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14 【迷宮②】

-青世界 カブキの森廃宮殿 地下第四層-



~トーティアムのパーティ~



干上がった湖底から、長い長い階段を下りた。

途中モンスターは散発的に現れる程度で、さしたることもなく階段を降り切った。

トーティアムらが立ったところは、暗くはあるが、自生した苔がぼうっと青白い光を放っていた。

天井は高い。

更に奥へ続く通路らしい。

左右をゆっくりと周囲を見渡した。


「一本道だな…」


ひんやりとした微風が行く手から流れ、彼らの頬をなでる。


「行こうか」


前進しだした彼の前に、カリュが滑るように立つ。


「あたしが先」

「うん」


応えて彼はキッカを促し、自分は最後尾についた。

洞窟のような通路は、やがて明らかに人の手で造られたものへ変って行った。

石造りの通路の天井はドーム状で、高さがある。

床はどうも金属的な鈍い光を放っている。



ウィィィィン



「?」


妙に反響する音がする。

カリュが身構える。


「おいおい…モンスターの次は攻撃固体かよ」


通路の奥に金属製らしい背の低い、ずんぐりした姿が現れた。


「カリュ、手ごわいぞ」

「うん」


トーティアムが攻撃固体といったものは、ゆっくりと滑るようにやってくる。

動力がどうなっているかは不明だが、床上拳ひとつ程度浮いている。


「射程距離内に入ったら、すぐに撃ってくるぞ」


注意を促すトーティアムに、カリュは無言でうなずく。

キッカは防御魔法を展開する。


「ありがと」


姿勢を低くしたカリュが、キッカへ言葉を投げた。

トーティアムが霊笛銃の銃身を換装する。



カシュン



攻撃固体から、筒状の……明らかに銃身が突き出される。


「キッカ!」


トーティアムは自身も防御魔法を展開して、キッカへ駆け寄った。

彼女を庇うように肩を抱き、彼女の耳元で


「重力魔法は使えるか?」


と尋ねる。

何故か頬を紅潮させたキッカが、こくんとうなずく。


「頼む」


キッカが詠唱を始めるのと、敵から銃弾が発射されるのが同時だった。

カリュは防御魔法に守られているものの、何発かは鎧に当たった。

ドラゴングラブを顔の前にかざし、カリュが一足飛びに敵に肉薄する。


「!!」


太刀の峰で銃身を殴りつけると、それはぐにゃりと曲がる。

すかさずドラゴングラブが敵を破壊した。



ドンッ



カリュは殴打の反動を利用して敵を飛び越えた。

直後に小さな爆発を起こして、攻撃固体はその場で煙を吐いて機能を停止した。


「すぐ、次が来るっ!」


トーティアムが霊笛銃を射ち、湧き出すように現れる攻撃固体を牽制する。

キッカが杖をくるりと回転させると、彼女の持つそれは淡く発光した。


「やっ!」


彼女の気が満ち、杖から発光体が飛び、新手の攻撃固体を捕らえた。

重力魔法は敵の足止めだけではない。

数体はその重力には逆らえず潰れて爆発した。

カリュが縦横に跳び、動きの止まった敵を殴りつけて行った。

「これでとりあえずは一息だな…」


数十体の攻撃固体は全て黒い煙を吐いて、床に転がっている。

3人は屈曲しだした廊下を注意深く前進した。

右回りに大きく曲がった回廊は、少しずつ下降しているようだ…


「地下どれぐらいまで下りたんだろうな…」


トーティアムは呟きながら、回廊を歩む。




~ママン・セヴィナのパーティ~



階段を降り切った所は小部屋になっていた。


「ねぇ~~~、扉が3つあるよぉ~」


シンリィが困っているのか、面白がっているのか…いつもこんなだけれど…セヴィナとホタルに申告した。


「どうしましょう」


セヴィナは呑気に応える。


「片っ端から行ってみるしかないかな?」


ホタルは、並んだ3つの扉の右端へ向かった。


「だよねぇ~~」


シンリィが左端の扉を押す。


「行こうか?」


セヴィナは真ん中の扉を開けた。

扉を開け、それぞれが一本道を進む。

モンスターが散発的に現れる。


「雑魚ばっかりね…」


苦もなく排除し、道なりに進む。

やがて広い場所に足を踏み入れた。


「あら♪シンリィ」

「ママン!」

「お姉ちゃん!」


会話は出来るが、彼女らを透明な壁が隔てている。

シンリィが鎌で透明な壁を、思いっきり殴った…

が、びくともしない。


「傷もつかないし…」

「もうちょっと進んでみる?」

「は~い」


3人の歩く廊下は、それぞれ近づいたり離れたりしながら、それでも交わるところがない。

巨大な穴の中に蜘蛛の巣のように道が伸びている。


「あ、あそこ!」


ホタルが叫んだ。

彼女が指差したあたりで、どうやら交差しているようだった。



どんっ



「いったぁ~~~」

交差してる場所は小部屋のようだったが、シンリィがそこへ駆け込むことはできなかった。

やはり透明の壁が行く手を阻んでいる。


「また、壁の罠ぁ~??」


小部屋に入れたセヴィナは苦笑いしている。

見るとホタルが回れ右して引き返していた。


「ありゃ~~、ホタルちゃんもかぁ」

「あったま来るぅ~~~!!!」


盛大に文句を残してシンリィも、来た道を戻りだした。



「あやぁ~~~!!」

「なにこれぇ~~」


一本道…だが、透明の壁があるこの道の壁は…動いているらしい。

ゆっくりと、縦横にわたった同じような廊下が、壁が動くことで別の道を作って行く。


「ひぇ~~~;;」

「壁の罠ぁ~~~><」

「到着ぅ~~~」

「ただいまぁ」


シンリィとホタルはなんとか動く壁の法則性を見つけ途中合流を果たした。

へとへとになりながらもセヴィナの待つ…小部屋に入ることができた。


「って、寝てるし」

「待ちくたびれたんだ…」


そういう2人も、背中合わせに座り込んだ。



「さぁ!行きましょ」


睡眠で体力を復活させた3人は、シンリィとホタルが迷っている間に、セヴィナが見つけた仕掛けで小部屋ごと移動した。

四方が透明な箱状になった小部屋は、ゆっくりと巨大な穴を下りてゆく。

穴の中を縦横に伸びる道と、動く壁は彼女らがいなくなって…動きを止めたようだ。


「まるで自動昇降機ね」

「この部屋の分だけ隙間あるし」



ストン…



小さな衝撃を残して、小部屋の動きが止まった。


「終点ね」


セヴィナが箱部屋から顔をだす。

そこは神殿の内部のようにドーム状の広間だった。

ほぼ円形の部屋…壁面に凝った絵が描かれている。

ぐるりと壁面前には彼等の倍ほどの高さの彫刻が6体並んでいる。

奥に祭壇があり、ステンドグラスに記号がならんでいる。



「やあ!」


セヴィナへ片手をあげて、トーティアム等がやってきた。


「結局、ここも繋がってたのね」

「そうらしいね」


再び6人が顔を揃えた。手分けをして、神殿内を捜索する。


「やはり祭壇だろうな…」

「そうね」


トーティアムとセヴィナは祭壇へ上がった。


「これ…だろうな?」

「暗号解読?」

「というより、パズルだろう…」


トーティアムはステンドグラスの記号をメモにして、カリュ、シンリィ、ホタル、キッカへも渡した。


「トーティ」

「どうした?カリュ」

「あれ」


彼女の視線を追うと、彫刻の額に記号があった。


「ほう…」


彼は彫刻に近寄り、仔細に調べる。

台座にも記号が刻まれている。


「ト~ティ~~」

「ん?シンリィ、なにかわかったか?」

「あの、壁画ぁ~~~」


壁画の中に極彩色で描かれている星。


「なるほど…どこかで見たことがあると思ったが…」

「何か知ってるの?」


彼の側に従っているカリュが尋ねた。


「ああ、あの記号は古代文字でね…世界を表しているんだ」


記号を指差し、これは青、これは赤…と解説してゆく。

いつの間にか彼の周りに全員がいる。

再び彼は彫刻に近寄り、台座に刻まれた記号付近を探る。



がこん



記号の刻まれた部分が凹み、スイッチが現れた。


「どうする?」

「押してみる?」


トーティアムはステンドグラスと壁画を見比べる。

彼はそれぞれの彫刻にひとりずつ立たせた。



赤の彫刻にシンリィ

紫の彫刻にカリュ

白の彫刻にキッカ

橙の彫刻にホタル

緑の彫刻にセヴィナ

金の彫刻にトーティアム



彼がスイッチを押す。

そして、シンリィ、ホタル、カリュ、セヴィナの順でスイッチを押させた。


「最後にキッカ」

「はい」



カチリ



慎重に彼女がスイッチを押す。



ぱぁぁぁぁぁぁぁん!!



祭壇のステンドグラスが砕け散った!


「!」


トーティアムを含め、全員がぎょっとして祭壇を見た。

ステンドグラスの向こう側に、白銀に輝く煌びやかな一室が現れた。

カリュが真っ先にその場へ乗り込もうとするのを、トーティアムが制した。

彼は足元のステンドグラスの破片を拾い、部屋へ投げ込む。


「やっぱり、罠はあるんだな」


破片は音もなく消滅していた。


「これか……セヴィナ、キッカ」


彼は白魔導師2人を呼んだ。


「右がキッカ、左がセヴィナ」


祭壇と部屋の境に、小さな装置が置かれていた。

その中央に模様が描かれていた。


「正しい?」

「そのはずだよ」


彼は独り言のように、なにか呟いた。


「右手で世界をぎょし、左手で世界をべる、其はこの世界のことわりなり…」


セヴィナとキッカは杖の先を模様に合わせた。



ぼぅ…っと部屋の輝きが落ち、白壁の部屋になった。

もう一度、トーティアムは破片を投げ入れる。



カチャン…



「オーケーだ」


部屋へ足を踏み入れる。

一段高くなっている場所が正面にあり、壁面から小さなテーブル状の突起がある。

彼がその前に立ち、振り返って皆へにこりと笑った。

テーブルの上に白の宝珠が輝いている…


「2個もあるよ…」


手に取ろうとした彼の手が止まった。


「トーティ?」


カリュが躊躇の理由を察した。

その動きで、全員が戦闘態勢をとる。

セヴィナとキッカが防御魔法を展開する。


「取るよ」


無言で全員がうなずく。

宝珠を台座から取り上げる。


「キッカ!セヴィナ!」


トーティアムは宝珠を2人へ手渡す。

キッカは宝珠を髪飾りにはめ込む。

セヴィナも胸元の赤の飾り玉を外し、そこへはめ込んだ。

宝珠が光り、2人の展開する防御魔法が厚みを増した。


「やっぱり来たよ~~~」


ホタルが矢を放つ。

彫刻が表面の石をぼろぼろと落としながら、彼等へ向かって来る。


「この手の罠は、いい加減飽きたわ…」


カリュが右腕を太刀に融合させ、ドラゴングラブが彫刻を…すでに違うものになっているが…切り裂く。


「我が命に従い、我にあだなす者を打ち払え!出でよ、セイレン!!」


トーティアムの霊笛銃から銃弾が打ち出され、それは光を帯びて姿を変え、セイレンへ変化した。


「わお!」


シンリィが目を丸くする。


「いつの間に、召還獣なんかゲットしたの?」


セヴィナが呆れた様に、トーティアムを見た。

ホタルの矢が援護し、セイレンが、カリュが、シンリィが彫刻だったものを突き崩した。



静寂が神殿を再び支配する…


「戻れ、我が下僕」


トーティアムの霊笛銃から放たれる霊気にセイレンが吸い込まれた。


「あれ?」


ホタルが異変に気付いた。

神殿ごと動いている。

宝珠のあった部屋が左側の壁に吸い込まれ、新たな部屋が現れた。


「なるほどな、それで円形なんだ」


新たな部屋の中央には棺が安置されている。


「罠はないようだな…」


ひと通りの探りをいれてから、彼等は部屋…棺の周囲に集まった。

棺は継ぎ目がなく、蓋の部分が透明なので、中身がしっかり見えた。


「白の宝玉だ」


2つ分の置き場に、1個のみ置かれている白の宝玉が、深い輝きを放っている。


「杖を…」


セヴィナを促し、トーティアムは1歩下がった。

セヴィナが杖をかざすと、入れ物だった棺が消えた。

彼女は宝玉を取り、杖の柄にはめた。


「やばっ!」


シンリィが叫んだ。

神殿が沈み始めている!!


「いや、この部屋が上昇してるんだ…」


トーティアムが落ち着いた声で応じた。

長い間をかけて、ゆっくりと上昇する小部屋。

やがて入り口から日の光が入ってきた。


「お疲れ様」


トーティアムが、笑顔で皆をねぎらった。


【続】

いい所で切れなかったので長いです…(-。-)y-゜゜゜

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