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15 【前史①】

ここからは前説的な?


【大世界-黎明-】



-赤世界 ダミエ山脈 ゴフク村-



アランとブレイドマスターが修行に出かけてから、そろそろ半年が経とうとしている。

マコは彼らに10日に一度の割合で食料を届ける以外は、このゴフク村で様々な薬品調合をしていた。

橙世界では錬金術といわれる、不可思議調合と合成による薬品生成技術が発達していた。

彼女はこの村にある病院で、医者の真似事をしながら今後の旅に必要になるであろうものを作っていた。

そんなとき、村のはずれにあった朽ち果てた遺跡の入り口を発見した。


「なんだろぉ~~♪」


彼女はフル装備でその中へ入っていった。

最初はひんやりとした空気が微かに流れていた。

やがてそれはよどみ始める。


「くんくん……」


彼女は鼻腔に金属臭を感じて、頭をかしげた。


「なんだろぉ~~なぁ~~~♪♪」


楽しげに更に奥に進むと、朽ちた巨大な金属製の扉があった。


「ありゃ、行き止まり?」


しばらく扉の周囲を探索したが、開けられそうにない。


「しょうがないね」


そう呟くと、彼女は扉の周囲がかなり頑丈なのを確かめた上で、ベルトに装着してある試験管を手に取った。


「ほぃっ」


試験管が投げられ、扉の下部に当たって砕けるのと爆発が起こるのが同時だった。


「やたっww」


爆発が腐食した金属を破壊し、穴が開いた。


「う~~ん、ちょっと小さいかなぁ?」


などと言いつつも、四つんばいになってその穴をくぐった。


「ふわぁ~~~」


そこは機械に埋め尽くされた部屋だった。

とはいえ、マコが知るどの世界の機械文明よりもシンプルに出来上がっていた。


「でも…これって、凄いわぁ…」


全てがコンパクトにまとまっている。


「コントロールルームかなぁ…」


部屋はそれなりに広い。

ほぼ円筒形のその壁に、機械が埋め込まれている。

中央部の床に文様が記されている。


「へぇ~~~~」


マコはそこここを歩き回った…



ヴィィィィン



「わっ!」


機械の始動音が微かに聞こえた。

ぎょっとした彼女は床の真ん中で突っ立った。


「な!」


彼女の目の前に立体投影が映し出された。


「これって……」


彼女は次々に展開される立体映像の世界に夢中になった。




それは…大世界創世の物語だった。

大世界…

赤、青、白、紫、橙、五つの衛星を持つ緑の星。

そして五つの衛星の更に外側に、金色に輝く星が周回する星域を総称してそう呼んだ。



「生命反応はあります」

「そう。開発できそうかしら?」

「大気他、必要なものは揃っています」

「進化推定は?」

「適しています」


星域に突如現れた巨大な宇宙船のブリッジには、数名の仕官がいる。

一段高いところに座っている女性がキャプテンだろう。


「中央の惑星にしゅを落とします」

「了解」


淡々と命令を下すキャプテン。

そしてそれを実行に移すため、士官の一人がマイクへその旨を伝達した。

宇宙船から艦載船が数機吐き出され、それは緑の惑星の大気圏に浸入していった。


「どれくらいかかるかしら?」

「緑の惑星の自転回数で二千回ほどでしょうか?」

「そう…かなり環境は良さそうね」

「初期文明が整い次第、第二段階に入るよう領主殿へ連絡を」

「かしこまりました」


キャプテンは席から立ち、立体映像の投影されているブリッジの中央に立った。


「領主殿も気の毒に…」


彼女は心底そう思っているように、小さな溜息をついた。


「我が連邦の尖兵とはいえ、こんな辺境で…しかもこんな原始的な星域を領地にされてもねぇ…」

「本人の希望らしいですよ」


副官らしい若い仕官が応じた。


「ほう?」

「領主殿本人が、偶然扉を開いてここへたどり着いたということです」

「ふむ……君は他人を詮索するのが好きなの?」

「そういうわけでは!」


キャプテンの辛辣な言葉と視線に、副官はあわててその場を後にした。


「まぁ、気持ちはわからなくはないけどね…」


彼女は二度目の溜息をついた。

彼女らが属する広大な連邦国家は、『扉』と呼ぶ宇宙空間と宇宙空間をつなぐものを発見した。

そして多くの星域、国家を吸収して連邦帝國となった。

皇帝の下、皇族、貴族、そして士族と呼ばれる新興有力者が、領地と呼ばれる星域を支配している。

だが、それらの支配は空間支配であって、それぞれの領地内の星そのものや、そこに住む者を直接支配していない。

そんな彼らの中には、ときおり、全く未開の星域に『ヒトのしゅ』を落とし、独自の進化をさせることから始める者もいた。

…かなりの変り種か金持ちの道楽に近いが……

彼女らは、皇帝から新たにこの星域を領地にと拝領した者からの依頼で、『ヒトのしゅ』を落としに来たようだ。



「作業部隊、帰還しました」


惑星へ下り、『種』の植え付けを完了したとの報告を受けた士官が振り向いた。


「ご苦労様。で、地上はどんななの?」

「今、記録映像投影します」


ブリッジの中央に、作業部隊が持ち帰った立体映像が映し出された。


「なかなか有望みたいね」

「はい」

「衛星の方の探査部隊は?」

「間もなく帰還します」


彼女は小さくうなずくと、背後に控えていた下士官に飲み物を持ってこさせた。


「小休止」


それを合図に、その場の仕官達がそれぞれ飲み物を下士官から受け取った。

ひと息つくとキャプテンは席に着く。


「探査部隊収容後、一旦、帰還します」

「扉の開口まで、百セコン」

「探査部隊収容完了しました!」


二つの報告をほぼ同時に受けると、彼女は座ったまま淡々と指示を下す。


「帰還します」


巨大な宇宙船は、金色に輝く外郭衛星に近い場所にある『扉』へ吸い込まれていった……

「ちょっとぉ~~~」


マコはへなへなと床に座り込んだ。

あまりにショッキングな内容。

彼女の常識を遥かに超える…生々しい物語。


「ふぅ…これは……」


さすがのマコも放心したまま、その場で長い間宙を見詰めていた。




【続】

さんざん悩んで、結局掲載です。

思いっきり【前史】の項目は削除してもよかった?


現本執筆 2008年5月~8月

加筆投稿 2024年


あーー長かったねぇ(笑)

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