女は湯気を息でとばして、口をつけた。


「で、どうするの?これから」


外を見ていたマコが振り向きながら質問する。


「ここへ来る途中にセヴィナ達と連絡がついた。彼女たちがここへ来る」

「わ~い♪会えるんだね」

「ああ」

「合流したらどうするの?」


アランがやっと元の表情に戻って、彼に向かった。


「まず、全てを話そう…」

「うん」

「ついでだから、この赤世界で宝珠と宝玉を捜す」

「心当たりはあるの?」


カリュが聞いた。

今まで彼と2人で探してきたなかに、赤世界の情報は全くなかった。

トーティアムはにっと笑った。


「あるんだぁ~~♪」


マコが飛び上がった。


「なんや、随分、勿体つけるんやな?」

「え?」


マコが周囲を見る。


「山の遺跡やろ?」

「!?」

「え?え?」


カリュとアランが顔を見合す。


「どこ見とんや!うちやって!」


声にトーティアムが苦笑交じりに応えた。


「そいつだよ」


彼の指差した先にマウロがいる……


「えぇ~~~~~~!!!!!!」

「失礼やなぁ…ま、改めて、よろしゅうな♪」


マウロはくりくりの目でウィンクした。

トーティアムを除く3人…カリュも例外でなく…文字通り仰天した。


「ええええ~~~~~~~~!!!!!!」






【大世界-混迷-】



-赤世界 ダミエ山脈-



ゴフク村で準備を整えている間に、セヴィナ、シンリィ、ホタル、キッカが合流した。

トーティアムはセヴィナらが青世界の老婆からどこまで聞いたかを確認すると、これまでの報告がてら彼は補足説明した。

彼らはアランが修行中にマコがいた病院をアジトにしていた。


「すると…トーティ、貴方は一体どうしていたわけ?」

「カーナと同様に呪縛で眠っていたはずだ」

「それが、いつ、どうしてのこのこ起き出してきたわけよ」


セヴィナの珍しく厳しい追及に苦笑をする。


「そこんところは、すまないが判然としない」


彼は外を…ダミエ山脈を遠望する。


「気付いたときには紫世界で、戦いの中にいた」

「戦い?」


アランが口を挟む。


「ああ…妖魔の軍団と魔獣剣士団の死闘の真っ只中にいた…」

「!」

「随分前よね?」

「そうだ…カリュはまだ幼かった」


シンリィの質問に、彼はそう応じた。

大世界戦争が終結した後の紫世界は、ギエンのほか都市は数えるほどに減り、あとは結界で護られた集落だけになっていた。

荒涼とした砂漠と峻険な山谷。巨大な岩石で出来た岩壁。火山性の間欠泉が吹き上がる深い穴…

およそ人が生活するには不向きな厳しい自然しかそこにはなかった。

妖魔はその自然に順応し、ひと頃王国の討伐隊に数を減らしていたものが爆発的に増加した。

一方、人も都市や集落に住むものと、厳しい自然と共生する者とに分離した…彼らの中の戦士を魔獣剣士団と呼んだ。

妖魔の中に急速に知能を発達させたものが現れ、それが数多くの妖魔を従えた。



「そいつらが妖魔軍団だよ」


トーティアムは苦いものを飲み下すように言う。


「俺は…まさに、そんな中に…いきなりそこにいたんだ」


彼の苦渋の表情に、皆はじっとその先を聞く。


「俺がしっかりと意識をもったとき、魔獣剣士団と自然共生派の住民は妖魔軍団に明らかに押されていた」


小さく嘆息をする彼の瞼の奥に、凄惨に虐殺された村があった。


「村人の亡骸はまともなものなどひとつもなかったよ…食いちぎられ、引き裂かれ……」


セヴィナとキッカはうっと口を押さえた。


「力はしまった方がいい。俺の記憶を見るとそうなる…」


白魔導師の力で、彼の記憶のなかのそのシーンを見てしまった2人は、そのまま洗面所へ走った。



「酷いものだ…」


若き日(?)のトーティアムは、全滅したその村を歩いていた。

彼は他の数名の若者や魔獣剣士と伴に、亡骸を黙々と埋葬していった。


「ここを襲った奴らはどこへ行ったのか…」


魔獣剣士のリーダーが偵察隊を周囲に派遣したが、その行方は判然としないままだった。


「トーティ、どうする?」


いつの頃からか、魔獣剣士団のリーダーは彼に相談するようになっていた。


「油断は出来ないな…一応ここからは離れた方がいいんじゃないか?」

「ああ…だがな…」


リーダーはこの村出身だった。


「この村で生まれ育った者が剣士団には多い」

「感傷は危険だとは思うが…」

「いつも以上に厳重な警戒をする」

「はは…はなっから、ここで葬儀をするつもりなんだろ?」


トーティアムの言葉にリーダーは黙ってうなずいた。


「だったら聞くなよ。リーダーは君だ」

「ありがとう」



その夜…

埋葬を済ませた彼らは赤々と火を焚き、死者を弔った。

他方面から帰途の途中立ち寄った剣士団も、偵察に出ていた数組の隊も戻ってきた。

やがて白い月が夜空に現れる……



ずどぉん!!



明らかな破裂音と伴に悲鳴が静寂を破る。


「ちっ!」


舌打ちをしつつ、部下を集めるリーダー。

トーティアムも村の古老から託された魔笛銃を手にしていた。


「あ…あれは…」


妖魔の群れと死闘を繰り広げている剣士団。

その後方に巨大な影があった。


「遂に親玉が現れたか!」


リーダーは更に結界の布陣を組んだ。

警備の剣士達が次々に血祭りにあげられる。

妖魔も同じだけ霧消する。

が、妖魔のボスがそこへ到達すると一気に形勢は妖魔に有利に展開する。

しかし剣士団も押されているばかりではなかった。

弓手やトーティアムのような飛び道具を持ったものが遠距離牽制をすると、リーダー以下が自慢の剣技で妖魔を粉砕してゆく。



ううぉ~~~~~!!!



ボス妖魔の吼え声に、妖魔軍団が動く!

リーダーが数名の部下とボス妖魔の背後へ回った。

彼の左腕のドラゴングラブの爪が更に伸び、右腕の腕輪が剣を飲み込み一体化した。

剛剣がボス妖魔の背を叩く!

が、その背は異様に硬い。

ボス妖魔が背後の彼らに気付く。


(まずい!)


トーティアムは咄嗟に魔笛銃を放った!






【続】

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